春告魚、     15,08,10

   「春告魚」とは文字通り春の訪れを告げる魚の事で、かってはニシンの異名だった。
  ニシンは3月から5月にかけて産卵のために大挙して北海道の西岸に押し寄せること
  から「春告魚」と呼ばれたが、ニシンの漁獲量が激減してから、近年では、春から初夏
  にかけて旬となる「メバル」が春告げ魚と呼ばれるようになった。

   横浜・野毛の歓楽街に「春告魚」という居酒屋があり、時々立ち寄って旬の魚とお銚
  子1本を飲むのを楽しみにしている。先日も立ち寄って店主とメバル釣りとメバル料理
  談義を熱く語り合ったばかりである。煮魚の調味料に水を入れるか入れないかで、店
  主と意見が一致して乾杯となった。

   先日K社の釣り同好会の例会「夜メバル」に出掛けてきた。連日の猛暑でとても昼の
  釣りには行けないが、夜釣りはその点安心だ。少し生暖かいとはいえ夜風は気持ちが
  いい。東京湾から陸地を眺めると、毎週土曜日には八景島の花火が夜空を華麗に彩
  り夏の風物詩を醸し出す。


   いつもの事だが、日没前には決まってメバル以外のカサゴ、アジなどの外道が釣れ、
  日が沈んでからようやく本命のメバルが釣れ始まる。3本針に青イソメを長いままチョ
  ン掛けしてメバルを誘う。イソメを短く切っては絶対に食いつかない。突然強烈な引き
  があって柔らかい竿がギューンとしなる。能登で釣ったサビキ釣りでは味わえない醍
  醐味である。

   この日の釣果は20〜25センチの中型主体にメバルが11匹、カサゴ6匹だった。
  家内が例によって逗子の93翁宅に電話をしたら、早速明後日来宅して囲碁1局と
  メバルの煮付けを食べたいと所望しているとの事なので急遽その準備にかかった。
  娘夫婦と二人の孫が来宅するのは勿論なので、忙しく料理の腕を振るうことになった。

   メバルの煮魚を一晩冷蔵庫に寝かせると骨からゼラチンが溶けだして「にこごり」
  が出来る。写真は不出来な「にこごり」もどきである。東北出身者は「にこごり」には
  あまり縁がないから作り方は素人である。もう少し研究する必要があり、もう一度トラ
  イすることにした。


    

   因みに翌日来宅した93翁はメバルの煮付けを「うまいうまい」といってペロリと平ら
  げ、缶ビールと清酒「越の雪椿」を常温で1,5合も飲んだ。囲碁は93翁の完勝。酒が
  旨いはずだ。私は無念の苦い酒と相成った次第。