むむむむ。
身体がダルイ。
ついでにケツと腰も痛い。
何でだ…?
覚醒していない頭で考えながら身体を動かそうとしたが腰に痛みが走って思わず呻いた。
重い瞼を開けて見れば薄暗い部屋の中のベットにいる事が分かった。

「何で俺、裸…」

―――――――――っ!!!!??
お、思い出した。
俺はシーツをギュウッと握りしめる。

「あの野郎っ!!」

よくもあんな事っ!
自分の身に起きた事を思い出して恥ずかしさと怒りが渦を巻いて身体がプルプル震える。
手を伸ばしベットサイドのランプを付けて部屋の中を見るとどうやら俺一人の様だ。
チッ。
ここにジルがいたら即刻、殴り倒したのに。
まあいい、今から探し出して殴りに行ってやる。
気合いの入っている俺はベットから這いずり下りた。
しかし、腰に力が入らずそのままベショッと落下した。

「いっ…てぇー!」

何とか腕で支えつつ身を起こそうとしたとき尻の間から何かトロッと零れ落ちる。
え?何だ?
指で拭ってみると白い粘液が。
まさか、これは…。

「コロス!」

はい、決定。
信じらんねぇー!
俺の中にっ!
怒りながら間抜けな格好だが四つん這いで寝室に付いているバスルームに向かう。
歩いたらすぐの距離をジリジリとケツと腰の痛みに耐えながらゆっくり進んでいるといきなり 身体が宙に浮いた。

「うっ、わー!!」

急な出来事に驚いて叫んだ。
俺は突然転移して現れたジルに横抱きにされていた。
そしてバスルームに運ばれる。
誰かこいつにドアの役目を教えろ。
探す手間が省けたと殴ろうとしたらバスルームの中に放られシャワーをかけられる。

「冷てー!」

まだ湯に切り替わっていない水が俺を濡らす。
黒を基調とした格好のジルも構わないのか濡れている。
俺はジルを睨みつけて殴りかかろうと拳を振りかざしたがその腕を掴まれて引っ張られた。
そのままジルとぶつかって密着してしまい離れようとしたら腰に手が回り動けなくなった。

「テメー!一発殴らせろっ!」
「口が悪いな」
「うるせー!よくもあんな事しやがってー!お、俺の…っ!」
「言ってみろ」
「お、俺の中に入れてっだ、出しただろ!」

はっきり言うのが恥ずかしくなって俯きながら抗議した。

「何を」

何をだと!?
コイツーーー!!

「お前の…っ」

俯いていた顔を上げ視線を合わせてみればジルが悪魔バージョンの笑みをしている。
コ、コイツわざと聞いてる!
グワーッと怒りが上昇して全身に力を入れ暴れようとしたら尻の間に異物感が。
ジルの指がアソコに入っていた。

「これの事か」

指がグリッと回転してジルが出したモノを掻き出した。

「ひっ…あ」

思わず敏感になっている内壁を擦られ声が漏れてしまった。

「バカ野郎!指…うっん、んっ!」

好き勝手に動く指はいつの間にか増やされて奥まで入っていく。
俺の弱点スイッチがある場所を押されてバスルームに俺の声が大きく響いた。

「やっあ!そこ…いやだ…っ」

すでに湯に切り替わっているシャワーを浴びながら抵抗する。
しかし意思に反して俺のモノはジルの服の間で起ち上がっていた。
何度も弱点スイッチを攻められて身体が跳ね上がる。
その度にジルに自分のモノを擦りつける形になっている事に余裕のない俺は気付かなかった。
シャワーの降る中でジルの漆黒の髪が艶めかしく濡れ深紅の瞳が俺の痴態を見ている。

「み…るなぁ」

俺はジルの顔に手を伸ばしたが辿り着く前に俺の中で動いている指が深く突いてまた身体が跳ねた。

「ひああぁっ!!」

それにより一層ジルに擦りつけてしまいその刺激で達した。
ぐったりと力が入らない身体はジルに寄りかかるようにもたれる。
もう悪態を吐く気力さえもない。
そのまま好き勝手に身体を洗われてまた抱き上げらてベットまで運ばれた。
まさか変なことされるんじゃないかと身体を固くしているとジルは俺を抱き枕にして横になる。
これはお休みモードか。
俺もジルも全裸ってどういう事だ。
暴れたところでこの拘束から逃れられない事を学んだ俺は睡魔に身を任せる事にした。
くそっ、殴るのは明日にしよう。
今は我慢だ、我慢。



ふとトロトロと眠りに落ちる目で窓を見れば青白い月が出ている。

“月の出る夜、呼ぶがよい”

