前編




大学の帰り道、駅前のファーストフード店で宮森壱はハンバーガーを
食っていた。
こんな事は良くある光景で日常の一コマとして流れていくのだが
この時は違った。
壱の目の前には一人の男が座ってコーヒーを飲んでいる。
先程から今時の女子高生達が興奮を抑えながら横でキャアキャアと
騒いでいた。
原因はこの男、東条帝人の所為だ。
チラリと壱は男を盗み見た。
東条帝人と言えば冷徹な雰囲気を持つ美形で成績は常にトップ、
その上あの東条グループ会長の孫である。
壱の通う大学で知らない者はいない程有名人なのだ。
噂は学部の違う壱の耳にも入学早々から耳に入って来た。
入学してから1か月、田舎から上京してアパートでの一人暮らしにも
慣れつつあった今日、東条の話題は衰える事はなかったがあまり
人の噂に興味のなかった壱はいつもと変わりのない平凡な日々を
送っていた。
そして東条とはおそらく接点のない日常を送るはずだった。
それなのになぜ大学一有名人と駅前のファーストフード店で向かい
合っているのか。
壱は食べ終わったハンバーガーの包み紙を丸めてトレーの上に置き
開口した。

「で、俺に何の用なの?」

東条は壱に微笑み見つめている。

「だっ、だから用は何だよ」
「お前の名前は?」

逆に質問されてしまった壱は口をポカンと開けたまま静止した。

「お前っ、俺の名前知らないで、あ、あんな事したのかよ!」
「あんな事?」
「キ…」
「キ?」

隣にいる女子高生達が聞き耳立てているのを感じて壱は口を噤み
ジロリと東条を睨んだ。

―遡る事1時間前。

壱は課題を朝ギリギリまでやりようやく終わらせて大学に来てみれば
課題提出であった講義が急に休みになり脱力感に襲われ、ついでに
睡魔にも襲われて構内にあるベンチでうっかり寝てしまった。
そして眠りから覚まさせる何かを感じ目を開けると東条にキスを
されていた。
それもディープなヤツを。
壱は反射的に変態と認識した男をぎゃーっという悲鳴と共に殴って
いた。
幸いな事にキスシーンは見られなかったがちょうど殴っていた所を
数人の学生に見られあの東条帝人を殴ったという騒ぎに発展した。
そこで初めて殴った相手が噂でしか聞いた事のなかった人物だと
分かったのだ。
だんだん人が集まり始めてその場にいられなくなった壱は逃げようと
したがもしかして殴り返されるのでは?と東条の顔を見ると切れ長の
日本人にしては色素の薄い綺麗な瞳が壱を見ている。
壱は改めて目の前の噂通りの美形を認識した。

「やっと会えた」

東条が壱を引き寄せ耳元で女なら腰が砕ける様な甘く響く声で囁いた。
ひっと短い悲鳴を上げた壱だがいつの間にか多数のギャラリーに
囲まれている事に気づき己の腕を離さない東条を引っ張ってその場
から逃げだした。
そして話があると東条に言われ今に至る。

「名前など調べれば分かる事だが俺はお前の口から知りたいんだ」

さすが東条グループの直系であって否と言わせない雰囲気にさせられ
壱はしぶしぶ自分の名前を言った。

「…宮森壱だよ」
「宮森壱…。俺は東条帝人だ」
「あー、うん。…話ってさ俺の名前知りたかったの?今日バイトが
あるからもう帰っていい?」

バイトの時間までまだ十分に時間はあるが女子高生達だけではなく
周囲の目線が目の前の男に注目している事を感じて居心地が悪くなり
早々にこの場から立ち去りたくなっていった。
東条は壱から視線を外し周囲に向けた。
その視線は先程まで壱を見ていた甘いものとは違い冷え冷えする
もので一瞬にして感じていた視線が消える。
そう言えば友人の一人が東条を氷の麗人と呼んでいた事を壱は
思い出した。
噂によると東条のルックスとステータスに群がる女達を近寄らせず
一部の者達しか傍にいる事を許されていないらしい。

