25




恐怖で一杯になった俺は後ろを向く事が出来ず、無意識にエドにしがみつく。
エドは身体を揺らし、声を上げて笑った。

「くくくっ。よぉ、久しぶりだな。何でそんなに苛立ってんだ?」
「離れろ」
「そんな事を言われてもな。ひっついているのはセイジだぜ?なぁ?」

突風が駆け抜けると同時に大きな音を立てて、近くにあったローテーブルやソファーがこなごなに破壊された。
め、めちゃくちゃ怒ってる……っ。

「殺り合いたいところだが、ここはアリアス様の城だからな」

そう言ってエドは俺の首根っこを掴んでポイッと放ち、一瞬の内に転移をしていなくなってしまった。
え!?
いきなり空中に飛ばさた俺は、絨毯の上に転がるのを覚悟して目をぎゅっと瞑り衝撃に備える。
だけど、全身に大きな衝撃はなく、二本の腕が俺を受け止めた。
良く知っている腕の中で身体が硬直する。

「聖司」

名前を呼ばれてビクンッと体が跳ねた。
目を合わせられない。
俯いていると、とても低い声でもう一度名前を呼ばれる。
これ以上は逆らえなくて、ぎこちなく恐る恐る顔を上げた。

「――っ!」

深紅の瞳が俺を睨んでいる。
手が伸びてきて、何をされるか分からない恐怖にびくりと身体が竦んだ。
俺の唇を指が拭うように動いて、離れた。
指には赤いものが付着している。
それがエドの血だと気付いた時には、もう遅すぎた。

「したのか」
「あ、……ぅ」

ずんっと部屋の中の空気が一層重くなる。
それが俺に圧し掛かり、息が出来なくて口をパクパクと開閉した。
目の前からくる威圧を収めて欲しくて、喉から絞り出すような声で、恐ろしくも美しい男の名を呼んだ。

「ジ、ル」











「あ――っ、や、あ、あぁっ」

ギシギシと大きなベッドが軋む音が部屋に響く。
強制的にルベーラ城から転移で屋敷へ戻って来た途端、ジルの寝室のベッドに無理やり押し倒されて、すぐに身体を繋がれた。
それからずっと、激しく動くジルにあわせて俺も揺さぶられている。
行き過ぎる快感が苦しくて首を振って止めてくれ、と懇願しているけど、全く聞いてはくれない。
大きくて固いモノに抜き挿しされていて、恥ずかしい音が止むことなく繋がっているところから聞こえてくる。
俺の内壁はすでにジルの熱でドロドロに溶かされてしまっていた。

「ジル、もう、やめっ、ああっ」

自然に溢れてくる涙が頬を伝っていく。
無表情のジルが俺をジッと見た後、顔を近づけると、舌で涙を拭って来た。

「ごめっ、ごめん」

謝っても、ジルの怒りは消えず、足を持ち上げられて下から突き上げられる。
何度目かもう分からなくなった下腹部からの大きなうねりが押し寄せてきて、声を上げながら吐精した。
息を切らしながら、謝った。
涙でぐちゃぐちゃな顔の俺をジルは見下ろしている。

「ヤツらに許したのか」

ヤツら……?
許す……?
ぼんやりと霞む目でジルを見ていると、首筋に指が這う感覚がした。

「お前の血を」

指は総統に吸血された場所を行き来する。
え、なんで分かったんだ?
吸血の跡は消えていたはずなのに。

「ジル……」
「言え」

もうごまかせる雰囲気じゃなくて、俺は総統に出会った直後に吸血されてしまった事を正直に話した。
すると、ジルの身体から半端ない殺気が溢れ出す。
深紅の瞳が怒りに燃えている。

「殺す」
「ひっ」

思わず、身体がびくりと跳ね上がる。
震えている俺にジルは話しの続きを促す。

「きゅ、吸血されたのは総統だけだよ。エドにはされてない。エドは精気が足りなくて具合が悪くなった俺に血をくれたんだ」

息苦しくて声を出すのも辛いけど、なんとか一気に伝えた。
だけど、まだジルの瞳から怒りが消える様子はない。

「なぜ」

一言声に出してジルは俺を見ている。
なぜって……何?
俺が総統に吸血された事?
それとも、エドを吸血した事?

「んん、あぁっ」

ジルのモノがゆっくりと奥から抜かれていく。
内壁が擦れて、思わず力が入ってしまう。
ぎゅうっと締め付けてしまい、ジルの唇から短い吐息が漏れる。
艶やかな雄の表情にドキリとして見惚れていると、ぎりぎりまで抜かれ、今度は勢いよく最奥まで挿入されて肌がぶつかる音が響いた。

「――っ!!」

声にならない声が唇から漏れて、身体が反り返る。

「なぜ、俺を呼ばなかった」
「あっ、んぅっ!」

再び深く突き入れられて、激しく攻め立てられる。

「俺のものだ」
「あっ、あぁーっ!」
「この身体も、血も魂も全て」
「ジル、やっ、あ、ひぁっ」
「許すな」
「イっちゃ、うっ。また、あっ、だめっ!そこ、やだっ、ああーっ!」
「誰にも」

ジルの手が俺のモノに触れたと思ったら、根本を握られた。
吐精寸前の状態だった俺は解放したい苦しさにジルの下で身体をくねらせた。

「ジル、離してっ」

俺の訴えを無視してジルは首筋に顔を埋め、一気に噛みついた。
急激に血と精気が失われる感覚に襲われて青ざめる。
本能がこのままだと危険だと俺に通告してくる。

「や、ジル……っ、あ、やだ、んんっ」

逃げようとするが吸血しながらジルは激しく腰を前後に振っている。
ジルと繋がっているところがとても熱くて、理性までも溶かされていく。
もう何も考えられない……。
だんだん視界が狭まって来て瞼が落ちる寸前で腕を引っ張られ、上半身が起き上がった。
ジルと座っている状態で密着する。

「――っ!」

俺の体重のせいでより深くジルと繋がった。
その状態で下から突き上げられて、頭を左右に振りながらジルにしがみつく。
苦しくて、気持ちよくて、もっと繋がっていたくて、終わりにしたくて……自分でもよく分からない状態になっていると、だらしなく開いている唇を舐められ、噛まれ、また舐められる。
舌が触れ合ったとき、精気が入ってきた。
吸血されて精気がなくなっていた俺は夢中で舌を絡めた。
ああ、美味しい……。
もっと欲しい、もっと……。

「ん、はぁっ、んんっ」

水音を立てながらジルの舌を追いかけて強く吸った。
催促するようにペロペロと舐める。

「ジル、ちょうだい」
「……」
「もっと、ちょうだい……」

唇をくっつけてねだっていると、腰をつかまれて下から突き上げられた。
いきなりの事に目がチカチカして息が詰まる。
俺の身体が上下に揺さぶられて必死にジルにしがみつく。

「あ、ああっ、あーっ!」
「欲しいか」
「あ、んぅっ」
「聖司」

耳元で名を囁かれて、ぞくぞくとした感覚が這い上がる。

「ほ、欲しい」
「お前は誰のものだ」
「俺は……お、俺の、あぁっ」

俺のものだ、と言おうとしたら肩を強く噛まれた。
痛いはずなのに全ての刺激が快感に変わってしまって、ビクビクと跳ねる身体を自ら制御をする事が出来ない。
ジルが俺の血を舐めている。

「お前は俺のものだ」

忘れるな、と言った直後、最奥を熱いモノが叩きつける。
急に循環した大量の精気を身体が受け止めきれず、俺は意識が飛んで暗転した。




main next