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午後は授業はなくホームルームだけで解散になった。
早く解放されたことで生徒たちは浮き立っているが蒼夜はズーンと
重い 気持ちで いっぱいだった。
席に座ったままの蒼夜の肩をポンと葛城が叩く。

「よっ。お前さ部活何入るか決まった?」
「え、いや…まだだけど」
「じゃあさこの後うちの部見学に来ない?」
「千秋の?新聞部だよな」
「そ。出来れば入って欲しいんだよねー」
「悪いけど俺、この後行かなきゃいけない所があるからさ」
「マジでー。どこ行くの?」
「…生徒会室」

嫌そうに言うと葛城は急に目を輝かせて俺も行く!と言い出した。
一人で行くよりは葛城がいた方がいいなと考え頷こうとした時、すぐ 傍からダメだよという声がした。

「何でよー白姫〜」
「生徒会室は一般生徒は立ち入り禁止なのは知っているでしょ。呼ば れた本人以外は入れないよ」

困った顔で霧島は葛城を注意した。
葛城はチェッと舌打ちした後、その場でしゃがんで両腕を蒼夜の机の 上に乗せた。

「蒼夜さー、マジで白王子と知り合いだったんだな。しかもキングまで 登場するしさ。その上、生徒会室まで呼ばれているとは…何か俺に 隠して る?」
「別に何もないよ」
「うーん。今回の転入生も俺の予想通り何かあるんじゃないかと思って るんだがな。 見た目そんな風には見えないけど」

アハハハーと笑っている好奇心一杯の葛城に見た目は余計な御世話 だと 突っ込んだ。 しかし葛城の顔が一変して真面目なものになる。

「蒼夜、気を付けろよ」
「何…?」
「さっきの昼ごはんの時気付かなかったかもしれないけど澪姫の手下が お前の事見てたからさ」
「手下って…」
「澪姫って白王子にご執心だからさ白王子に近づいたものは裏で 何され るか分からないんだ」

確かそんな事を昨日田中が言っていた。
そう言えば田中は何組なのだろうか。
聞いとけば良かったと後悔した。
ふと、もしかしたら葛城が知っているかもと思い聞いてみる。

「なあ、田中って知ってる?」
「田中?ってどの田中だよ」
「うーん。同じ学年で葵よりも少し背が高くてどっちかっていうと男に
してはかわいい感じの子」

んーと考えていた葛城がポンと手を打った。
どうやら誰かにヒットしたらしい。

「もしかしたら田中充じゃねえか?」
「たぶんその子かも。何組か分かる?」
「確か2−Dだった気がするぜ」
「D組だったら竜司と同じクラスだね」

霧島に言われて藤堂がD組だと知る。

「で蒼夜は田中充に何か用なのか?」
「いや別に」

昨日の事なんて言えるはずもなく言葉を濁すとニヤッとした葛城が
勘ぐってきた。

「まさかまさか惚れちゃったとかないよな」
「はあっ!?」
「田中充と言えば去年姫候補にも上がったからな。蒼夜の好みはそう
かー」

違うっと言い返そうとした時、霧島に腕を掴まれる。
思わず見ると普段の霧島からは想像付かない怖い顔をしている。

「ダメッダメ!ダメだからね蒼夜!何てこと言うの葛城君!蒼夜には
決まった 相手がいるんだから」

蒼夜と葛城は思ってもみない霧島の迫力に気後れされてコクコクと
頷いた。
霧島は拳をギュっと握りブツブツ呟くとそのまま教室を出て行った。

「蒼夜…そんな相手いたんだ」
「俺知らないけど」

もしかして霧島を怒らせたらめちゃくちゃ怖いんじゃないかと思った
二人だった。













蒼夜は一人生徒会室に向かっていた。
今思えば生徒会役員である霧島に一緒に行ってもらえば良かった
と後悔した。
さりげなくD組を覗いたが生徒はほとんどいなく藤堂も田中も
いなかった。
もっとも藤堂に関しては朝会っていない為、学校に来ているのか
さえ怪しいが。

「行きたくねえなー。何で仁部先生あいつに預けるかなー」

一人ブツブツ言いつつポケットに手を突っ込むと固い物に触れた。
教室を出て行く時葛城からデジカメを渡されたのだ。
これで生徒会室とその様子を写せという指令が下された。
めんどくさいので断ると田中に関する情報料を請求してきた。
等価交換だよ塚森君と言われ渋っていると身体で払う?と尻を
撫でられた。