「輪廻って信じるか?」
「は?り、輪廻?」

予想外の突然の問いかけに聞き返してしまう。

「俺達が初めて会ったのは平安だった」

平安?そんな場所覚えがないんだがと記憶を探る。

「俺そんな場所知らないぞ」
「場所ではない時代だ」

…ん?東条ってあれか?電波系か?壱は腰を少し引いた。

「今に至るまで俺たちは5回転生を繰り返し同じ時を生き愛し合った」
「えっ…と?」
「だがどの時も常に俺が男でお前が女だった」

なぜか忌々しい言い方をして瞳に陰りを帯びさせた。
壱は何て言ったらよいか分からず口を開けたまま固まった。

「行くぞ」
「は…え?えぇ?」

急に立ち上がった東条の手に引かれて壱はファーストフード店を
出た。
そして流れるままにタクシーに乗せられて庶民には縁のない超が付く
であろう高級マンションに着いていた。

「あの、ここはどこでしょうか?」
「俺の家だ」
「は!?何で俺がお前の家に行かなきゃならないんだっ…ひっ!」

壱の腰に東条の腕が回されそのままマンションの中に連れて
行かれた。
もちろん抵抗はしたが悲しい事に力の差がありすぎて完敗である。
そのまま最上階にある未知の巣窟にズルズルと引きずられていった。

「離せーこんちくしょー!俺より背が高いからってなめんなよー!」
「少し大人しくしろ」
「うるせー!俺を…うわっ!」

いきなり東条が壱を離したためそのまま重力によって壱は落下した。
しかし予想していた衝撃は訪れずもふっと柔らかい感触に包まれる。
きょろっと周りを見るといつの間にか広い部屋のでかいベットの上に
壱はいた。
ふと壱の上に影が落ちる。

「この時をどんなに切望したか」

壱はとてもイヤ〜な予感がした。

「お、俺さバイトがあるから帰るわ」

慌てて上半身を起こそうとしたしたがそれは叶わず肩を押され倒され
てしまった。
文句を言おうとした壱だったが…。

「…!んんっ!?んー!!」

東条に顎を掴まれ濃厚なキスをされた。
壱の逃げる舌を東条はあっさりと捕らえ遊ぶようにわざと逃がしては
絡め刺激を与える。

「んぅ…はっ…はぅん」

ふがーっ!なぜ俺が男にキスされて変な声出さなきゃいけない
んだー!とわずかに残る理性が壱の意識を留めている。
東条のもう片方の手が下がった。

「…ふんぎゃーーーっ!!!」
「もう少し色気のある声を出してもらいたいんだが」
「男に色気を求めんな!ってお前どこ触っていやがる!?」
「壱のかわいい息子だが?」
「か、かわいい言うなー!触んじゃねぇー!!」

壱は東条を睨んだがその顔が煽る事に気付いていない。
東条はフッと艶のある笑みを浮かべた。

「いいな。その顔」
「は?な、何言ちゃってるんだ?お前」
「帝人だ」
「え?」
「帝人と呼べ」

甘く囁かれ不覚にもぞわりと身体が震える。
それを振り払うかのように手足をバタつかせて暴れた。

「壱」
「耳元でしゃべるなー!」
「俺の名を呼べ」
「一生言わ…わぎゃーーー!!」

再び色気などない声を上げた壱はいつの間にかジーンズが太ももまで
下ろされてさらにパンツの中に手を突っ込まれついでに大事な己の
息子を掴まれている状態になっている事に気付いた。
東条はゆるゆると上下に手を動かす。

「やめっ…やっ」

東条の手の動きに翻弄され確実に反応を見せていくのが分かり壱は
かなり焦った。
このまま男の手でいかされるなんて一生の恥!汚点だ!と何とか
抵抗を試みたが…。


………。


「恥だ…。汚点だ…」

巧みな技巧により呆気なくいかされてしまったのであった。
壱の出したものを手で受け止めた東条はどこか嬉しそうにそれを
舐めた。
ぼんやりとその様を見た壱はビシッと固まり氷の麗人、東条帝人は
変態であると再度認識した。
そして同時に疑問が浮かんだ。
そもそも何故自分がこんな事になっているのかと。
壱は特に目立ったものは持ってないのだ。
成績だって容姿にしたって平凡である。
森の中の一枚の葉っぱなのだ。

