3 そっと目を開けると…。 夜は明けたらしく部屋の中が薄明るくなっている。 何だ、夢だったのか。 ぼやけている頭でそう思った俺はベットに眠るジルの腕の中にいた。 ―またか! 俺は抱き枕じゃないっつーの! まったく毎回のことながらこいつ裸だしよ。 何でお前のたくましい胸に俺の頬がくっついてんだ。 絡み付く腕をどかそうと身体を動かすがビクともせず。 ジタバタしているとぎゅうっと力強く拘束された。 俺の顔がジルの首元に埋まる。 「静かにしろ」 低くかすれた艶めかしい声が俺の耳元で聞こえた。 静かにしろって何だ。 「離せよ」 「………」 シカトかよ!! 俺の視界にはジルの首が。 くっそー噛みついてやろうか。 それにしてもこいつの血はうまかったなー。 でも人間的に血を吸うってどうよ。 うん、まあ噛み付くだけならいいか。 うししし、と自分の悪戯心に密かに笑いかぷっと噛み付いた。 ピクッとジルが動いた気がするがその後は何も音沙汰なし。 何だつまんねのーと口を外して見上げてみれば―――ヒッ!! 俺は何かとんでもない事を起こしてしまったんで…しょうか? きっと第三者がいればきっと、憐れんだ目でうんと言ったに違いない。 ジルは深紅の瞳をギラギラとさせ俺をまっすぐ見ている。 なんつーの久しぶりに獲物を食らう肉食動物の目っていう感じ。 俺は冷汗をだらだら垂らしながら敵に見つかった草食動物ごとく固まった。 え?もしかしてまた命の危機!? 逃げようにもガッチリ拘束されて不可能だ。 とりあえず謝っとけ! 「ごめんなさい、すみません、調子に乗りました!」 「いいんだな」 え、何が? 俺を殺すこと!? 顔色を悪くした俺はぶんぶんと左右に頭を振る。 いきなりグルンと身体がジルの下の位置になった。 何が起こるか想像もつかな…というより想像もしたくないけど。 覆いかぶさるようにいるジルから逃げようと身体をあっちこっち動かすが無駄に終わる。 「あのですね、つい悪戯心と言いますか、出来心と言いますか」 「うるさい」 早口で言い訳していた俺の口がジルの口で塞がれた。 んぐーっ、舌を入れるなー!! 深い口づけに息も絶え絶えになっている俺の胸辺りをジルの手が這う。 狙いは心臓か!? 喚こうにもジルの口で塞がれているため声が出ず。 ――!? ジルの指が心臓ではなく俺の胸の突起を弄っている。 何でそんなとこ触ってんだ? くちゅっと音を立ててジルの口が離れた。 精気を取られたのか力が入らずぽへーっとしている俺に力強い双眸が向けられフッと満足そうに笑った。 おお、こんな笑い方初めて見たな。 ちょっとドキリとしてしまったよ。 「お、おい!」 ジルの顔が俺の胸元に埋まり突起を舐めやがった。 何をするかっ、この変態危険馬鹿男が! 「そんなとこ舐めたって何も出ねえよ!」 まさかそこからも精気出るとか言わないよな? ……ふんぎゃっ! 吸うなぁーーーー!! 何度も片方は舐められて吸われ、もう片方は指で弄られ、何だか泣きたくなってくる。 「止めろよ、気持ち悪――っあぁ!」 気持ち悪い、そういうはずだったのに変な声が出てしまった。 弄られまくってる突起は紅く色づきぷっくりと立っている。 ぎゃーーーーー!! 恥ずかしくてたまらなくなった俺は急激に顔に血が集まっきた。 きっと真っ赤になっているはずだ。 ジルが突起を軽く噛み、片方の手はきゅうっと摘まんだ。 「ふあっ、あああーっ」 その瞬間、そこから痺れるような感覚が体中に駆け巡って身体がピクンッと跳ねた。 い、一体何が起きたんだ!? 戸惑っていると火照っている顔をジルの手で包まれる。 「出たな」 「…え?」 何が?出た? ………声。 ―――――っ!!!? ジルの言っている意味が分かった俺はさらに顔が赤くなりシーツを引き寄せて顔を隠した。 「お前が変なことするからだろ!!」 