東京湾の 夜メバル。  18,08,28

  そろそろ夜メバル釣りを終了する釣り船屋も出始めた。夜メバルは夏の夜の風物詩である。
 暑い日差しが夜になると一服して、少しずつ涼風が吹き始め、潮風が心地よい。

  夕陽が真っ赤に染まって西の空に落ち、富士山がシルエットのように黒く浮かび上がって
 次第に星空が見え始め、大きな月が海を照らす。満天の星空を見ながら東京湾の夜メバル
 釣りをするのもあとわずかである。夜メバル釣りはわずか2か月ほどしかやらないのが東京湾
 の釣り宿の通例である。

  先週今年2回目の夜メバル釣りに出かけた。この夜も風がなく、波も静かで満月の月が煌々
 と照り、遠く房総の館山あたりで打ち上げている花火が見え、夜釣りの醍醐味を存分に味わっ
 てきた。

  釣果は20~25センチくらいの黒メバルを13匹と、カサゴ、アジ、ジャンボキスなどの外道を数
 匹釣ったが、終わり際にメバルとは違う強い引きがあり、慎重に取り込んだら、45センチで2キ
 ロ近いクロダイだった。

  翌日、魚をさばいてから、2匹を煮付けて92歳になる逗子の叔母に届けた。5月に亡くなった
 享年96歳の伯父共々、私の差し入れる煮魚をとても喜んで食べてくれた。特に一晩冷蔵庫に
 入れて自然にコラーゲンを固める”煮こごり”が大好物だった。

  翌々日孫たちが来宅したので、4年生の下の孫に煮魚の作り方を伝授し一緒に煮魚を作っ
 たが、その翌日孫が自宅に持ち帰ったメバルを、私が教えた通りの調味料の割合から魚の
 煮方まで、すべて教わったレシピ通りに美味しく作ってくれたと娘から電話があった。

  子供の記憶力は恐ろしい。何気なく教えたレシピのすべてをまるで暗記したかのように正確
 に脳みそに擦りこめられているらしい。ついさっきのことを数分で忘れしまう老人の記憶喪失
 症にかかっている身にとっては羨ましい子供の脳みそである。失ったものはもう取り返せない。
 これを「覆水盆に返らず」という。