そうだ、名前を呼ばなくちゃ。
名前を…。

「エレ…」
「何じゃ」
「―――!!!?」

一気に目が覚め起き上がると真っ暗な空間にいた。
ここってあの時と同じ…。
キョロキョロと見渡すとすぐ横に真っ暗な空間に浮かび上がっているエレがいた。

「うおわっ!」
「また会ったのう。ふむ、裸とは大胆な」
「わーーーー!!」

全裸だった俺は丸くなって自分の身体を隠した。
変態じゃねえか!
顔を赤くしているとエレの笑い声か聞こえる。

「ほほほほ、可愛らしいものよ」

何がっ!?ナニが!?
聞けない俺は小学生くらいの女の子に見られたショックに打ちひしがれる。

「趣味なら致し方がないが」
「違うっ」
「ふむ」

エレの黒衣と髪が揺れ手を俺の方へゆっくり振ると満足そうに頷いた。

「なかなか似合っておるぞ」
「う、お、おぉっ!?」

いつの間にか服を着ている。
すっげー!
…しかし。

「何かピラピラしすぎじゃない?」
「そうかの」

どこかのお坊ちゃんが着るようなレースのついた白いシャツに黒いズボンだった。
まあ、裸よりはいいけど。
とりあえずエレに礼を言った。
首元にある赤いリボンを引っ張る。

「夢の中って何でもありだな」
「ここは夢ではないぞ」
「え?」
「ここは月影」
「月影…?」

あれ?
聞き間違いじゃないよな?
今、さらりと重要な事言われたよな。

「えっと、エレさん。つかぬ事聞きますが門ってあったりします?」
「あるぞ」
「あるの!?」

驚いて口も開きっぱなしになるもんだ。
そんな俺を見て笑っていたエレだが急に顔を顰めあらぬ方向を見る。

「どうした?」
「まったく、さっきから煩い…。よほど好かれておるな」
「え?」

意味が分からず困惑していると後ろから何かに抱きしめられる。
何だ!?と慌てて見てみれば。

「ジル!?」
「何だ、その趣味の悪い服は」
「む。レヴァの子よ妾にケチを付けるのか」

俺の驚きを余所にいきなり現れたジルとエレの間に険悪な雰囲気が。
あわわわとこの状況をなんとかしようと考える。

「ジ、ジルなぜここに?」
「なぜ、だと?」

ーヒッ!
鋭い眼光が見下ろしてくる。
もしかしなくても怒っていますよね。

「ほほほ、心の狭い男じゃ。聖司が怯えておるぞ」

おおおぉ、何て命知らずな子なんだ。
このままだと俺もエレも殺されそうだ。
話題を変えろ俺!
がんばれ俺!

「そうだジル、ここ月影だって。門もあるって。向こうへ帰れるよ!」

ジルに良かったな!と笑う。
笑う俺にジルは目を細める。
そう言えばジルに笑ったのって初めてじゃないか?
ジルの手が優しく俺の頬に添えられる。
どことなく柔らかい視線が向けられしばし見つめ合ってしまった。
後ろからエレの呆れた声がする。

「妾の存在を忘れないでほしいのだが」

うわっと急いでジルから離れる。
しかし腰を引き寄せられて引き戻された。
ジタバタと暴れるが離れられず。
溜息を吐き諦めジルにくっ付いたままエレにお願いをする。

「願い事一つ叶えてくれるって言ったよね。ジル達を向こうへ帰してあげて欲しいんだ」
「聖司の願いはすでに叶えてあるぞ」
「え?」
「妾の名を聞いたではないか」

………。
まさか!
いや、うん、確かに聞いたけど。
しまったー!
それが願い事に数えられているなんて。

「聖司は妾の真名を知っておる。願い事ではなくともそのくらいはしてやるぞ」
「え!ホント!?」
「うむ」
「ありがとう、エレ!…ところで真名って?」
「妾は聖司に真名の一部を教えた。それはとても意味の深い事なのじゃ。そのエレという中に 真名が含まれておる。真名を知る事は呪縛出来る事、つまり従え操れる。だから多少のお願いは 聞いてやれるのじゃ」

なんだかよく分からないが取りあえず向こうへ帰れるって事は確かなようだ。
良かったなと再びジルに笑いかけて止まった。
ハッ、そう言えば俺とんでもない事された後だった。
そうだよ、コイツを殴るんだった!
ぎゅっと拳に力を入れる。

「準備が出来しだい月の下で妾の名を呼ぶがよい」

しかしジルを殴る前にエレに戻され気付くとジルに抱きかかえられてベットに寝ていた。
お互い全裸ではなく俺はエレから貰った服を着て。
とにかくこれでジル達は向こうへ帰り俺は自由の身になるわけだ。
ジルが俺の上に乗り上げてくる。
だから今は我慢してやる。

「んっ、ふぅ」

ジルのキスだって。

「んぅっ…」

ジルのキスだって我慢してやるんだー!




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