ジルの手が前に来てすでに濡れまくっている俺のモノを握った。
しかし後ろから入っているモノも前を握っている手もなぜか動かさず止まっている。
熱が燻ったままの状態に足りなくて全然足りなくて、早くしてと意志とは関係なく中にいるジルをぎゅっぎゅっと締め付けたり自ら息子を慰めようと手を伸ばした。
だけどジルの手が息子から離れて俺の手を掴み動きを封じた。

「ジルっ!なんでっ!」
「言え、どうして欲しい」
「んっ、……はぁっ」

ジルは軽く腰を揺らして俺に聞く。
どうして欲しいってそりゃ……。
心の中でして欲しい事を思うが実際に声に出すのは躊躇われる。
だからといって言わなければこのままなのだ。
恥ずかしいけど小さな声で訴えた。

「達きたい……」

するとジルは息子を握りゆるゆると手を動かす。
でも、力がとても弱くて達く事が出来ない。
ますますもどかしくなった俺はギュッと唇を引き結び首を捻って背にぴったりとくっついているジルを もの言いたげに見た。

「ジ、ジル……もっと、もっとさ、その……」
「もっと、何だ」

もしかして……ジルは具体的に言うのを待っているんじゃないだろうな。
まさか昨日俺が吸血された影響で口走った『ジルが欲しい。早く中に挿れて。たくさん精気を出して』 を言ったせいか?
バババ、バカかっ!!
そんなセリフ、簡単にほいほい言うわけないだろ!

「聖司」
「……っ!!」

耳元で名前を囁かれて身体が熱くなる。
ずるい……。
なんで俺ばっかり名前を呼ばれただけでドキドキしたり 恥ずかしいセリフをジルに言ったりしなきゃいけないんだっ。
まぁ、俺がジルの名前を呼んだところでどうにもならないけど……。
後ろから覆い被さり俺の頬に顔を擦り寄せているジルを横目で見た後にそっと耳に唇を寄せた。

「……っ、はぁ……ジルぅ」

丁度名前を呼ぼうとした瞬間、ジルの指が俺の息子のくびれたところに触れたから吐息が漏れてしまい ジルの名前もかすれた声で呼んでしまった。
あー…これは失敗だ……と思ったら――っ!?
俺の中にいたジルがドクンっと脈打ってさらに大きくなった。

「――っひぁ!!」

唐突にジルが腰を打ちつけ激しく抜き挿しを始める。
俺の息子を握っている手も強く動かされてすぐに吐精してしまった。
シーツにジルの指の間から俺が出した白濁が零れて落ちていく。
息つく暇もなく俺は顔をベッドに押し付けたまま腰を高く掲げジルに後ろから突かれる。
どれくらいの時間が経ったのだろうか……。
未だにジルは俺を攻め続けていた。
いい加減この体勢がきつい。

「ジ、ああっ、ん……っ!ジル……っも、後ろ……ヤダ!」

すると、ジルがズルっと自身を引き抜く。
ホッとしたのも束の間、仰向けにされると 足を大きく割られジルがその間に入りこむ。
そして立派な息子をまた俺の中へ収めた。
無駄のない素早い動きに抵抗する暇もない。
おい、待て。
俺は後ろが嫌だから前からしてだなんて言ってないぞ。
必死にジルに訴えようとしたのだがまた律動が始まるとそれどころじゃなくなった。
ジルが動くたびに俺の中がすごく熱くなってドロドロに溶けてしまいそうだ。
気持ち良過ぎて上げ続けた声が掠れて来てもまだジルは達く気配をみせなかった。
俺なんかもう三回も出してしまったのに。
この時、自分が出した条件を後悔し始めた。
ジルじゃなくて俺が一回達ったら終わりにしとけば良かったっ!
俺の中で本能と理性の会話が聞こえてくる。
本能が言う、いいじゃん、気持ちいいんだろ?だったらこのままジルにまかせておけば。
理性が言う、ダメだよ。明日の為にレヴァになる練習しなきゃいけないし、このままだったら いつ終わるか分からないよ。
本能が言う、ま、練習の事は置いといてもそろそろ精気が欲しくなってきたな。 身体の中を駆け巡るあの瞬間がたまらないよな。
理性が言う、そうだよ、これからの練習の為にたっぷり精気をもらわないと。
本能と理性が言う、ジルに早く達ってもらおう。

「ジル、も、達って……」
「……っ」

ギュッと無意識にジルを強く締め付けてしまってジルの眉間にしわが寄る。
だけど達ってはくれなかった。
早く精気が欲しい気持ちと早く練習を始めたい気持ちが合わさってもどかしい気持ちが大きくなり 癇癪を起した子供みたいな態度を取ってしまう。
ついでに言いたくなくて閉じ込めていた言葉を解放して口から出してしまった。

