俺の呼びかけによりみんなが屋敷の外に集まった。
虫の音が響き花が風に揺れ夜空には青白く輝く月がある。

「本当に月の影を見つけたのか?」

エドが半信半疑で聞いてくる。
俺は頷く。

「さっきエレに会って帰してくれるって言ったよ」
「夢じゃなかったんだな」
「そうだったみたい」
「聖ちゃん、疲れているみたいだけど大丈夫?」

先程、月の影の捜索から帰って来たヴィーナが俺の顔を覗きこむ。
ハハハと曖昧に笑って大丈夫と頷いた。
あの後キスで終わるかと思っていたらその先も進む気配がしたというより服を脱がされ始め確実に そうなると確信して何とかその場を奇跡的に逃げ出したのだった。
まあ、どんな手を使ったのかは言いたくねえけど。
さてと全員いる事を確認した。
まあ、何だかんだで命の危機もあったけど二度と会えないメンバーにちょっと別れも惜しい気がする。
でもこれでようやく俺の平和な日々が戻ってくるわけだ。
よしっと月を見上げてエレを呼んだ。

「エレ!準備が出来たぞ」
「うむ」

目の前に月の光を纏いながらパッとエレが姿を現す。
初めて見るエレの姿に他のメンバーの驚きは様々だ。

「ほー、確かにかわいい女の子だなー。なあセイジ?」

ニヤリとしたエドが俺を横目で見る。
うるさいよ。

「ちょっとー、ボクの方がかわいいよね?聖くん」

俺に聞くなユーディ。

「エレってここにも来れるんだね」
「あの空間は月影、妾そのもの。妾なくして存在はせぬ。故に長くはここに居られぬがな」
「そうなんだ。じゃあ、皆でそこに行けばよかったのかな」
「それは無理じゃ」
「どうして?」
「あそこは精神のみしか行き来が出来ぬ」

と言う事は肉体は…。

「戻れたとしても肉体はこっちの世界に置いていく事になるであろう」
「あはは…やっぱり」

肉体なかったら意味ないもんな。
あっちにいる敵と戦えないし。
置いて帰ってもこっちも困るし。
見つかったら事件騒ぎになっちゃうよ。

「今話してたのってセイジが夢だと思っていた所か?」

エドが聞いてきたので頷いた。

「俺もそこに行けるのか?」

しかしその質問はエレに否定された。

「それは出来ぬ。月影は妾の許しなくして触れることも入る事も不可能じゃ。 本来なら他者の干渉などあり得ないのだが」

エレは俺の横にいるジルを不快そうに見る。

「相当なレヴァの力を秘めておるのう。まったく厄介な事じゃ」

あー、まさか俺とあんな事した後だったから力は結構回復してたはずだよな。
何だかんだで俺も体調良いし…って何考えてんだ俺!
フルフルと頭を振る。

「何だよ、ジハイルはその女の子と接触してたのか?」

エドの問いかけにもちろんジルが答えるはずもなく代わりに俺が肯定した。

「そこのレヴァの子よ」
「ん?俺か?」

エレはジルと同じように不快そうにエドを見た。

「妾は女の子ではない。大人の女性であるぞ。お前たちよりも遥かに年上なのじゃ」
「これは失礼をした。無礼を許して頂けますか?麗しき方」

エドは片膝をつき詫びる。
キャラがいつもと違うぞエド。
エレは分かれば良いと頷いた。
ウェルナンがエレに歩み寄る。

「少し伺ってもよろしいでしょうか」
「何じゃ」
「貴女はレヴァの始祖の七つの影の一人なのでしょうか」
「いかにも妾はレヴァの五の影じゃ」
「貴女が私たちを人間界へ連れて来たのですか?」
「妾はそのような事はせぬ」
「では誰が」
「やるとしたら三の影あたりじゃな。あやつは気まぐれで時々門を開くからの」

なんて迷惑なヤツだな。
ウェルナンは興味深そうに目を輝かせる。

「貴女方の役割は別の世界を結ぶ門の管理者という事ですね」
「ふむ。少々しゃべり過ぎたのう。準備はすんでおるのだろ?始めるぞ」

パンッと手を合わしたエレは詠唱を始めた。
しだいにパリパリと黒い光が現れ細長くいびつに上に伸びていきやがてそれは大きく左右にも 伸びていき幾重にも光が重なりあう。
そして黒い光の門が出現した。
青白い光が中心から現れ縦に伸びていき門が大きな音と共に開いていく。
これでみんなとお別れだなーと思っていると身体が門の方へ引っ張られた。
あれ?
いや、これは吸い込まれていってるんだ。
ものすごい勢いで吸い込む門に抗う事も出来ず俺は慌てた。
このままでは俺まで向こうの世界に行ってしまうじゃないか!

「エレ!俺はいいからっ。俺はー」

草を掴んで抵抗するがズボッと根っこが抜けた。
ノォォォー!!
叫びも空しくみんなと共に門の中へと吸い込まれていったのであった。

マジでかーーー!!!?




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