俺はジルの舌を咥内に受け入れ、息子を扱いている手に身を任せる。
ビクビクと腰が震えて来て、やっと達けると思いながらジルの手の中に白濁を放った。
息を吐いていると……ジルはまた俺のアレを舐めている。
ジルはおいしいみたいだけどそれを舐められるのは血と違って抵抗がある。
しかしペロペロとジルが舐めている姿を見ていたらちょっとだけその味に興味を持ち始めた。
実際に口にした事はないがそれがまずいというのは認識している。
だけどおいしいものを食べ慣れているジルが褒めるくらいなんだからものすごくうまいのかも。
で、でもなぁ……自分のを口にするってどうなんだ。
う〜ん、と考えた結果、俺はジルの手を掴み、引き寄せた。
ちょっとだけなら……。
手のひらにべったりと付いているアレをペロっと舐めてみる。
………。

「おぇ……」

まっず!!
マジでまずい!!
止めておけば良かった!
どこがうまいんだよ、こんなの。
精気の一欠けらも入ってこないし。
ああ、めちゃくちゃ後悔!
口を早くゆすぎたい。

「ジル、ちょっとどいて………ジル?」

ジルが俺を見下ろしたまま動かずに止まっている。
ど、どうしたんだ?
もしかして俺の行動に引いたとか?
十分ありえるかも。

「いや、あの……さ!?」

いきなりジルが俺にぎゅうっと抱きついて来た。
結構、苦しい。
ちょっと、腕の力を弱めてくれないかな。

「ジル、くる、し」
「お前は……」
「ジルってば」
「なぜいつもそのように」
「くるし……って」

ジルは顔をぐりぐりと擦り寄せて来て耳元で息を吐く。
それがすごく色気があって背中がぞわっとした。

「痛む」
「え?」
「胸が」

えっ!?

「ジル、痛いって……胸が痛いのか!?」

ジルが痛いって言うなんて……!!
ものすごく心配になってしまった。
ジルが額をコツっと合わせて来る。
俺はそっと背中に手を回してゆっくり撫でた。

「ジル、大丈夫か?セバスさん呼ぼうか?」

うん、セバスさんを呼んでセルべックさんを連れて来てもらった方がいい。
そう判断してベッドから起き上がろうとしたけどジルが俺の上にいるから 動けない。

「セバスさん呼んで来るからさ」

身体をそっとずらそうとしたらジルの腕の力が強まってさらに動けなくなってしまった。
これじゃ、呼びに行けないって。

「なぁ、すぐ戻って来るからさ、少しの間我慢してくれよな」
「どこに行く」
「だから、セバスさんを呼びに」
「ここにいろ」
「だって、胸が痛いんだろ?」
「痛む」
「ほらっ」
「お前の行動一つに胸が熱くなる」

……は?

「熱は内側から圧縮され痛みに変わる。だが不快なものではない」

ジルは一体、何を言っているんだ?
高度なジル語はやはり俺には分からない。
セバスさんなら分かるかもしれないからどっちにしろ早く連れて来よう。

「うわっ、ちょっと」

ジルが俺の脚に硬くなっている自身をグイッと押し付けてきた。
何してんだよっ、胸が痛いって言っている時に!

「止めろって。今はこんな事をしている場合じゃないだろ?」
「聖司」

ジルは俺が注意をしてもグイグイと押し付けてくる。
何考えてんだコイツは!
手で身体を押して離れようとするがジルはべったりとくっついている。

「ジル、早く胸を診てもらわないと!何かあってからじゃ遅いんだぞ!」
「遅い?」
「ああ、そうだよ」

俺が真面目な顔をして頷けばジルがもうすでに遅いだなんて言って来るから 慌ててしまった。
おいおい!いつの間にそんな深刻な状態になってたんだよ!
安静にしていなきゃいけないんじゃないか!?
だったら尚更こんな事をしてちゃダメだ!