「俺のせいか」 「そうだ!」 「だが、欲したのはお前だ」 「はあ!?いつ!どこで!」 くっそー訳の分からないこと言いやがってー! うおっ、シーツ引っ張るんじゃねぇ! お互い無言でシーツの攻防戦をしているとドアのノックの音がした。 レイグがジルを呼びに来たに違いない。 ジルがベットから降りる気配がして俺はそっとシーツから顔を覗かせる。 うおわっ! 目に前にジルの顔がっ。 「んっ…!」 不意を突かれた俺は再び口を塞がれてしまった。 このー、いい加減にしろー! 俺は身体を捻って無理矢理口を引き剥がした。 「ぷはっ。て、てめー、さっきから何度も何度もっ!そんなに精気足りねえのかよ!」 「精気?」 「とぼけんな。精気吸うためにキ、キス…してんだろ」 「……」 なぜ黙る。 ジルは指を口に当て何やら考え込んでいる。 お、おーい。 そんなに考える事か? ほら、またノックされてるぞ。 ただでさえジル傍にいるだけで睨まれるのは俺なんだからな。 「レイグが呼んでんぞ。俺は行くからな」 俺がベットを降りて数歩、歩いたところでジルが口を開いた。 「昨夜、どこへ行っていた」 「は?」 「結界を越え干渉してきた奴がいる」 昨夜? 誰にもあっていないよな。 変な夢は見たけどさ。 「どこにも行ってないけど」 「なぜ隠す」 いやいやいや、隠してなんかいないんですけど! そして何で近寄ってくるんだよ。 俺は両手を広げてジルとの間に壁を作る。 美形が無言無表情で来られるとかなり怖いから止めて下さい。 しかもジルの場合は美形の前に超が付くけどな。 「ホントにどこも行っていないんだって」 ジルの目がスッと細められた。 うっ! 何でこんなに責められている気分になるんだ。 「考えても見ろよ。俺、ジルと一緒に寝ていただろ?」 「身体はな」 「へ?」 「質問を変えよう、誰と会っていた」 「だーかーらー誰にも会ってないって。夢の話なら女の子と会ってたけど」 「女…?」 ジルの声が低くなる。 あ、あれ? 急に機嫌悪くなってません? 「女って、ホントに小学生くらいの女の子だよ。しかも夢だしっ」 何で俺、こんなに焦って説明しなきゃいけないんだ? ジルの深紅の瞳と視線が合う。 「そう言えば女の子も紅い瞳だったな」 「レヴァか」 「レヴァじゃないってさ。レヴァの一部って言ってた気がする」 ジハイルはまた何かを考えるのか黙っている。 あ、確かレイグ待たせてないか? ドアの向こう側からレイグの声がした。 「マスター?」 「入れ」 レイグの呼びかけにジルが許可をした…って、お前、裸じゃねえか! 俺は慌ててベットの上にあった奴のガウンを掴み下の大事な部分を巻きつけて隠した。 直後レイグが部屋に入った。 セ、セ〜フ。 裸のジルと傍にいる所を見られたら何を言われるというより何をされるか分かったもんじゃない。 レイグのジルに対する敬慕っぷりはすさまじいからな。 ほっと一息ついているとレイグの冷たい視線がビシバシ感じるのはどうしてでしょうか。 「貴様何をしている」 「何って」 ふと自分の格好を見ればジハイルの前に膝をつき手は巻き付けたガウンを落ちないようにヤツの 大事な部分の辺りで抑えている。 「我がマスターにいかがわしい事を!」 「いかがわっ!?誤解にも程があるぞ!」 「離れろ!」 ヒッ! 恐ろしい鬼の形相で睨んでくるがこの手離したら大変な事になるって! 「ジル、自分でこれ抑えろよ」 「……」 こいつー。 またシカトかよ! その上、口角を少し上げ笑った。 そんなジルをレイグは呆然と見て呟いた。 「マスターがほほ笑むなんて…」 ほ、ほほ笑むだって!? 俺には底意地の悪い悪魔の笑みしか見えないぞ! こうなったらとガウンの端と端を掴んで縛り落ちないようにしてからジルの部屋をダッシュで出て行った。 はあぁ〜、最近こんなんばっかだな。 main next |