「どうして俺にこんな事するんだ…?」
「どうして?」

東条の眼の奥が冷たく光った気がした。

「いつもお前は記憶を持たず俺を忘れる」
「お、おい?」
「そして俺は記憶を持ち続けお前を探す」
「ひぁっ!」

信じられない事に本来なら排泄にしか使わない奥の一点に指を
入れられた。
質問なんかせずに何が何でもこの場から逃げ出せば良かったと
後悔するが後の祭りである。

「何処に指入れてんだ変態野郎!」
「口が悪いぞ。壱」
「いっ痛いっ」

急に指が増やされ奥を開かせるように動いていく。

「指を…抜け!」
「人にお願いする時の言い方じゃないな」
「このっ…うぐっ」
「言ってみろ」
「くっそー!指を抜いて下さい!」
「不合格」
「は!?」
「誰に頼んでいるのか言わないと分からないぞ」

ニヤリと笑った東条はさらに指の動きを激しくした。
ドSかー!コイツはー!!と怒りが露わになったが苦痛から逃れる
ためにプライドを少し捨てて叫んだ。

「指を抜いて下さい!て…帝人!」

氷の麗人なんてどこにいるのやら、壱の目の前にいるのは華の
麗人である。
それは幸せそうに艶やかに笑った。
ポカンと壱はつい見とれてしまった。

「もっと。もっと呼べ。壱」
「…帝人」
「もっと」
「帝人―んっ」

奥に入っていた指がズルリと引き抜かれた。
ほっと息を吐いた瞬間。

「――――!!!?」

指なんて比較にならない別のものがさっきまで指が入っていた場所に
押しあてられ侵入し始める。
壱は今自分の中に入ろうとしているものが何なのかが分って一気に
青褪めた。

「やめろっ!そんなの入るわけがない!」
「暴れるな。力を抜け」
「約束が違うだろ!」
「ちゃんと指は抜いただろ」

しれっと言う東条を殴りたくなった…否、殴りたかったが体格差があり
うまい事押え付けていられているので叶わず喚くしかなかった。

「ふざけんな!何でお前のもんをお俺の…ごにょ…に入れなきゃなら
ねえんだよっ――いてぇっ!!」
「力を抜けと言っているだろう」
「お前がぁ…ぬ、ぬけ…っあぐぅ」

ひゅーひゅーっと壱は自分の呼吸の音が聞こえた。
己の息子よりご立派な東条のものがギチギチと無理やり入ってくる。

「もう少しで楽になる。息を吐け…」
「む、無理…」

東条も辛いのか顔を少し歪めた。
東条の手が壱の萎えているものを掴み性感を刺激する。

「ん、んあ…あぁっ」

壱のものが反応を見せ始めふと力が抜けたその瞬間東条は一気に
貫いた。

「――――――――っ!!!」
「っは…全部入ったぞ」
「入っ…た?全…部?」
「ああ」

信じられないと眼を丸くする壱に微笑む。
壱の頭を優しく撫でそのまま指で髪を梳いて頬を辿り顎のラインを
なぞって優しく愛撫する。

「動くぞ」
「えっ!?ちょっ…」

最初はゆっくりだったものの徐々に激しく揺さぶられた。
どのくらいの時間が経ったのか短いのか長いのかそれすら分からず壱はただ喘いだ。

「も、もう止め…て!抜いてぇ」

辛くて痛いのに東条は止めてはくれず何かを探っている動きを
見せる。
ある一点を突き上げられた瞬間、壱の身体がビクリと反応した。

「あっ、な何だ!?」
「ここだな」
同じ所を何回も突かれて身体の中心が熱を持ち始め触ってもない
のに起ち上がり蜜がトロトロと零れ落ちた。

「あっあっ!いや…っんあぁ、も、イクっ」

我慢ならず自分のものを掴もうとしたが東条が先にそっと掴み激しい
突き上げと共に上下に動かした。

「いけ」
「あああぁぁーっ!」

壱が射精した瞬間一番奥に熱いものが叩き付けられる。
それを感じながらそのまま意識が遠ざかっていった。







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