apx.1221.地球の温暖化現象 第1章へ戻る 目次(第5章)へ
1995年3月28日からベルリンで開かれる,国連気候変動枠組み条約(昨春発効)・第1回締約国会議は,たいへん重要でまた複雑な問題を含んでいる.
第2条によると,最終目的は「気候系に対する危険な人為的干渉を防止する水準で,大気中の温室効果ガスの濃度を安定化すること」つまり,人間が排出する二酸化炭素やメタンなどの温室効果ガスを,これによる気候変動によって重大な被害が出ない程度に,どこかで濃度を一定に抑えようというのである.
そのためにまず,各種の温度効果ガスの排出予測,これによる温暖化や気候変動の予測研究,その悪影響の規模などを明らかにする必要があり,大々的な地球科学研究の動員と,これに立脚した未来予測を行わなくてはいけない.この仕事は1988年末からIPCC(気候変動政府間パネル)という国連の暫定組織が担ってきている.
21世紀末に全地球の平均気温は3℃±1.5℃上昇するという予測は,そのままだというのである.現状では,コンピューター・シミュレーションの計算密度が粗く,個別地域につ確かなことはほっとんど言えない.
しかし一方で,かなりの確度で予測できることもある.二酸化炭素の濃度は毎年1.5 ppmずつ着実に増えており,大気中の濃度をどの水準で抑えるかさえ決めれば,今後排出してよい二酸化炭素の総量は簡単に図示できてしまう.
現在,二酸化炭素の濃度はすでに355 ppmになっている.かりに200年かけて産業革命前(280 ppm)の倍の濃度,550 ppmで安定化されるとしても,21世紀を通してほぼ現在の総排出量の水準に抑えなくてはならない計算になる. 三菱化学生命科学研究所室長 米本昌平
(朝日新聞:1995年4月より抜粋)