巨大タチウオ。      20,04,30

   世の中は深刻なニュースばかりなので、たまには私にとってのうれしいニュースも伝えよう。
  毎月かかりつけのクリニックで血糖値を測って医者からアドバイスをもらっているが、今月初
  めの血糖値はなんと食後血糖値が126(基準値70∼109)、HBA1Cが6,1(基準値4,6∼6,2)
  と大幅に改善していた。

   理由はよくわからないが、2か月前から食前の薬を追加されたのが劇的効果を生んだのか
  もしれない。医者からは一喜一憂することなく注意深く経過観察しましょうといわれたが、永く
  A!Cが8,0を超える危険水域にあったことを思うと有頂天になろうというもので、半信半疑で
  はあるが私にとってはこの上ない朗報というほかない。糖尿病は完治しないとよく言われる
  が、願わくは一過性でないことを望むばかりである。

   さて、行きつけの船宿でコロナウィルスの感染者が出たとのフェークニュースが飛び交って
  客が来なくなり、船宿が暫く休業に追い込まれている。風評被害は恐ろしい。周辺の船宿も
  共連れで休業になっている。

   白状するのも恥ずかしいことだが、このご時世に釣りに行ったことを告白しよう。
  4月初旬、年初から年間予約をしていた船宿との約束で、釣り同好会の例会があり、コロナ
  騒動と船宿との約束の板挟みで困っていた幹事からのたっての依頼もあり、参加するメン
  バーがようやく6人そろった。参加した釣り仲間は全員が家族の反対にあったらしいし、私も
  同様で、後ろめたい気持ちだったが、幹事の顔を立てて参加することにした。

   いつもの定宿とは違う三浦半島先端の船宿だったが、除菌液など万全の予防体制を取り、
  席座も1席置きに間隔を置いて座る事になっていた。いわゆるソーシャルディスタンスである。
  万一の時には船宿は致命的な死活問題になるからあれこれ対策を講じている。

   釣り初めは太刀魚で、頃合いを見て昼からはアジに切り替えた。
  今のタチウオは数こそ出ないが大型ぞろいで、引きの強さはタチならではの醍醐味だ。私は
  5匹とまずまずの釣果だったが、なんと全長1,4メートル、指6本半という巨大タチウオ、俗に
  いうドラゴン級タチウオを釣り上げた。

   東京湾にはめったにいない大物タチウオで、同伴者たちは拍手喝采だった。こんな巨大
  タチウオは長い釣り経験の中でも初めてのことである。添付した写真の獰猛な顔と鋭い歯を
  とくとご覧ください。この日の釣果は、タチ5本、良型のアジ33匹、外道が30センチもあるオニ
  カサゴ
1匹だった。

      

   翌日オニカサゴを煮付けに、太刀魚は刺身とバタ焼き、あとは冷蔵庫に保管し、アジはいつ
  もの通りタタキ、塩焼き、フライにしたが、オニカサゴの煮付けが絶品だった。

   後日東京の息子に厳重注意され、当分は釣りは自粛するつもりである。しかし義理と人情
  の板挟みには困ってしまう。もっとも、先日神奈川県の指導で、東京湾と相模湾一帯の釣り
  船は5月中旬まで一斉休業することになった。つまり行きたくても行けないことになった。パチ
  ンコ中毒症の人と同じ憂き目にあうことになった。

   ところで、国や県が緊急事態宣言を出し、黒岩知事が、「神奈川には来るな、神奈川から
  出るな、」 と鎖国令のような外出自粛を求めているのに、三浦半島の釣り場周辺の道路端
  には東京ナンバーの車が鈴なりに不法駐車していた。

   緊急事態宣言どこ吹く風である。都心には人混みがなくても地方に流れてレジャーを求め
  るのでは、これではもぐら叩きのようなものである。まだまだ国や県の指導には耳を貸さない
  遊び人が多いという事なのだろう。かくいう我々も同じ穴のむじなで、大きなことは言えない。
  もう二度とこんな恥ずかしいことはしないと猛反省しきりである。

   しかし、いつも通っていた碁会所は休業、釣り宿も休業、麻雀屋も休み、ゴルフ場もビジタ
  ーお断りで食堂、売店、ロッカーなど閉鎖でただスルーで回るだけという厳戒態勢だし、図書
  館もスポーツジムも散髪屋も、さらには食事処さえ休業する有様で、これでは家の中でジッと
  して動物園のクマのようにうろうろするか、せいぜい30分の散歩ぐらいしかやることがない。

   お互い鬱陶しくなり家内との会話もタネが尽きて不穏な空気が流れ始める。つまりは家に
  君臨する主婦にとっては、定年を過ぎた小うるさい男なんて濡れ落ち葉で無用の長物、カラ
  っきし意気地のない動物なのである。

   ああ、早く思い切り外出をして好きな遊びをしたい。なのに意地悪なことに外は生憎、天気
  晴朗、5月晴れの好天気ときている。