山本周五郎の著書と書評。 著書は膨大だが蔵書はそれほど多くはないので掲載したリストはみすぼらしい。読んだ本だけは少しずつ揃えたい。 |
NO | 著書名 | 書 評 |
1−01 | 青べか物語 | 浦粕町(現在の浦安町)に移り住んだ蒸気河岸の先生≠アと作者が、浦粕町での 数々のエピソードのエッセンスを小説化したもの。 浦粕町は東京都と千葉県の境を流れる江戸川の河口にある漁師町で、貝と海苔 (のり)と釣場とで知られていた。町はさして大きくはないが、貝の缶詰工場と、貝殻 を焼いて石灰を作る工場と、冬から春にかけて無数にできる海苔干し場と、そして、 魚釣りに来る客のための釣船屋と、ごったくやといわれる小料理屋の多いのが、 他の町とは違った性格をみせていた。 ・・・あらすじの一部を紹介・・・。 ある日、「先生」と呼ばれる三文文士がこの町にやってきたが、プリプリ張り切った若 い女の肢態に眼をうばわれ、当分の居を増さんの家の二階にきめた。楽しい刺戟の 中でケッサクをものにしようというわけだ。先生は見知らぬ老人から、青べか舟を売り つけられた。ところで先生の観察によれば、ここは他人の女房と寝るぐらいのことは 珍しくなく、動物的本能が公然と罷り通っている大変なところである。町にはごったく 屋という小料理屋が多い。その中の一軒、「澄川」に威勢のいいおせい、おきん、お かつの三人が働いている。先生の眼を惹いたのはおせいであった。・・・・ これが小説だということを忘れさせてくれたほど登場人物が生き生きとしている。これ ぞ山本周五郎の真骨頂とでもいうのだろう。 因みに小説の船宿「千本」のモデルになった船宿は現存していて、私なぞ東京湾で釣 り糸を垂れていると、時々「知る人ぞ知る」この船宿の船(吉野家)を見かけることが 出来る。 <主な登場人物> 私=蒸気河岸の先生−作者本人。浦粕町に下宿し、売れない小説を書きながらこの 町の住人の生態を観察している。 芳爺さん−−−「大蝶」の倉庫番。私に「青べか」を売りつける。 長太郎−−−−釣舟宿「千本」の三男。小学三年生。長≠ニ呼ばれ私の数少ない 理解者。 倉なあこ−−−船宿「千本」の船頭。気のやさしいおとなしい男。 留さん−−−−渡船三十六号船の水夫。金が溜まると悪い女にいれあげる気の良い 男。 五郎−−−−−洋品雑貨店「みその」の息子。嫁に逃げられる。 繁あね−−−−両親に捨てられ妹とホームレスのように生活している。 幸山船長−−−東湾汽船の船長。四十余年船長として働く。雑貨屋の娘お秋に恋する。 おせい−−−−ごったくやと呼ばれる小料理屋「澄川」の娘。「かも」の客をてだまにとる。 勘六−−−−−五色揚げの店「朝日屋」の亭主。博打好きで妻のあさ子と夫婦喧嘩が 絶えない。 あさ子−−−−勘六の妻。博打好きで「朝日屋」を一人で差配している。 増さん−−−−漁業組合の雑役。あだなは「家鴨」。若い時は乱暴者だったが、今は 妻のきみのを大切にしている。 きみの−−−−増さんの妻。足が不自由。 |