冬の味覚・かわはぎ。   10,11,03

    今、冬の味覚カワハギがよく釣れている。相模湾でも東京湾でも連日好漁で賑わっている。多いときには
   ”束釣り”つまり100枚を超える釣果もあり平均でも2〜30枚は挙がっている。ワッペンサイズもたまにはあ
   るが概ね肝がパンパンに張った中大型のカワハギが釣れているようだ。今月と来月に仲間達とのカワハギ
   釣り大会があるので、小手調べに今年初めてのカワハギ釣りに単身で出かけることにした。船宿は久里浜
   の定宿のやまてん丸。漁場は東京湾、久里浜と房総のほぼ中間地点の竹岡沖である。この日は好天で祝
   日とあって船内は超満員。数えたら片側24人両側で48人と言うすし詰めの盛況ぶりだった。隣の釣り人と
   ほとんど肩を接するぐらいの詰め込みなので、カワハギ釣りとはいえお祭りが頻繁に起きていた。漁場には
   千住大橋やら浦舟やらあちこちから集まってきた漁船で賑わいいわば銀座通りの観を呈していた。快晴で
   富士山はじめ伊豆の連峰が、振り返れば房総の鋸山が、東京方面を見ると今建設中の話題の東京スカイ
   ツリーがかすかに見えている。釣り人だけに許された天下を睥睨する壮大な景観である。寒くもなく暑くも
   なく風は微風で波は静か、これ以上の舞台設定はない。

    早くも一投目でカワハギ特有のギュギュッという強い引きがあり良型のカワハギが上がってきた。これで
   は何十匹釣れるかと心躍らせたがその後ぱたりと止まってしまい、忘れた頃にようやく2度目の当たりがあ
   っただけ。カワハギ釣りの名人は沢山いるが、彼らに特有なのは小さな当たりを見逃さずにすかさず合わ
   せてあのおちょぼ口に引っ掛ける技を持っていること。素人はその小さな当たりがどうしても判らない。つい
   つい餌のあさりが見事に取られてしまう。カワハギの釣果は釣れる人と釣れない人では大きな差がでるの
   も頷ける。知人はカワハギの小さな当たりを把握できるには10年の年季が必要だと言っていた。断続的で
   はあるが私は既に10年を超えているが未だにまだ当たりが判らない。向こう合わせ、つまりギュギュッが
   きて初めて合わせるだけの素人の域から脱していない。畢竟釣果はどうしても少なくなる。

   結局7匹だけの釣果だったが1匹は30センチに及ぶ肝がパンパンに張った大物だった。船長によればこの
   日はここ数日間で一番の不漁だと言うことなので以って瞑すべしと諦める事にした。仲間達との2回のカワ
   ハギイベントに備えた小手調べはカワハギの難しさを再確認した結果に終わった。
   この日一番の30センチのカワハギ。

 このカワハギは刺身にした。肝を熱湯で5秒ほどくぐら
 せて臭みを取り、醤油を合わせて肝醤油を作って家内
 、娘、孫に食べさせた。はるは肝醤油を嫌がり醤油で
 何枚も食べ、すずは肝醤油で何枚も食べていた。どう
 も酒好きの娘に成長しそうである。

 のこり6匹のうち比較的大きな3匹を薄味の煮付けに、
 残りの3匹と刺身の残りの頭とあらを出汁にして鍋に
 した。この3種類の食べ物はいずれも好評だった。

 カワハギとアジの刺身のどちらが好きかとはるに聞い
 たら、困った顔をして「どっちも好き。」との答えが返っ
 てきた。甲乙つけがたしということだ。