27




「セイジ!起きろよ!」
「んーーー?」
「二次試験の時間になっちゃうぞ!」

二次試験……?
……はっ!!
ぼんやりとした頭が覚醒して瞼を上げるとグレンが梯子を上っていて目が合った。

「おはよう、グレン」
「おはよう。ほら、急げよ」
「うん」

思ったよりも時間がなく、朝食はグレンが食堂から持ってきてくれたパンを食べ、顔を洗う。
集合場所の寄宿舎前に行くとだいたい50人程の受検者達がいた。
間に合った事にホッと息を吐いていると試験官の一人が説明をし始める。
二次試験は試験官達が決めた者達、だいたい3〜5人程度の受験者を一組として闘技場で魔物と戦わせ、合否を決めるという事だ。
誰と一緒になるのかと名前を呼ばれるのを待っていると偶然にもグレンとアレクと俺の組み合わせになった。
やったー、ラッキー!!

「グレン!同じ組だな!」
「ああ、がんばろうぜ!」

気合いを入れていると、朝、起きた時にはすでに部屋にいなかったアレクが手を振りながらこっちにやって来たので俺も振り返した。

「セイジ、俺達同じ組だったな。よろしく」
「うん、よろしく。アレク」

よし、やる気が出て来た!
合格して、何としてでもジルに会うぞ!
受験者全員の組み合わせが終わると次に闘技場へと移動した。
闘技場は寄宿舎から遠ざかり、裏手の坂を下り森に入る。
しばらく歩いて行くと開けた場所に行き着いた。
そこに大きな円形の闘技場が存在した。
外観は飾り気が全くなかった。
入り口は鉄製の大きな扉が一つあるだけだ。
なんだか外部から来る者を拒むような雰囲気を感じる。
まるで要塞みたいだな。
中に入ると広いホールがあり、そこに試験官全員が先に待機していて受験者達を待ち構えている。
俺達が集まり、試験官の一人が前に出て開始の宣言をする。
第二次試験が始まった。







全部で15組に分かれ、俺達の順番は3番目だという事を知って緊張が高まった。
自分の順番が来るまでは闘技場内にいれば自由だそうだ。
控えの場所で作戦を練る組みやそれぞれ好き勝手に行動している組みもある。
俺達は前者だ。
といっても実際どんな魔物と戦うのかは事前に知らされていない。
話しによるとその時でランダムらしい。
取り合えず、俺達は自分がどんな攻撃スタイルなのかを言っていく。
まず、グレンの武器は長剣で魔術はそこそこ。
アレクの武器はタガーで素早さに関しては自信あり。

「セイジは?」

グレンに聞かれて少し考える。

「えっと、ちょっとだけ魔術?攻撃とか剣術は始めたばかり……」
「なんで疑問形なんだよ。でもアブイブを倒す程なんだから期待しているからな!」

え、あまり、その期待しないでほしいんだけどさ。
まだ修業中の身なので……。
俺の肩にアレクの腕がのっかる。

「何気に俺達の組みバランスが取れているよな」

アレクの言葉にグレンが頷く。

「ああ、そうですね」

ん?と思って俺はグレンの顔を見る。
それに気付いたグレンが何だ?と聞いて来た。

「いや、なんでアレクに敬語?」
「え?…へ?…あ?敬語?」

何だか焦っているグレンに質問返しされてしまった。
するとグレンの頭をバシンっとアレクが笑いながら叩いた。

「おいおい、俺がそんなに年上に見えるのかよ。ひでぇなぁ」
「アレクって何歳なの?」
「俺?いくつに見える?」

俺とグレンは同じ年くらいなんだよな。
アレクもそうだと思ってたんだけど、そうじゃないのかな。

「んー、19歳とか?」
「おいおい、それは若く言い過ぎだろ」
「そうなの?じゃあ、21とか?」
「……」
「まさか25?」
「……なあ、セイジっていくつなんだ?」

今度はアレクに質問返しされてしまった。

「俺は17だけど」
「「17!?」」

グレンとアレクの声が重なる。
そんなに驚く事なのか?
キョトンっとしているとアレクに頭をよしよしと撫でられた。

「セイジって意外と子供だったんだな。まさか17とは」
「子供って……ちょっと頭撫でるなよ!で、アレクは何歳なんだよ。グレンも!」

少し怒りながら聞くとやっと答えてくれた。
アレクは98歳でグレンは57歳……。
そうか、そうだよな。
ここは魔界なんだから外見と実年齢を人間と同じように考えてはダメだった。
そういえばジルだって300越えてたよな。

「なぁ、グレンとアレクから見て17の俺って子供なのか?」

躊躇いもなく二人は頷いた。

「何歳くらいから大人って言える歳になるんだ?」
「うーん、そう言われるとな。俺は大人だぞ。グレンはまだ子供じゃないか?」
「俺は大人ですよ!あ、大人だよ」

また敬語が出てしまったグレンがアレクの顔を見てすぐ言い直した。
別にアレクが大人なら敬語を使ってもいいんじゃないかと思うんだけどな。
それだったら俺も敬語を使わないとだめじゃん。
こっちの歳って難しいな。
見た目じゃ大人か子供か判断がつかないよ。
うーんと唸っていたら試験官が俺達に声を掛けて来た。

「次の組みの試験が終了次第、お前たちの番だ。準備をしておけ。武器など新たに欲しい者は あそこから自由に持っていって良い」

いよいよだ。
やばい、緊張してきた。
そういえば結局、俺はセイジ・キルセスのままだな。
本人はどうしたんだろう?
名前があったって事は本人がいるはずなんだけど。
でも、後にはひけない。
ジルに会えるまでキルセスさんの名前を借りますごめんなさいと心の中で謝っておいた。




main next