4
農業機械化システム 目次(第4章)へ
農業機械化システムは,営農システムの一サブシステムであり,農業経営のなかで,農業機械化システムの役割は大きい.また,作物を栽培する農作業システムのなかで,労働生産性,土地生産性を高め,経営の合理化をはかるには適正な機械を計画的に導入することが大切である.
ここでは主として農作業システムを含むものとしての農業機械化システムについて,論ずることにする.
4.1 機械化の意義と目的
近年わが国の農業の発展には農業の機械化が大きな役割を果たしてきた.
機械化の効果として
1) 労働力不足の機械代替によるコスト低減
2) 適期作業による安定化
3) 作業精度の向上による増収
4) 高能率作業による労働軽減と生活改善
5) 重労働からの解放による健康保持
などがあり,農業機械への過剰投資を単なる経済性の視点のみから論じることはまとはずれであり,上記のような多面的効果を総合的に評価すべきである.
機械化作業システムの目的は,その営農システムの全効果を最大にすることであり,これはつぎの式で表されよう.
B=P−C eq. 4.1
ここで,B:営農システムの効果
P:営農システムの出力(プラス効果)
C:営農システムの入力(マイナス効果)
本来,システムの評価は,社会・自然環境・人間(健康・快適な生活)・経済などの多様な方向から行われるべきであるが,ここでは主として経済面について述べる.
営農システムの経済的出力P(円)は年生産売上高であり,生産量Y(kg),単位重量当り価格p(円/kg),経営面積A(ha),ha当り収量y(kg/ha)とすると,つぎの式で表される.
P=ΣYi ・pi
=ΣAi・yi・pi eq. 4.2
ここで,iは各作物を示し,特定の作物については,つぎの式で表される.
P=A・y・p eq. 4.3
したがって,経営面積,単位収量,農産物価格のいずれかを大きくすれば,総売上高は増加する.
単位収量は,坪刈方式による収量測定で得られるが,水稲の場合つぎのように収量構成要素をもとにして推測することもある.
y =y1・y2・y3・y4・10−4 eq. 4.4
ここで,y :単位収量(kg/ha) y3:1穂えい花数(粒/1穂)
y1:玄米千粒重(g/1,000粒) y4:平均穂数(本/u)
y2:登熟歩合(%)
また,営農システムの経済的入力C(円)は経費であり,地代CL,資本利子Ccのほか第1次生産費としては労働費Cl,農具費Cm,肥料費Cf,薬剤費Cc,土地改良・水利費Ci,動力費Cp,種苗費Csなどがあり,つぎのように表される.
C =[CL+Cc]+Cl+Cm+Cf+Cc+Ci+Cp+Cs+… eq. 4.5
ここでは,年間総経費Cは次式のように年間機械利用経費CYとそれ以外の経費C'からなるとする.
C = CY+C' eq. 4.6
したがって,営農システムの年間経済的利益B(円/年)は,(4.2)(4.5)式からつぎのように表される.
B = A・y・p−(CY+C') eq. 4.7
農業経営の目的は,これを最大にすることであるから,経営面積A,単位収量y,農産物価格pを大きくし,年間機械利用経費CYと,機械経費以外の経費C'を小さくすればよい.CY以外の値が変わらない場合には,これらの生産を保持しながら年間機械利用経費CYを小さくすることが機械化マネージメントの役割となる.
それには,まず,
@ 個々の機械の利用経費の減少をはかることが必要であり,また,
A 農作業システムのなかで過大な能力をもつ機械の利用の合理化をはかり,そのために
A -1) より安価で適当な機械に変える,
A -2) 賃作業を行うなど利用形態を拡大する.
A -3) 機械の共同利用をはかることが必要である.
また,営農システムの拡大をはかるときに,適切な機械を選定し最適な農作業システムを計画立案することが機械化マネージメントのもう一つの大きな役割である.
それには,機械化作業計画を含む営農システムのモデルを作成し,コンピュータシミュレーションなどの手法による,農作業システムの最適化が重要となる.