中編




マンションに着いた途端、寝室に連れていかれて、ベットに押し倒される。
腰の痛みが治っていない壱は冗談じゃないと覆い被さっている東条から逃げようとするが 体格の差から押さえこまれてしまう。
服を脱がし始めている東条に壱は叫んだ。

「おい、止めろって!」
「……」
「腰が痛いんだよ!」

東条はそう訴える壱の腰を服の下から直に撫で口元だけ笑みを浮かべる。
目が笑っていない笑みに壱はゾクっと身体が震え縮こまった。

「立てなくしてやった方がここに閉じ込めておけるな」
「……っ!!?」

東条が非常識をやる男だという事はすでに実証されているので壱は急いでブンブンと頭を振った。

「ごめん、飲み会の事は謝る!…ぅあ!」

グッと下着の上から壱のモノが握られる。
刺激を与えられながら取り出されさらに揉み扱かれる。
東条の手によって反応を示していくそれに壱は耐えるしかなかった。

「て、帝人っ」
「飲み会の事だけではない。女に声を掛けられ鼻の下を伸ばしてついて行った事も反省しているのか」

鼻の下なんか伸ばしてないと反論しようと思ったが巧みに動き続けている東条の手に 喘ぎ声しか出てこない。

「んっ、ああっ、あっ!」
「海堂にも隙を見せるな」
「あっ、あ、んぅ!」

それに対しても俺が悪いんじゃないと反論出来ず。
もうすぐイクという所で東条の手がピタリと止まった。
それにどうして?と視線を合わせると東条は冷たく見下ろしている。

「分かったな」

早く高ぶりから熱を吐き出したい壱は念を押すその言葉にコクコクと頷いて我慢できず腰を うずうずと動かし掴んでいるままだけの東条の手に己のモノを擦り付けるようにした。

「早くっ…帝人っ!」

顔を赤らめておねだりしてくる最愛の者の痴態に東条は舌打ちすると口でそれを銜えた。
急に熱い粘膜に包まれた壱は声を上げて身体が反り返る。
音を立てながら吸われるとたちまち熱がせり上がって来て東条の口の中で吐精した。
ビクビクと震えている壱の腰を掴み一滴もこぼさず飲み込んだ。
嚥下している東条にそんなもの良く飲めるなと胸を上下させながら壱は内心いつも思う。
まだ壱は東条のモノを銜えるという事はしていないが同じ状況だったらはたして飲み込めるだろうか。
ツプリと奥の入り口に指を入れられまた身体が熱くなる。
東条に会わなければ一生この感覚は知らなかった事だ。
最初は抵抗のあったそれも今はあっさりと受け入れ指の数が増えても内が奥へと導こうとする。
東条の長い指が奥に隠されている箇所に触れた。

「あ、ああっ!!」

それと同時に壱のモノを東条が掴みゆるゆると動かす。
それだけで簡単に起ち上がりさっき達ったばかりだというのにまた達きそうになる。
前と後ろからの攻めにあっさりと今度は東条の手に白濁を吐き出した。
壱の身体を拭いた東条はそのまま壱を抱き寄せた後布団を被せる。

「…帝人?」

てっきり最後までやると思っていた壱はまだ一回も達っていない東条の事を考え、しないの?と聞いた。

「腰が痛いのだろう」
「え、今は痛くないけど」
「今はな。だがやって明日になれば今日よりも痛みは酷くなるぞ」

それは嫌だと思った壱は言葉に甘えて頷いた。
体調の事を考えてくれている東条の優しさに嬉しくなった壱はギュッと自ら抱きついた。
東条の手が腰を擦ってくれる。
目を閉じた壱は東条の傍にいる事に懐かしさと心地良さを感じていた。
遥か昔にも同じ感覚が確かにあった。

『愛している、リフ』
『私も愛しているわ、―――。こうして傍にいられるだけで幸せよ』
『俺から離れるなよ』
『ええ、ずっと傍にいるわ、――― 』

夢現の中で過去の声が聞こえる。
壱の前世の名前はリフだった。
そのリフに愛していると言ってくるのは誰?
名前が思い出せない。
数えきれないくらい言っていた名前なのに。

「帝、人…」

寝てしまった壱の口から東条の名前が呼ばれる。
東条はほほ笑みながら頬にキスをした。









目が覚めるとベットには東条の姿はなく、時間は昼前だった。
一瞬、焦ったが今日は午後からの講義だったので今から準備すれば十分間に合う。

「うーん、良く寝たなぁー」

連日東条に求められていたせいか思ったより身体が疲労していたらしい。
たくさん睡眠時間を取ったので腰の痛みも軽くなっている。
起き上がってベットから下りると足元にガサリと紙袋が当たった。
ベットの下に半分以上潜り込んでいるそれを引っ張り出し何だコレ?と見ていて思い出す。

