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薄暗い地下水路から一転、豪華な内飾がされている明るい部屋にいた。
ヴィーナもニケルもキオも辺りを窺っている。

「ジルここどこ?」
「……」

シカトかよっ。
しかし隣に通じている部屋が騒がしくなったと思ったら勢いよくドアが開かれた。
先頭に出て来た人物に真っ先に反応したのはニケルだった。

「マスター!」
「ニケル!」

ニケルは嬉しそうにエドの傍に寄った。
エドの後からはユーディとウェルナンも出て来た。
エドはホッとした表情で自分の足元に跪いたニケルを立たせて状態を聞いている。
良かったーみんな無事だったんだな!
ん?
いやいや、もう一人いたよ。
俺ととんでもなく相性の悪い相手が。

「あ…」

いた。
一番最後にドアから出て来た人物、レイグが凍えるほどの視線を俺に向けている。
うううっ。
原因は分かってんだ。

「ジル、もう大丈夫だから離してくれないかな」

さっきから俺を抱いて離さないジルに訴えてみる。
一応足は地に付いているのでお姫様抱っこではないだけマシだが。
ジルから離れようと俺は努力した。
腕を突っぱねてみたりジルの手を解こうとしたり。
だが拘束は強まるばかりでそれに比例するようにレイグの恐ろしい視線がビシバシ強くなって 俺は再び命の危機にさらされている。
もしかしてジルから離れた途端に殺られるかも…。
そう考えたらジルの傍から離れられなくなってしまった。
抵抗がなくなった俺を見ようとしたのかジルが拘束していた手を緩めた。
俺は咄嗟にレイグの恐怖からジルの腰にしがみ付いた。
誤解されないように言っておくがしがみ付いたのであって抱きついたのではない。
ジルが俺をジッと見つめてくる。
な、何だよっ…こっちは絶賛命の危機なんだって。

「んをっ!?」

空間がいきなりぶれたかと思ったらいつの間にかさっきとは別の部屋にいた。
薄暗くてはっきりと見えないがベットが見えるので寝室だろうと思われる。
いきなりほいほい空間移動するのは止めて欲しいんだけどさ。

「おおっ!?」

ドサリと俺はベットに倒された。

「ジル?…んっ!」

ジルが俺の上に覆い被さると唇が合わさり舌が侵入してきた。
がっちりホールドされた上、所詮俺は素人なので好き放題にされるがまま翻弄されて 力が抜けて行く。

「…はっんぅ…ん」

ぺちゃりとかくちゅりとか如何わしい音が聞こえてきて耐えられなくなった頃、ようやく ジルの顔が離れた。
俺は口元を拭って息を切らしながら猛抗議だ。

「ぜぇー、ぜぇー、い、いきなり何すんだっ!」
「お前が」
「え?」
「求めただろう」
「へ!?」

誰か俺に説明をして下さい。
い、意味が分からん!
俺は本能で危険を察知して首を左右に振るしかない。
この後に起こるであろう事を予想しながら。








「…あ!いやだぁっ」

大きく開かされた足の間にジルの顔が埋まっている。
今にも爆発しそうな息子を促すようにすっぽりと咥えている形の良い赤い唇が卑猥に動く。

「ふっ、あ…あぁっ!」

必死に耐えているが陥落するのに時間はそうかからなかった。
ゴクリとジルが嚥下して顔を上げた。

「の、飲んだ…?」

そりゃ精気があるだろうが何もそれを飲む事はないだろう。
若干、放心状態になっている俺の両足を掴み上へ持ち上げた。
うおっ!?
当然俺の尻が上に向きジルの眼下にさらされる。

「やっ!離せっバカ!!」

何もかも丸見えである。
わーわー喚く俺の口にいきなり指を突っ込んできた。

「うぐっ」
「舐めろ」

うぐぐぐ!
ふざけんな、噛んでやる!と思ったのが分かっていたのかジルは冷酷な笑みを浮かべた。
それですら恐怖で身体が竦むのに死刑宣告をされる。

「そのまま突っ込んでもいいんだぞ」

思わず想像の中の痛さに震えた。
逃げられないのなら最小限の痛みにするしかない。
腹をくくりぎこちない舌の動きでジルの指を舐めた。
俺の唾液に濡れたその指は尻の間のアソコにツプリと入れられて広げるように動いている。
しばらくして数本の指が入るようになった頃、ジルのモノがズズっと侵入してきて息を詰めた。

「んんっ、痛っ」

みちみちと押し広げられる苦しさと痛さに涙が自然と浮かんでくる。
くっそー何でこいつのはこんなにでかいんだ! 

「ああっ、あ、やあぁぁっ」

ひっ、ひっと息を吐きながら痛さをどうにか誤魔化そうとするがあまり意味がなかった。
ジルの手に俺の弱い脇腹を撫でられてビクンっと身体が跳ねた。
その瞬間グンッと大きく突き挿れられる。

「―――――っ!!」

身体が反り返ってベットに沈む。
涙で霞んでいる視界にジルの手が近付いてきて俺の頬を撫でた。
その手がとても優しく感じられて思わず自分の手を重ねた。
ジルは俺の指を絡めてギュッと握りシーツの上に縫いとめる。
そして腰を動かし始め俺の中を貫く。
だんだんと激しくなって苦しさと痛さがジルの熱に解けていきビリビリと痺れる電流が体中を 駆け巡る。

「ひぁっあぁっ!…はぁああ、…んあっん」

どうしたらいいか分からなくなって俺はジルに助けを求めた。

「ジ、ジル…はぁっ」

ジルは俺の脚を腰に絡ませると何度も強く打ちつけて来た。

「ああああっ、いく、やあっ!…いく!」

ジルが覆いかぶさってきて俺の首筋を舐める。
朦朧とする頭がその意味を理解する前に歯が突き刺さった。
その途端、狂う程の快感が身体の隅々まで爆発したみたいに連鎖してはじけ飛んで行く 勢いに俺の身体が対応しきれずそのまま気を失ってしまった。









「…ん」

妙に軽い身体を目を擦りながら起こしてグッと手を上げて伸びをする。
そしてまだ覚醒しきれていない頭で周りを見る。
外から日差しが入ってきているみたいだが分厚いカーテンがそれを遮って部屋の中は薄暗い。
とても触り心地いいシーツをめくると俺は全裸だった。
それを見た瞬間、あの出来事を思い出しグワッと言い表せない感情がこみあげてきて ふかふかの枕に声にならない悲鳴を上げ頭を打ち付けた。
…結構、血を吸われた気がするぞ。
まさか地下水路で後でたくさんやるって言った通りに実行したのか、ヤツは。
だが普通に動けるのはそれと同等のジルの精気が俺の中に入って来たからだ。

「う」

身体を動かしたせいか足の間に何かがトロリと伝う。
まさか…。

「あいつぅ〜!!」

着るものも何もなかったので俺はシーツを身体にグルグル巻いてジルを今度こそ殴るべく その姿を探しにドアを怒りのままに勢いよくバンっと開けた。

「おはようございます」

開けた先にいたのはダークスーツに身を纏っている初老の紳士的な人だった。

「お、お…はようございます?」

思い掛けない事態にぽかんと挨拶を返した俺にその人はニコリとダンディな笑みを浮かべた。
俺も思わず反射的にニヘッと笑い返す。

「着替えをご用意しますのでお待ちください」
「は、はい。あ、えーと」
「何でしょうか」
「……風呂入ってきてもいいですか?」
「許可など必要ないのですよ、奥様。では失礼します」

目の前のドアがパタンと静かに閉まった。
…奥様?
というかさっきの紳士は誰なんだろうか。




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