「なんでっ、なんでいじわるするんだよ!」
「……」
「ジルのバカバカ!達かないのにも程があるんだよ!」
「……」
「早く達って俺の中に出せよ!待ってんのにっ。ジルが欲しいのに……!」
「欲しいか」

確認するように聞いて来るジルにムカっとするが無言で頷いた。

「聖司」
「なんだよ」
「お前の中はとても心地よい」
「……へ?」
「挿れると慎ましやかに俺を包みこむ」
「……は!?」
「しかしすぐに熱を持って熟し吸いつくように 締め上げる」
「……ひ!?」
「奥へと突き進むたびに……」

これ以上言うなー!!と叫びながらジルの口を手で覆った。
なななな何だ、いきなり。
一体、ジルに何が起きたんだ。

「ジル?」

ジルは俺の手を握り己の口から離し、チュッと音を立てて甲にキスをする。
そして大きく腰を揺らした。

「あぁ……っ」
「このまま」
「あっ、は……」
「お前の中に」
「ジル、やっ、あぁ!」
「だが、お前が望むなら」

ズンっと深く突かれて俺は声なき悲鳴を上げた。
一番最奥が欲しかったもので満たされる。
急速に精気が身体を駆け巡りビクビクと身体が痙攣した。
あまりの気持ちよさに頭が真っ白になる。
思わず出た涙はジルの唇が吸い取った。
ぼんやりしている目でジルを見ていると白い何かをつけた指を舐めている。
あれはなんだろう……と指の動きを追ってみると俺の下腹部から掬っているようだ。
ん?
んん!?
まさか、それは!?

「ジル、何舐めてんだ!」

今まさに舐め取ろうとしていた指を掴んだ。
その反動でとろりと白い粘液がジルの指から俺の腹に落下した。
それは俺の……。

「うわっ!何考えてんだ!」

信じらんねぇ!
まずいものをよく口に入れられるな。
あ、まさか精気が欲しいのか?
でも昨日結構吸血したし。
もしかして今ので俺に精気を出したから足りなくなったとか?
ぐるぐる考えてたらまた掬って舐めようとしたので阻止する。

「ジル、止めろって。精気足りないのか?」

ジルはうんともすんとも言わずジッと指に付いている俺のアレを見ている。
何かとても舐めたそうな感じだな。
と言う事は精気が足りないのか?
しょ、しょうがない。

「なぁ、精気が足りないなら血を飲むか?昨日吸血されたからそんなにはあげられないけど それよりはマシだろ?」

血を飲むか?と言った瞬間、ジルがパッとこっちを向いた。
うぉ……反応いいな。
しかし俺に顔を近づけながら指を口に含んでしまった。
あ、バカ!

「ジル!血をやるって言ってんのにまずいもの口に入れる事ないだろ!?」
「まずい?」
「そうだよ!そんなの一般常識だろ?」
「酔わせる」
「え?」
「どのようなものと比べてもお前の血、体液に敵う事はない。 いや比べようがない」
「――っ!?」
「ひと口含むだけでこの俺を酔わせる」

ジルの予想だにしなかった言葉を聞いて衝撃を受けた俺は見事に固まった。
えっと、つまり?
体液ってアレも含めてんだよな?
視線が自然に下半身にいく。

「あ」

そこで気が付いた。
まだジルと繋がっていた事に。
俺の中から出ていってない。

「ジル、もう抜けよ」
「……」
「約束だろ」
「……」
「ジル!」
「……」

こ、こいつ!
ジルがその気なら俺から抜いてやる。
身体を上にずらして……ってなんでジルもくっついてくるんだよ!

「ジルは動くな!」
「なぜ離れる」
「抜くためだよ!」
「俺から離れるな」
「だから……っ!!」

もーーっやだ!この魔族!!

「一回したら終わりって約束しただろっ!約束っ!!」
「違えてはいない」
「じゃあ、なんで今の状態なんだよ」
「いるだけだ」
「え?」
「このまま、ずっと」

………おい。
ずっと、っていつまでいる気だ!
ダメだ!ダメっ!!
早く俺の中から出て行け!
退去命令だ!
俺が頑なに拒否するとジルは額を合わせ、ジッと覗きこんできた。
至近距離にある綺麗な深紅の瞳に目を奪われる。
ふいにジルの顔が俺の視界からいなくなり耳に唇が押し当てられた感触がした。
低い美声が鼓膜を揺らす。

「聖司」
「……ひぁっ」

わざとか!?
わざとだろ!?
確信犯だろ!?
このヤロー!!
ベッドの上でジルに押さえ付けられながらバタバタと抵抗していたら 精気を大量にもらったからなのかだんだん抗えない眠気に襲われてしまった。
身体がどんどん休眠モードに移行していく。
あぁ、レヴァになる練習をしなきゃいけないのに……。
練習をしなきゃ……。
ジルのキスを受けながら睡魔に負けて完全に瞼が閉じてしまった。




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