ハイパワー赤外線送信機 NO.1 (PIC12F629)

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超小型ハイパワー 2 チャンネル赤外線送信機の製作
 バレーコート 1 面ほどの広さなら今までの赤外線送信機で問題なく使える。さらに広い体育館や、赤外線の反射が少ない条件でも快適にコントロールするには、送信機の赤外線出力を増やしたい。また、出力が大きければ太陽が顔を出さないアウトドアでも飛ばすチャンスがある。

 今までの赤外線送信機は長時間安定した赤外線を出力できるように作ってきた。今回の送信機は今までと違い、赤外発光ダイオードをかなり過酷な条件で使うことになる。ハイパワーの送信機を作るにはそれなりのリスクを伴う。このコーナーに限らず、すべて自己責任であることを承知してほしい。


2チャンネルハイパワー送信機回路図(ジョイスティックの結線は Futaba 用)

irtx2-629f.HEX (Futaba) ジョイスティックの結線は回路図通り
irtx2-629s.HEX (Sanwa) ジョイスティックの結線を(a1)から(a2)に変更する
irtx2-629j.HEX (JR) ジョイスティックの結線を(a1)から(a2)に変更する
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 赤外発光ダイオードといえども半導体の一種。ハイパワーで使うと熱を伴う。今までの赤外線送信機と異なり、今回は赤外発光ダイオードそのものが暖かくなる程度の発熱状態で使用する。

 ハイパワーで安定した出力を持続するには、内部抵抗の少ない電池が必要になる。小さな送信機なので電池が大きくなっては意味がない。かといって小さな電池で内部抵抗が高くてはせっかくハイパワーな送信機を作ってもその性能を十分に発揮できない。

 006P 型のニッケル水素電池 (8.4V 170mAh) やニッカド電池 (7.2V 110mA) をテストしてみたが、初期の出力はある程度あるものの、短時間に出力が低下してしまう。結局 Kokam 340mAh の 20C 放電可能なハイディスチャージタイプのリチウムポリマ電池を 2 セル直列で使うことにした(画像左)。これなら 2 時間以上高出力が持続する。 2 セル重ねても電池の厚さは 6mm ほど。とても小さな送信機にもかかわらず、瞬間最大電流は 3A も流れる。もし作るなら、ぜひこの電池を使ってほしい。

 赤外線出力が倍になったからといって、通達距離が倍になるわけではない。理論上 4 倍の出力がなければ通達距離は 2 倍にならない。通達距離を 2 倍にするのは大変なことである。今回は従来のおよそ 2 倍の出力を持つ送信機を作った。したがって距離は今までの 1.4 倍ほどと計算できる。夜の屋外のテストで 56m の通達距離を確認できた。従来の送信機では 30〜40m の通達距離だったことから、ほぼ計算と一致する結果となった。

 エルロンとスロットルの 2 チャンネルだが、ほとんどのインドアエアプレーンが 2 チャンネルで飛行できる。小型化するために今回は 8 ピンの PIC12F629 を使ってみた。38kHz と 56.9kHz の変調波を切り替えられるようにした。2 チャンネルの場合、スティックに組み込まれているプッシュスイッチで変調波の切り替えるのはやりにくい。そこで別にジャンパピンで切り替えられるようにした。電源スイッチも廃止してコネクタの抜き差しで電源の ON/OFF を行うことにした。

 赤外発光ダイオードは安価(千石電商で 100 個 1500 円)に入手できて、もっとも光出力の大きい SLR932AV-7K(SANYO) を使った(画像下)。赤外発光ダイオードは、1.6mm のガラスエポキシ基板をオーブンで 2 分ほど加熱してアーチ上に曲げたものに取り付け、安定抵抗は基板裏側に取り付けた。赤外発光ダイオードは 3 個直列にして 7 列の合計 21 個。現在発売している秋月電子の投光器キットに使われている出来外発光ダイオード(画像中) AN304(STANLEY) は極端にパワーが少なくなるので使えない。画像上はすでに販売されていない秋月電子の旧投光器キットに使われていた SLR931A。こちらも SLR932AV-7K と比較するとパワーが少ない。また、それぞれの赤外線の照射角に違いがある。ビデオカメラで撮影した画像だが、なぜか発色が異なる。

大出力でドライブするために、あらかじめ赤外発光ダイオードの順方向電圧降下を調べてみた。上の画像はそのときのもの。絶対最大定格は3種類とも 100mA だが、3個直列にして 10Ω の安定抵抗を使用し、3 種類を並列接続して 270mA の電流が流れるように電圧を設定したところ、今回使用する SLR932AV-7K には 118mA の電流が流れ、赤外発光ダイオード 1 個あたりの順方向電圧降下が 1.30V となった。3 個直列での電圧降下は 3.9V になる。リチウムポリマ電池 2 セルの定格電圧は 7.4V。今回の送信機では安定抵抗に 4.7Ω を使用した。

もし変調パルスでなく直流電圧をかけた場合、LED1個に (7.4V - 3.9V) ÷ 4.7 = 0.74A もの電流が流れる計算になる。7 列あるので全体では 5A もの電流になる。では充電直後の電池ではどうなるだろう。リチウムポリマ電池 2 セルの電圧は 8.4V なので、(8.4V - 3.9V) ÷ 4.7Ω = 0.96A もの電流となり、全体では 6.7A も流れることになる。もちろん実際には電池の内部抵抗、配線の抵抗、FET の内部抵抗などがあるので計算値ほどは流れないが、このような使い方をすれば赤外発光ダイオードはあっという間に壊れるだろう。

 今回の送信機は 3 チャンネル分のパルスを内部で作っていて、500μsec のパルス幅が 4 個並んだ一組を 19.2msec 周期で送り出している。500μsec のパルス幅を 38kHz か 56.9kHz で変調するが、そのデューティ比は 50% なので、1周期 19.2msec の間にパルスが High になる時間は 500μsec パルス 4 回分の半分で 1msec となる。つまり 1msec ÷ 19.2msec = 5.2% のデューティ比となる。

赤外発光ダイオードを取り付けているエポキシ基板は水性アクリルラッカの黒で塗装した。変調周波数を切り替えるジャンパピンは右側に差し込めば 38kHz の変調波となり、抜けば 56.9kHz となる。抜き取ったジャンパピンを左側に差し込んで保管できるようにした。

出力段の赤外発光ダイオードと並列に出力確認用 LED をつないであるので、確認用 LED が点灯すれば PIC12F629 の動作は正常と判断できる。また、送信機をすばやく左右に振ってみると 4 個のパルス列の点灯が確認できる。

 タカチの HW1551KB という 80mm x 40mm x 20mm のケースに収めた。とても持ちやすくて操作しやすい。また、ジョイスティックはスロットルスティックがどこにでも止まるように改造し、表面の丸穴を角穴に改造した。

 充電直後のリチウムポリマ電池 2 セルの電圧 (8.4V) と、定格電圧 (7.4V) を安定化電源から供給して、送信機の消費電流と、消費電力を測ってみた。赤外発光ダイオード表面に手を当てると暖かさを感ずる。ほぼ限界に近い使い方かも知れない。

 通常の明るさの室内ではまったく問題ないと思われるが、今まで以上に出力が大きくなったので、暗いところで赤外線発光ダイオードをのぞき込むのはやめたほうがよいだろう。

 バレーコート 1 面の体育館でのテストでは、赤外発光ダイオードがどのような向きでも(操縦者の後ろに隠しても)問題なくコントロールすることができた。
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2005/01/20