健康づくり・介護予防対策としての「きんじゅ運動」(登録商標第5246158)の勧めとその効果を判定する簡易体力テスト

 

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きんじゅ運動」とは何か...

 

持久力の「」,筋力の「きん」,柔軟性の「じゅ」,バランスの「

 

これら4つの能力(機能的体力)を改善するトレーニング法です

 

 最近,自立高齢者の介護予防や要介護高齢者の機能改善に筋力トレーニングが必須であることが明らかになってきました.しかし,筋力トレーニングだけで筋機能が改善されたといっても,外出のために長時間歩いたり,電車に乗ったりと持久力が身につくわけではありません.

 健康的で自立した生活をするためには,日常の生活活動(ADL)を難なくできるためにまず筋力が必要です.その次は,筋力の活動(筋活動あるいは身体活動)を機能的に働かせるためにバランス能力や柔軟性に優れることが求められます.さらに,筋活動を長く続けるためには持久力(スタミナ)を維持し続けることも健康的な生活を送るためには重要です.

 このような考えから,健康づくり・介護予防に必要な運動(トレーニング)として「じきんじゅば運動」を提唱しいます.アメリカスポーツ医学会(ACSM)は中高年者や高齢者の健康づくりに必要なトレーニングとして,ウェルラウンディド・トレーニング(Well-rounded Training)という抵抗負荷運動(筋力づくり),全身持久力のための有酸素運動,柔軟性運動を複合させたトレーニングが効果的であると進めています(複合運動の効果は多くの研究で実証).

 高齢者を対象とした場合,体力要素のなかでもっとも低下が著しいバランス能力も運動に含めるべきで,ウェルラウンディド・トレーニングにバランス運動を含めた「じきんじゅば運動」を実践しています.

 「じきんじゅば運動」の効果判定には,バランス(手のばし),柔軟性(椅座位体前屈),総合的歩行能力(アップ・アンド・ゴー),筋力(椅子立ち上がり),持久力(3分間往復歩行)を用いています.すでに,年齢階級別評価表の作成と竹井機器工業制作の分析ソフトと測定機器(竹井機器工業:中高年者体力測定評価システムとして)は完成しています(毎日新聞2006.5.20と奈良新聞2006.5.9に記事掲載).

天理大学体力学研究室では,2002年度から「じきんじゅば運動」の効果を評価する体力テストを開発してきました.これまでの研究で2000名以上のデータを得て,各種目の性別年齢階級別評価表を作成しました.

 我々の体力テストでは,筋力・持久力・調整力などの体力要素を総合的に測って評価しています.最もポピュラーな文部科学省体力テストが複数のテスト種目で構成されているのはこのためです.私の研究室では,「じきんじゅば運動」の効果判定には文部科学省の体力テストでは評価できないと考え,よりベターなテストを各種目から選び組テスト(バッテリーテスト)としました.以下にその種目と測定方法を動画と図で示します.

 簡易体力テストは5種目で体力(持久力・筋力・柔軟性・バランス・歩行能力)評価します.評価表は,男女とも20歳〜50歳代(10歳毎),60歳〜70歳代(5歳毎),80歳以上で,それぞれの能力を評価するとともに,体力年齢で暦年齢(実年齢)との差を知ることもできます(専用のソフトのみ).

天理大学体育学部体力学研究室編 中高年者用 簡易体力テスト

体力テストを実際に測定する場合の注意が動画で示してあります.動画は我々の方法を用いた場合の測定を示していますので,踵を上げて測定するような「ファンクショナルリーチ」とは方法が異なります.

1.持久力   3分間往復歩行テスト(木村たちより)【説明がダウンロードできます】
2.筋力    30秒椅子立ち上がりテスト(中谷たちより)【説明がダウンロードできます】
3.柔軟性   椅座位体前屈テスト(Rikliたちより中谷修正)【説明がダウンロードできます】
4.バランス  手のばしテスト(Duncanたちより中谷修正)【説明がダウンロードできます】
5.総合歩行  アップアンドゴーテスト(Podsiadloたちより中谷修正)【説明がダウンロードできます】

 簡易体力テスト(左から,3分間往復歩行テスト,30秒椅子立ち上がりテスト,椅座位体前屈テスト,手のばしテスト,アップアンドゴーテストの順です)はこれまでに報告された妥当性および信頼性の高い測定方法のやり方を日本人中高年者用に修正しています作成しました.中谷修正というのはオリジナルのテストを修正して実施することを示します.性別年齢階級別評価表はこの修正したテストによって得たデータから作成しています.従って,このテスト方法と異なる実施法で行えば,評価表も自ずと使用できなくなります.

 次に,私たちが介護予防事業として実際に行っている「じきんじゅば運動」を紹介します.

 我々の研究室では奈良県内の河合町と共同で高齢者介護予防事業を2003年度から5年計画で進めています(事業は都合により2005年度で終了).目的は4つあり,

 (1)健康寿命の延長
 (2)生涯運動の場所確立
 (3)医療費の適正化
 (4)河合町独自の介護予防体制の確立です

 これらの目的から,町在住のおおむね65歳以上の高齢者を対象に「じきんじゅば運動」による健康増進・介護予防事業をスタートさせました.この事業の参加者とスタッフを『豆筋(まめきん)クラブ』と呼び,将来にわたりクラブ会員として登録してもらい,いつでも参加できる状況を作っています.