「いつからだよっ。何でもっと早く言ってくれなかったんだよ!」
「……」
「俺、お前の伴侶だろ!?」

そりゃ、頼りないかもしれないけどさ。
レヴァの力だってまだ満足に扱えなくて弱いけどさ。
それでも、俺は……俺は……。

「聖司、泣くな」
「泣いてないっ!」

まだな!
ちょっとだけ涙が出そうになったけど。
ジルの唇が目じりに触れる。

「だ、大丈夫なのか?ジル」

はだけているシャツから覗く胸にそっと直接手を当てた。
どの辺が痛いのだろうかと心臓の上を中心に何度も何度も撫でる。
するとジルが俺の手を掴んで強く握って来た。

「ジル?痛いのか?」

ジルは何も言わず手を握ったまま俺の肩に顔を伏せた。
これはもしかしてかなりやばいんじゃないか?
セバスさんを早く呼ばないと!
焦っていると俺の耳にまた信じられない言葉が。

「聖司、苦しい」
「!?」

く、苦しいだって!?
『痛い』に続いて『苦しい』もジルが普段口にしない言葉だけに激しく動揺してしまう。

「あ、ジル、ジルっ。セルべックさんにすぐ来てもらうから! そうしたらすぐ良くなるからな!」

安心させるように何度も優しく背を撫でる。
ジルは肩に顔を伏せたまま、ふるっと否定するように頭を振った。

「だ、大丈夫だって。セルべックさんは名医なんだから。きっと治してくれるよ」
「あの者では無理だ」
「無理って……何言ってんだよ。あ、もしかしてもう診てもらっているのか?」

それで治せないって言われたとか?
不安がドキドキと鼓動を速めていく。
無言でいるジルにもう一度、診てもらったのか確認するとどうやらまだみたいだった。
なんだ、じゃあまだ希望はあるじゃないか。
俺はセルべックさんに診てもらう事を強く勧めた。
だけどジルは頷かない。

「ジル、どうして診てもらわないんだよ。治る可能性があるんだからさ、セルべックさんに……」
「この痛みや苦しみを取り除く事が出来るのはただ一人」
「え?」

セルべックさん以外の名医がいるのか?
誰だろう?
すぐに来てもらえる医者なのか?

「それって誰?」
「聖司」
「何?」
「聖司」
「何だよ、早く言えって」

俺をジッと見てジルはまた聖司と名を呼んだ。
怪訝な顔をしていると。

「聖司、お前だ」

俺っ!?
何で俺!?
俺には誰かを治すような力はないぞ。

「お前だけが俺に」

ジルがすごく熱い眼差しで見下ろして来て、握っている俺の手を 口元に持っていく。

「痛みや苦しみを与えられる」

音を立てながらキスをされ、時折撫でるように唇が手の甲を這う。
俺がいつジルに痛みや苦しみを与えたんだ?
まったく身に覚えがない。

「そして、それを消す事ができるのも、お前だけだ」

手の甲から離れた唇がゆっくりと俺に近づいて来る。
なぜか逃げる事が出来ずそのまま重なった。
食むように角度を変えながら何度もキスをされる。
この後、ジルにヤリたいとねだられ、 ヤったら痛みも苦しみもなくなるっぽい事を言われたから 俺は理解が出来てなかったけど頷いた。
結局、ジルから完全に解放されたのはエドと約束をした期日の朝だった。



――そんな訳で。



「聖くーん!ボクが腰をマッサージしてあげる!」
「いいって」
「遠慮しなくていいから!」

近づいて来るユーディの顔を手でぐいっと押しのける。

「もぉー、せっかく偽ヴァルタの犬がいないのに、聖くんったら冷たい」
「ユーディ、キオの事を偽ヴァルタって言うな」
「だって〜」

ユーディの天敵とも言えるキオは万が一の事を考えてジルの屋敷に残ってもらっている。
すごくついて来たいという顔をしてたけどな。
でも、誰かに俺のベッドの上に置いた転移鏡を見つけられたら計画が終わってしまうから なんとか説得した。

「……で、聖くん。その訳は?」
「……」

さっきから腰がだるそうな俺の姿を見てしつこく理由を聞いて来る。
ものすごくニヤついている顔を見れば教えなくたって絶対に分かっているはずだ。
黙っていると応接間にエドがやってきた。

「よお」
「あ、エド。今日は……」

エドに挨拶をしようと思ったら目を細め俺をジィッと見る。
腰をかばっているのがバレたのかも。
教える気がなくなったら大変だと無理に背筋を伸ばしてまっすぐ立つ。

「セイジ」
「な、何!?」

しまった。
声が裏返った。




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