赤外線送受信機 No.34 (PIC10F200 受信機)

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DC-DC コンバータを省略した 2 チャンネル赤外線受信機
 データメモリの不足もプログラムで何とか回避でき、2 チャンネルの受信機プログラムを組み込むことができた。SOT-23 タイプの PIC の軽さを生かすには、軽量な受信機に仕上げなければその特徴を生かせない。そこで今回は DC-DC コンバータを省略した受信機を作ってみることにした。

 DC-DC コンバータを使わない場合、モータの駆動と電子回路とが共通電源となるため、赤外線受光素子の電源フィルタ回路が欠かせない。このフィルタ回路に使うコンデンサには容量の大きなものが必要なので、どうしても重くなってしまう。そのような理由から今まで使うのをためらってきたが、今回 2012 サイズの 10μF/6.3V のセラミックコンデンサが入手できたので使ってみることにした。リチウムポリマ電池 1 セルでドライブすることになるので、赤外線受光素子には低電圧対応のものを使うことになる。

 電源ラインにモータ回転時のリプルが出るのは避けられないので、リプルの少ない小型ページャーモータに用途が限られるだろう。もっとも、軽量な受信機を搭載するインドアエアプレーンともなれば 4mm ページャーモータあたりがターゲットになる。


IRXA261 パーツレイアウト(バッテリモニタなし)

 バッテリモニタのないパターンだとかなりシンプルになるが、容量の少ないバッテリを使う場合は電源電圧を監視するためのバッテリモニタを搭載したい。ということで今回はバッテリモニタつきの受信機を製作することにした。

irxa261f.hex Futaba
irxa261j.hex JR
irxa261s.hex Sanwa
(マウス右ボタンで「対象をファイルに保存」)


IRXA261BM パーツレイアウト(バッテリモニタあり)

IRXA261BM 反転プリントパターン(200pixel/cm)

受信機パーツリスト
PIC10F200/OT (size SOT-23) 1 e-shop Digi-Key
IRLML2502 FET 1 e-shop Digi-Key
TCM809T リセットIC 1 e-shop Digi-Key
NJL21H380A or NJL21V380A
低電圧対応赤外線受光素子
1 e-shop
10μF/6.3V チップセラミックコンデンサ (size 2012) 1 e-shop 秋月電子
0.1μF/25V チップセラミックコンデンサ (size 1608) 2 e-shop 千石電商
赤色チップ LED (size 1608) 1 e-shop 秋月電子
100Ω チップ抵抗 (size 1608) 2 e-shop 千石電商
0.2mm ガラスエポキシプリント基板 1 e-shop 秋月電子

 受信機としての機能部品は 6 点だけ。バッテリモニタを搭載するので TCM809T と LED と 100Ω が追加になる。10mm x 7mm のプリント基板が約 0.02g の重さになる。

 小さな木製の台にブチル系のゴム粘土で基板を固定して、その上で部品をはんだ付けしてみた。はんだ付けが済んで基板を洗浄するするときにチップ LED の樹脂が洗浄剤で溶けてしまうことがわかったので、LED だけは洗浄後に取り付ける。

 基板の入出力端子部分に薄くはんだコーティングをしてみた。今回はどの部品も簡単に入手できる標準的なサイズの部品を使って作り、基板のスペースも十分余裕を持たせたにもかかわらず、基板の完成重量は 0.10g と軽量に仕上がった。はんだの使用量をできるだけ少なくなるように気を付ければ誰が作っても同じぐらいの重量で仕上げることができると思われる。

 赤外線受光素子は軽量化の仕方で大幅に重さが変わってくる。今回は 0.05g まで軽量化した。もう少し軽くしたいところだが、これ以上削ると歩留まりが極端に悪くなるのでここまでとした。


0.15g で完成した 2 チャンネル受信機

 赤外線受光素子は当初ケーブルで取り付けるつもりでいたが、気が変わって基板に直付けしてしまった。最初からそのつもりならパターンをそのつもりで作る必要がある。

 バッテリモニタ IC は電源電圧が 3.08V 以下になると LED が点灯する。バッテリモニタの動作を確かめるため、電源に 3.0V を供給して LED が点灯することを確認したあと、3.2V を供給して LED が消灯することを確認した。