 参加者は健康教育プログラム(2〜3回)を終了後,「じきんじゅば運動」を3ヶ月間行います.体力評価は健康教育プログラム前,トレーニング前後の計3回実施し,トレーニングによる機能的体力への影響を検討しています.機能的体力として,上肢および下肢筋力,筋機能,反応時間,柔軟性,バランス,歩行能力,全身持久力などです.

 天理大学体力学研究室(中谷研究室)では奈良県内のモデル地区と連携して,ヘルシー・エイジング(Healthy Aging)のための健康維持・増進,自立高齢者の機能的体力の維持・増進,要介護高齢者における身体面からの自立支援について科学的根拠に基づいたトレーニング指導や体力評価を行っています.

 現在は90分間の「じきんじゅば運動」を週に2回,3ヶ月間にわたり,私をはじめ運動指導専門家が直接指導しています.この3ヶ月間は機能的体力を向上させるための「入院」期間とし,その後は月に1度(「通院」と考えます),町内の体育館に集まってもらい,忘れかけた運動の指導や新しい運動の紹介を行って介護予防をはかります.

 『豆筋クラブ』をモデルとして,今後は数百人規模の健康づくり・介護予防事業を各自治体が展開できるような介護予防推進のためのノウハウや科学的根拠を発信していきたいと考えています(この考えの実現に対して,2004年度から4年間にわたり科学研究費補助金の補助を受けることになりました).

 2003年度から実施した『豆筋クラブ』での「じきんじゅば運動」の写真を下に示します.この事業での成果等に関する問い合わせは中谷までご連絡ください.

 「じきんじゅば運動」とは何か? それは持久力・筋力・柔軟性・バランスの運動なら何でもよいのです...そんな無茶苦茶なということで最近はどんな運動がよいのか研究しています.

 健康づくりの現場では主に生活習慣病予防のための持久的運動,ウォーキングが行われています.医師からウォーキングを薦められたということもよく聞きます.ウォーキングは歩く速さや歩幅を変えるだけで,股関節や太ももの筋肉に大きな刺激が入ります.そのため,持久力だけでなく筋力の向上にもつながり一石二鳥と言えます.

 しかし,「老いは脚から」と言われるように「脚」とは太ももを指しています.決して「足」ではありません(足,英語のfootは足首から下を言います).特に,膝関節を伸ばすための大腿四頭筋(太もも前の筋肉)は衰えやすい速筋線維が多く含まれているため,膝の伸展範囲が少ない運動(ウォーキング)では刺激が弱く老化を予防できません.しかし,階段登りやスクワットのような運動は大腿四頭筋だけでなく大臀筋(お尻の筋肉)にも刺激を与えることから,ある程度膝が曲がる運動をする必要が生じます.

 階段とエスカレータ(エレベータ),どっちを利用していますか?  私が下肢(脚)筋力にこだわって研究しているのはそのためです.最近,脚の筋肉ではありませんがこれまでの筋力運動の考えではなく,素早い筋収縮(筋パワー)を運動に選んでトレーニング効果を検証しています.筋力向上から筋パワー向上が目的です!

.  「筋パワー」と言うと,なんか若い人しかできない...なんて思われるかもしれませんが,どんな人でも筋運動を「素早く」やればそれは筋パワー発揮になっているのです.専門ではない人に説明すると,「筋パワー」とは,単位時間に行った仕事量(運動量)で,力×距離÷時間となり,力×スピード(距離÷時間)で表せます.つまり,筋力向上では刺激を与えられない素早い筋運動を「筋パワー」向上トレーニングでは養成できることとなります.これぞ,一石二鳥で介護予防に行うべき「運動器の機能向上」です!

 一昨年から加齢に伴う筋パワーの変化について研究しており,椅子から立ち上がる,自転車全力ペダリング,垂直跳び,階段かけ上がりなどの加齢変化や性差についてデータを集めています.今年は,科学研究費と学術振興資金の助成研究が採択されたので,さらに細かく調べることとトレーニング(SSC運動)の効果を検証しています.SSC運動とは,簡単に言うと筋肉を伸ばしてから曲げる(力発揮)運動で,素早くなめらかに動かす(筋パワー)ことを目的としている内容です.まだまだ基礎的研究をしないと,「この筋パワー運動で介護予防に役立つ!」とは言えませんので,現在研究中です.

 昨年度は京都市社会福祉協議会の協力を得て26名を対象に,ジャンプ運動を用いた筋パワートレーニングとバランス運動中心の軽強度トレーニングを行い比較検討したところ,ジャンプ運動を用いたグループはバランス運動のグループに比べてバランス(重心動揺)が改善されることがわかりました.つまり,「バランス」を目的としたトレーニングよりも「筋パワー」を目的としたトレーニングの方が「バランスが良くなる」という結果でした.これには驚きですが,その場の連続ジャンプは前後に重心が常に動くため着地した時の感覚(体性感覚,反射,三半規管等)のコントロールを常にやりながら運動していることが影響していると予想しています.しかし,データ数が少ないことから,今年は京都市と天理市で同様なSSC運動による効果を検証しています.

 「筋力向上」ではなく,虚弱高齢者でも実践可能な「筋パワー向上」を目的としたトレーニングの開発と普及が重要なテーマです.「じきんじゅば運動」の「きん」は「筋力」から「筋パワー」に変えていく予定です.筋パワーについてはNHKから問合せが昨年ありましたので,目指す課題は「筋パワー」で介護予防!!!


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