部屋には俺とジルと…レイグ。
どうしろというんだ、この状況。
ヴィーナぁ助けてくれ〜。
あれ、そう言えば今日姿見てないな。

「なあ、ヴィーナは?」

……。
シーン。
ぬをををっ!
こんな時どうしたらいいんだよー!
そんな高度なスキル俺は持ってないっつーの。
しかもいつまで俺はこの格好でいなきゃいけないんだ。
ほら見てみろ、涙目になってきたじゃん。

「ジル、いい加減に離せよ!…うわっ」

急に手を放されたもんだからそのままソファーに落下した。
ゲホゲホとむせていると押し倒された。
近くにジルの顔がある。
ジルの黒髪から覗く深紅の瞳にゾクリと身体が震える。

「な、何…」

無言のままジルは俺の首元へ顔を埋め首筋を舐めた。
まさか食事?
おいおい、さっきまでさんざん精気吸ってたんじゃなかったのか。

「ちょっと」

―待って。
言い終わらないうちに噛み付きやがった。
体中を駆け巡る熱いモノを目を瞑って耐えているとしばらくして首から口が離れる。
ホッと息を吐いて目を開けるといつもと何か違う視線が俺を捕えていた。
身体がゾクリと熱く震えるような。

「レイグ」
「しかし、マスター」
「……」
「…っ。失礼します」

ジルに名前を呼ばれたレイグが納得がいかないのか渋々退出していった。
ソファーに押し倒されている俺には背もたれが邪魔してレイグの表情は見る事が出来なかったけど。
あれ?
気づいたら二人っきりじゃん?
うーわー!
俺が一人アワアワしているとジルの美麗な顔が近づいてくる。
思わず手でジルの口を覆って押し返した。

「精気は吸い終わったんだろ。どいてくれよ」

身を捩りながら何とかジルの下から這い出ようとするが口を覆っている俺の手を掴んで外させた。
ジルは無表情のままだが何故だか不快そうだな顔をする。
掴まれた俺の手をジルの口元に引き寄せられる。
そしてジルはそのまま深紅の瞳で俺を捕えたままゆっくりと指を銜えた。
俺は視線を逸らすことが出来ずジルの支配下に置かれたように動くことができなかった。
指がジルの唇と舌で音を立てながら吸われる。
ほらまた身体がゾクリと震える。
とにかくこいつは一体何がしたいのか。
指から精気なんて出ないだろう事は分かるぞ。
それなのに何でこんな事…。

「ハッ!まっ、まさか!!お前俺を食う気か!?」

もうチマチマ血なんて吸ってられねえ、一気に食っちまえば楽だぜ!とかいう状況になっちゃった んじゃないの!?コレ!
ジルは無表情だと思われる顔から指を銜えながらあの悪魔の笑みを浮かべた。
ぎゃあーーーーーーーーー!!
あの奇跡的に使えた力は自由に使える事が出来ないので絶体絶命であります。
使えたとしてもこいつには勝てないので絶望的であります。
思わず俺は叫んだ。

「ヴィーナぁーーーー!」

助けてくれぇ〜!!
何回か叫んだ後俺は自分の上にいるジルがとても危険な雰囲気を出している事に気付いた。

「何故その名を呼ぶ」
「…ふえっ?」

機嫌がものすごく悪くなっていらっしゃるのはどうしてでしょうか。
ヴィーナの名前を呼んではいけなかったのか。

何で?
冷汗を多量に掻きつつ威圧感いっぱいの視線から逃げるように目をウロウロさせていると顎を掴まれた。
ジルの美麗な顔が迫ってきて俺の口が塞がれる。
も、もうキスされたぐらいで俺は驚くものか。
いや、キスではないな、食事だ食事。
これ以上ジルを刺激して状況が悪化しないようにヤツの気が済むまで大人しくしていた。
そう、大人しくしているつもりだったのに身体がゾクゾクっと電気が通ったみたいに反応してしまう。
さっきから何なんだよっ、俺の身体。
耐えようとするあまりにそっちにばっかり頭がいっていて無意識に俺がジルの背中に手を回してシャツを 強く掴んでいた事もジルがいつの間にか俺を肌蹴させていた事も分からなかったのである。

「ひあっ!!」

俺がそんな状況に気付いたのはジルに脇腹を撫でられた時だ。
昔からそこの部分は弱くて触れられてしまった俺は声を出してしまった。

「ひっ!ああっ!やっ!」

こ、このぉ〜!!何度も撫でやがってー!
思わずジルの不届き者な手を押さえついでにギッと睨みつける。
ジルは面白そうに、無表情だが、俺に視線を合わせた。
ジルの口が妖しく開いたと思ったら鎖骨を噛まれた。
ひぃっ!!
そこから食べる気なのか!?
恐怖により身体が固まった。
しかし鎖骨から口が離れ、そのまま下に移動しながら胸や腹を強く吸われていく。
吸われるたびにいちいち反応してしまう己の身体が憎い。
そしてある場所を触れられた時叫んでしまった。

「うわぁっ!!どこ触ってんだ!」

ジルは軽く無視して俺のモノを掴みやがった。
ぎゃーーーーーー!!
食うのか?
そこを食うのかっ!?
想像するだけで気絶しそうになる。

「ジ、ジル…」

俺が恐る恐る呼ぶとチラリと深紅の瞳が向けられる。

「もしかして、食べる気じゃないよ…な?」

―ヒィっ!!?
わ、笑ってらっしゃる!!
悪魔の笑みを通り越して魔王の笑みと化している。
ジルはゆっくりと口をあけ俺のモノを咥えた。

「…なななな、なーーーーーー!!!!」

パニックになった俺はそれは激しく暴れたが歴然とした力の差と何より急所に歯を立てられた為、 大人しくならざる得なかった。
恐怖と若干の痛みに涙目になっているとジルの舌が俺のモノに這う。
先端も円を描くように舐められると俺の意思を無視して反応し始める。
このバカ息子!
腰を引いて逃げようとしたが逆に腰を掴まれて引きよせられジルの咥内に包まれた。

「ひっ、あああ!…やぁっ!」

あああああ、ありえねぇ!
何で男に俺のモノが咥えられてるんだ!

「ジルっ!は、離っ!…ヒッ」

ジルは離すどころか俺の弱いところを巧みに舌で刺激しながら何度も吸い上げる。
ヤバいっ。
もう息子は早々に限界であります。

「離せって!…あっ、んぅ。で、出るっ!」

俺は我慢出来ずに腰を振るわせてジルの咥内に解き放った。
ジルがゴクッと嚥下する。
もしかして、もしかすると。

「まさか、飲んだのか…?」
「濃い」
「ぎゃあーーーーーーー!!」

ジルの赤い舌が艶めかしく己の口を舐めた。




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