町民講座・第3回講義;「西鶴諸国ばなし」を読む。   12,02,29

    日時;2月27日、 講師;関東学院大学准教授 井上 和人氏

    早いもので町民講座ももう第3回目の講義に入った。聴講者もようやく会場の雰囲気に慣れてきて、
   コーヒーブレークの時には町が用意した駄菓子をつまみながらあちこちで談笑が聞かれた。

     ー講義の要旨ー
    「人は化け物、世にないものはなし」 江戸時代の井原西鶴は「西鶴諸国ばなし」という小説の序文に
   こう書いている。この本には幽霊も妖怪も出てくるが、「人のどこが化け物なのか」を謎解きするのが本
   講義の主テーマだった。その前に西鶴とはどんな人かについて紹介があった。西鶴は寛永19年(1642)
   大阪の富裕な町人の家に生まれた。家業や家系、誕生日などは一切不明である。40歳ぐらいまで俳諧
   の世界で沢山の句集を発刊して活躍したが、41歳の時に小説に転向し、第1作が「好色一代男」、第3作
   が貞享2年(1685)44歳の時の「西鶴諸国ばなし」である。「西鶴諸国ばなし」は諸国に取材した全35章
   よりなる短編奇談集で、今回の講義では、「序文」と二つの短編の解説だった。妖怪の出てくる「巻五の
   三」と貧乏侍の大晦日の小話の「巻一の三」である。

    さて結論だが、世の中にはよくわからないことが多い。これを不思議という。訳が分からないから恐ろ
   しい。訳が分かってしまえば恐ろしくない。幽霊も妖怪も訳が分からないから恐ろしいので、訳が分かっ
   てしまえば恐ろしくもなんともない。人間の心は訳の分からぬ不思議なもので、人間ほど訳の分からぬ
   ものはない。訳が分からぬから人間は恐ろしい。だから人間は化け物だ。
    これが西鶴の結論で、「序文」冒頭の言葉になったと井上教授は2つの短編を優しく解きほぐして解釈
   してくれた。

     ー感想ー
    高校受験勉強だったか大学受験かは忘れたが、井原西鶴と云えば「好色一代男」とか「日本永代蔵」
   とか「世間胸算用」と即座に答えられるが、どんなことが書いてあるかについては何も知らないというの
   が受験生の相場に決まっていた。かくいう私も一度も西鶴を読んだことはない。

    今回初めて西鶴の短編を解説してもらったが、肩の凝らない世間話で読み易そうだと感じた。それで
   いて「序文」にある「人間は化け物」などと結構奥深そうな教訓を秘めているので油断はできない。

    成る程、確かに人間ほど化け物で怖いものはない。とはよく言ったもの。今の世の中を見ていると人
   間以上に怖いものなどありはしない。突然の自然の猛威も怖いけれども、それ以上に人間の為すこと、
   途方もない暴挙や悪知恵をみると、人間の心ほど不思議で訳の分からないことはない。訳が分からぬ
   から怖い。つまり西鶴流にいえば結局「人間は化け物」に帰着するのであろう。現代に通じる西鶴の人
   生観だった。