3.1 生物生産システムのモデル化とシミュレーション     目次(第3章)へ

3.1.1 植物生長モデル

 水稲の収量予測研究は,農業研究機関において広く行われ,その予測式の一例を次に示す.

玄米重Gは,

G = −5.2+1.13M−0.0445(M-Ma)2 +0.201T−0.0112(T-Ta)+0.655S

ここで,M:籾数      Ma:籾数の平均値(34.3*103粒)

     T:登熟歩合    Ta:登熟歩合の平均値(81.9%)

     S:千粒重(21.9g) Ga:玄米重の平均値(61.6kg/a)

 植物は,農業システムにおけるサブシステムのなかで最も重要なものであり,それ自体が一生物体として独立したシステムとして取扱われる場合が多い.ここでは,植物システムのサブシステムと考えられる植物の生長につきそのモデル化の事例を紹介しよう.

 植物生長モデルには,光合成によって固定あるいは消費される「炭素」の蓄積・配分を中心としたものや,「窒素」の動きに重点をおいて各器官の生長をタンパク量,アミノ酸量,糖量の関数として表したものなど多くのモデル化がみられている.

図3.1はその一例で,水稲について34元の連立微分方程式による細胞分裂,細胞分化を含む植物生長モデルである.

図 3.1 植物成長モデルのフローチャート例

 

 このように,植物の生長は多くの細胞が多種類の物質(有機物が多い)の移動・転流を複雑に繰返しており,老化・枯化の現象などその解明が今後に残されているものが多い.

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