 購入したPICkit 1 Flash Starter Kit に付属してきた PICkit 1 Baseline Flash Programmer Version 1.0.0 を起動して、評価ボードに PIC10F200 をセットし、USB ケーブルを PC に接続して [Read Device] をクリックしてみると、プログラムメモリの最終番地 (0FFh) に内部発振周波数の校正値(OSCCAL値)が書き込まれているのがわかる。


PICkit 1 Baseline Flash Programmer Version 1.0.0

ところが HEX ファイルを Import すると、その OSSCAL 値は読み込んだファイルによって上書きされ、[Write Device] をクリックすると上書きされた状態で PIC に書き込まれてしまう。外部から設定の変更ができないだけに深刻な問題である。MPLAB IDE でプログラムをコンパイルする際に一つ一つ異なる OSCCAL 値をプログラム内に書き込んでコンパイルするというひどい状況で使ってきた。これではあまりにも使いにくいので、バグが改善されたバージョンが出ているのではないかと探したところ、MicrochipSiteのProducts -> Development -> Baseline Flash Programmer(MFMP)の下の方の Downloads に [PICkit 1 Baseline V1.20] がみつかった。早速ダウンロードしてインストールしたところ、問題は解決されていた。

 新たな Baseline Programmer Version 1.20.0 で [Device] リストから PIC10F200 を選択して[Read Device] をクリックしてみた。

 プログラムメモリの最終番地に OSCCAL 値が書き込まれ、それとは別に下にも OSCCAL 0xCFA と表示されるようになった。[Erace] をクリックしても最終番地の表示はそのまま残る。これなら安心して書き込みができる。ただし注意しなければならないのは、デバイスをセットしたら必ず最初に [Read Device] をクリックして PIC 内の OSCCAL 値を読み出す必要がある。うっかり読み出すのを忘れて HEX ファイルを Import して [Write Device] で書き込んでしまうと OSCCAL 値はきれいに消えてしまうことになる。消してしまった値は、たとえメモに残してあっても戻すことができない。この点だけは特に注意する必要がある。

 [File] -> [Import] で irxa261f.hex ファイルを読み込んでみた。プログラムメモリの最終番地は上書きされずに、きちんと校正値が残っている。これなら安全だ。

 [Write Device] をクリックして書き込み完了。

 その後、バッテリモニタを搭載しない受信機を作ってみた。Digi-Key から調達した薄手の両面基板を片面だけ使い、赤外線受光素子を裏側に直付けするようにパターンを若干変更してみた。受光素子の出力と PIC 入力にジャンパ線を使っている。

 基板サイズ 9mm x 6.3mm、受光素子を含む完成重量 0.11g (基板完成 0.07g + 赤外線受光素子 0.04g )。

 その後 A-6 に 0.11g の受信機を搭載してテストフライトを行った。結果は全く問題なく十分満足な飛行を確認することができた。

 PIC をリチウム電池 1 セルでドライブする場合、負荷につなぐことのできるマグネットアクチュエータは何Ωのものが使えるだろうか。PIC のポート許容入出力電流は最大で 25mA となっている。リチウム電池は定格電圧が 3.7V だが充電直後の電圧は 4.2V になる。そこで充電したばかりの電池を IRXA261 受信機のテストボードに接続して、100Ωの MicroMag アクチュエータを負荷につないでみた。


IRXA261 受信機には 100Ωのマグネットアクチュエータが使える

 PIC の動作電流も含まれるが、約 20mA と 100Ω のコイルでも十分許容電流値に収まり、問題なく使えることがわかった。PIC の出力ポートは内部抵抗が比較的高く、5V の電源電圧で 200Ω のコイルをつなぐと 50Ω ほどの内部抵抗になる。充電直後のリチウム電池でテストしたところ、電源電圧 4.17V で 100Ω のコイルをつないだときの出力電圧は約 2V となった。内部抵抗は 100Ω ほどになる。

 効率を考えると負荷抵抗は高いほどいいが、軽量なインドアエアプレーンへの搭載を考えると、低抵抗のコイルを使った方が軽くできる。

261KITのパーツレイアウト

赤外線受光素子は基板の裏側からはんだ付けする

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2004/11/21
2004/11/22 A-6 に irxa261 受信機を搭載した画像とフライトレポートを追加
2004/11/24 100 Ωのマグネットアクチュエータが使える記述を追加
2006/08/28 261KITのパーツレイアウトを追加