11 すぐに血がじわっと口の中に広がる。 ん、エドの血もうまい。 でも一番はジルだけどな! ごきゅごきゅと音を立てて飲んでいく。 精気がどんどん身体の中に入って来るのが分かる。 エドは上位のレヴァだし……もう少し飲んでも問題ないよな。 ダメなら何か言って来るだろうと思って遠慮なく飲み続ける。 「ぷはっ」 ひとしきり飲んで口を離した。 結構飲んじゃったけど……大丈夫だよな? チラッと様子を見ようとしたらエドが俺の肩に額を乗せて来た。 えっ? 「エ、エド?大丈夫か?」 心配になって声を掛けると……ダメだ、と返事が返って来る。 ええっ!? 「ご、ごめん!俺、飲み過ぎた!?」 「はぁ〜、そうか。……なるほど。これはなぁー……」 「エド?」 「これほどまでとは……。そりゃアイツも落ちるわな」 「エド?」 エドに何度呼び掛けてもずっとぶつぶつ呟き続けている。 困った俺はニケルとユーディに視線を移す。 「マスター?」 「ちょっと、マスター!どうしたのさ!」 「エド、大丈夫?」 今度はそれぞれが呼び掛ける。 すると。 「うるせぇな。もう少し余韻に浸らせろ」 余韻ってなんだ? 俺はエドの腕をぽんぽんと軽く叩いた。 「エド。俺、飲み過ぎた?」 「やべぇ……起った」 「立った?何が?」 「ナニだ」 「なに?……ハッ!!」 言葉の意味が分かって急いで身を引きエドから離れる。 案外あっさり逃げられて安全圏なニケルの傍に駆け寄った。 そこからエドを窺うとソファーに座ったまま脚に肘を付き、顎に手を当てている。 そしてなにやら考え込んでいるみたいだ。 やはり様子がおかしいエドに俺とユーディとニケルは顔を見合わせた。 しばらくしてチラリとエドが俺を見る。 「お前の事だから自覚してないと思うが」 「自覚?」 「見境なく吸血するんじゃねぇぞ」 「いや、そんな事しないけど……。でも何で?」 「とんでもなくお前がテクニシャンだからだ」 「はぁ!?」 テ、テクニシャン!? 驚く俺にエドは吸血がもたらす影響の事を説明してくれた。 「お前さ、レヴァの事についてもう少し知っとけよ。 吸血行為はただ単に精気を取るだけじゃねぇからな。 相手を魅了させたり服従させたりする目的もあるんだぞ。 それによって吸い方も変えていくんだ」 「す、吸い方?同じじゃないの?」 エドはきっぱりと違う!と否定する。 「お前は無自覚に相手を落とす吸い方をしてんだよ」 はぁ!? 「お、俺っ、吸血の仕方がいまいちよく分らなくていつも必死に吸っているだけなんだけど!」 「だから無自覚って言ってんだろうが。 しかもテクが半端ねぇし。お前に吸血されたらその辺のやつなんか簡単に理性を失うだろうな」 「何言ってんだよ!そんな訳……」 「あのジハイルが落ちたくらいだぜ。相当なもんだ」 「普通の吸い方ってどうすればいいの!?」 必死に聞く俺にエドはそのままでいいんじゃね?と言って立ち上がった。 そして部屋を出て行こうとする。 「ちょっと、どこに行くんだよ!そのままじゃ困るってぇ!」 「俺は用事があるって言ってんだろ。吸う相手を選べば問題ねぇよ。 マディリアリッタでも目指せ」 マディリアリッタって何? エドは手を振ってまた明日この時間にな〜と部屋を出て行ってしまった。 たたずむ俺にユーディが後ろから飛びついて来る。 「聖く〜ん!」 「うおっ!」 「吸血してよ!ボクにもして〜!」 腰に抱きついているユーディを引き剥がしながら断った。 ぷぅっと頬を膨らませて上目遣いで睨んで来る。 「マスターばっかりずるい!」 「知るか!離れろって!」 ぎゃあぎゃあ騒いでいるとニケルがユーディを離してくれた。 「ユーディ。止めなさい」 「ニケルだって聖くんに吸血してもらいたいでしょ?」 「聖司様がしたくないと言っているのですよ」 そうですよね?とニケルにほほ笑まれる。 自然にニケルの細い首に目がいき、そういえば女の人から吸った事ないな……だなんて 思ってたらユーディが俺に向かって聖くんのバカー!!と叫んだ。 「もぉー!ボクはダメでニケルはいいの!?」 「え?」 「ボクのどこがダメなの!?聖くんを気持ちよくさせる自信はあるのにぃ〜!」 バッ、バカか!! ギラギラとした目をして今にも俺に飛びかからんとしているユーディに危険を感じ、 慌ててポケットから小瓶を取り出して隣の転移鏡のある部屋に駆け込む。 そして血を鏡にかけて飛び込みエドの屋敷から急いで退散した。 main next |