「ったく千秋のヤロー」

文句を言いながら生徒会室に向かう。
生徒会室に向かう途中に実習棟を通っていく。
そこを抜け庭園の中にある渡り廊下を通過すると生徒会室だけの
棟があるらしい。

「ちゃんと辿り着けるのか?」

人気のない実習棟の廊下を歩いているとガタンと物音がした。
蒼夜の足がピタと止まる。
するとまたガタンガタンと音がして人の声も聞こえてくる。
別に何の事もないが蒼夜のカンが良くない事を告げている。
たいていそういう時は外れた事はない。
耳を澄まして集中する。

「あそこだな」

やれやれと技術室のドアにそっと耳をくっ付けた。
話し声で複数人いる事が分かる。
下卑た笑い声と悲鳴が聞こえた。
両開きのドアの取っ手を掴むが案の定、鍵が掛っている。
立派な彫刻が施されているドアをジッと観察してうーんと唸った。

「高いよなぁ、きっと」

メガネを外して内ポケットに入れ蒼夜は手首足首をグルグル回して
その場で軽くジャンプをする。
そして思いっきりドアを蹴破った。











どうしてこんな事になったのかと取り押さえられている田中は
今にも泣きそうに顔を歪めている。
澪姫から話しがあると取り巻きたちに言われて無理矢理技術室へ
連れてこられるとそこにいたのは厭らしい目で見てくる3人の
生徒だった。
しかもその顔に見覚えがある。
去年しつこく言い寄ってきた先輩だった。
いつの間にか取り巻き達は消え逃げようとドアの方へ走ろうと
したが捕えられ引き倒された。
そして2人に手足を押さえられ自由を奪われる。
一人の生徒はドアに鍵を掛けビデオを回し始めた。

「何で…こんな事っ」
「充ちゃんが悪いんだぜー」
「そうそう、俺たちの事無視するからさ」
「白王子なんて追いかけるから澪姫に目ェつけられちゃうしな」

ぎゃはははっと足の上に跨っている生徒が笑った。
そして抵抗するもブレザーを脱がされシャツもすべてのボタンを
外されはだけさせられた。
肌の白さに生徒たちの喉がゴクリと鳴る。

「すべすべじゃん」
「い…や、止めて」

手が胸を這いまわり田中は青褪めて身体が震えた。
淡い色の胸の突起を指でしつこく擦られる。
やがて固くなりぷくりと立ち上がった。

「やだぁっ」
「何言ってんだよ。立ってるぜ」
「ひっあ!」

強くキュッと抓まれ田中は胸を突き出しながらビクンと跳ねた。
その反応に気を良くした生徒たちが次なる暴挙に出ようと
していた。
腕を掴んでいる生徒が食べごろになった胸の小さな実に吸い
つこうと舌を出しながら 顔を寄せてくる。

「止めてっ!!」

田中は思わず手に力を入れ抵抗をした。
すると頭上から覆いかぶさるように身をかがめて来た生徒は
バランスを崩して椅子と机にぶつかり尻もちを着いた。

「おいっしっかり押さえとけよ」
「いてー。くっそ」
「いやっ!いやぁ!」

跨っている生徒が田中のベルトをはずそうとした。
それを必死に阻止しようと手で押さえたがもう一人の生徒が両腕を
掴み田中の頭上で抑えつけた。
ビデオカメラを持っている生徒がベルトを外すところを映そうと移動
した時コードに足を引っ掛けて工具が音をたてて棚から落ちた。

「バーカ。お前も何やってんだよ」
「悪ぃ」
「ほらちゃんと映せよ」
「分かってるって」
「いや、止めてーーー!」

田中のベルトが外されズボンを掴まれた。
そしてそのまま下着ごと脱がされそうになった時。


ドゴォン!!


「何だ!?」

入口からの大きな音に思わず全員の目線がドアの方へ向けられた。
そしてまたドアの歪みと共に大きな音がした。
ビデオカメラを持っている生徒がそっとドアに近づいた瞬間ー。


ドッゴオォォォン!!!


「ぎゃあっ!」

ドアごと生徒が吹き飛ばされる。
床にビデオカメラが回転しながら転がった。
田中を抑えつけている生徒2人は一瞬呆気に取られたが我に返り
立ち上がった。

そして技術室に現れた悪魔を見た。




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