「そうだ、要さんから受け取ったやつじゃん」

速攻にベットに押し倒されたので東条に渡せなかったのだ。
何が入ってるんだろうと気になった。
そっと覗きこんでみると白と紺色の服のようだ。
それだけならそこで終わるがヒラヒラとしたレースみたいなものが付いている。
取り出してみた壱は顔が引き攣った。

「な、な、な!」

横に大きく広がっている短いスカートにブラウスの胸元には大きな白のリボン。
細かいレースがスカートの裾とブラウスの袖にも付けられていた。
女の子が着るには若干大きいサイズだがどうみてもこれはメイド服だった。
紙袋の中にはまだ何か入っている。
それを取り出すと長い白の靴下と頭に付けるであろう飾りとメモ紙が一枚。

「これをいっちゃんに着させて遊んでね!友達思いの要より」

声に出してメモ紙を読んだ壱は直ぐにビリビリに破いてゴミ箱に捨てた。
そしてその服を紙袋の中に突っ込み処分しようとしたが家の中で捨てれば 気付かれる可能せいがあるので燃えるゴミの日にこっそり捨てようと 自分の部屋のクローゼットの中へと隠した。
昨日、東条に渡さなくて良かったとホッと溜息を吐き大学に行く準備を始めたのだった。











壱は今、駅前のファーストフード店にいる。
目の前には石倉のようにかわいい女の子ではなくて坂上だ。
午後の講義が終わって帰ろうとした壱にちょっと付き合ってよとここに連れて来られた。
そしてずっと恋人の愚痴とのろけ話しを聞いてやっている。

「で、何で俺は坂上の話しを聞かなくちゃいけないんだ?」

コーラのストローをガジッと噛んだ壱は坂上に聞いた。

「だってさ、男を恋人に持つ同士じゃん」
「ぶっ!」

思わず気管にコーラが入りそうになりむせた。
勘がいいのか坂上に壱の恋人が東条だとバレた。
だがそれを回りに言いふらそうとするような事はなかった。

「同士なのに言いふらす訳がないだろ?」
「もう十分にお前の話しは聞いたからさもう帰っていい?」
「ああ、遅いと恋人に怒られちゃうのか」

勝手に納得する坂上に違うとも言い切れずストローを噛む。
だが2時間ほどずっと話しを聞いていたのだ。
そろそろいいだろう。
外は日が落ち暗くなった。

「まだ話しは尽きないんだけどな」
「いや、お前の恋人が高校生でかわいい顔しているのに強い男の子だって分かったから もういいよ」
「そ!嫉妬深くてさーこの間も…」
「はいっもういいです!」

壱はまた長くなりそうな坂上の話しを強制的に切った。
トレイを持ち立ち上がった壱はふと坂上に聞いてみようかと思い再び椅子に座った。

「なあ、ちょっと聞きたい事があるんだけどさ…」
「何だ?」

壱は回りをキョロっと見て聞き耳立ている人がいないか確認した上で小声で話し始めた。

「あのさ、坂上は恋人に…その、…ラとかしてもらった事ある?」
「え?聞こえないんだけど」
「だから…フェ…だよ」
「…ああ、フェラね!」

顔を赤くした壱は窺うように坂上を見た。
そんな壱を見た坂上は、肩を竦める。

「おい、宮森、所構わずそんな顔をするなよ」
「はぁ?」
「はーっ、無自覚か。東条もこれじゃ心配だよな」
「訳の分からない事言ってないで答えろよ」
「やってもらった事はあるさ。数は少ないけど」
「嬉しいもの?」

坂上はそりゃなと頷く。
それに一度もそういう行為をしたこともなければ強要されたこともない壱は 考え込む。
それを見た坂上はニヤリと笑った。

「やって欲しいって言われたの?」
「言われてないけど…」
「じゃあ、どうして?」
「だって…」

思えばいつも与えられているばかりで壱から東条に何かしてあげた事がない。
昨日も東条は壱を達かせただけだ。
壱の言いたい事を理解した坂上は手を振る。

「口でするのが抵抗あるんなら手でもいいじゃん」
「手…でもいいの?」
「好きな相手にされるってのが重要なんだよ」
「そっか…」

手なら出来そうだと壱は安堵した。
それを見た坂上はいいねー!と大きな声を出した。
その声に驚いた壱は目を丸くする。

「な、何がいいんだよっ!」
「宮森は東条の事すごく愛してるよな」
「…えっ!」
「もともと宮森って恋愛対象は男ではなかったんだろ?」
「まあ、うん」
「普通、そんなヤツがそこまで考えないぜ」

そこまで言われてまた顔が赤くなる。
ニヤニヤと笑っている坂上に壱は言わなきゃ良かったかもと恥ずかしくなって俯いた。







main next