2.2 システムのモデル化     目次(第2章)へ

2.2.1 システムのモデル化

 生物生産システムは一般に複雑で大規模であるので全体を直観的な勘のみで理解することはむずかしい.そこで実際のシステムと同様な性質と機能をもつモデル(模型model)を作成し,それを使って実際のシステムを解析し,その挙動を明らかにするシステム工学的手法が用いられる.

2.2.2 モデルの種類

 モデルを大別すると,

@物理的モデル(ハードウェア)と,
A数学的モデル(ソフトウェア)

に分けられ,前者は相似的に縮小したいわゆる模型であり,航空機,船舶,トラクタ,農用作業機の性能実験によく用いられる.

 数学的モデルは,数式や論理を用いたものでコンピュータプログラムとして用いられる.数学的モデルはつぎのように分けられる.

 1) 静的モデルと動的モデル: 前者は時間に関係のない挙動を行うもので,後者はシステムの要素が時間の関数であるものである.
 
2) 解析的モデルとシミュレーションモデル: 前者は線形計画モデルのように計算によって一義的に解が得られるもので,後者は試行錯誤によって解が得られるものである.
 
3) アナログモデルとディジタルモデル: 前者は連続量を取り扱うもので,後者は離散量を対象とするものである.
 
4) 決定論的モデルと確率的モデル: 前者は確定的な考え方で作成したもので,後者は確率的な考え方でモデルを構成する.

 そのほか,図的(グラフ)表現による図的モデル,文章や話し言葉で表現する文章モデルなどがある.

2.2.3 モデルの作成

 物理的モデルの作成(modeling)には,次元解析に基づく無次元項(π項)について実物(prototype)と模型との間で各無次元項の値を等しくして(幾何学的,力学的相似)模型をつくることが基本である.
 また,航空機のコックピットを模擬したいわゆる飛行操縦シミュレータ(
flight simulator)のように,器具や画像等を用いてあたかも実物のような働きを示すものもよく用いられる.
 数学的モデルの作成には,基本的につぎのような手法が用いられる.
 
1) 動的モデルでは,システムの挙動を一定時間刻みで描写する固定時間増分法と,事象の変化があるごとに描写する事象間隔法がある.
 
2) シミュレーションモデルは農業システムでは広く用いられる.実際の農作業体系をちょうどビデオでとったように,時間を軸として論理的文章と数式的表現に整理し,最終的にプログラミング言語で表すものである.
 シミュレーションプログラミング言語としては,連続量を扱う
CSMPContinuous System Modeling Program),DYNAMODynamic Model)や,離散量を扱うGPSSGeneral Purpose Systems Simulator)などのシミュレーション専用言語があるが,生物生産システムのように連続量や離散量が複雑に関連している分野では,FORTRANBASICCなどの汎用言語を用いる方が弾力的にモデルを作成することができる.
 
3) 現在のコンピュータはディジタル型であるので最終的にはディジタル的扱いになるのに対して,アナログ計算機を用いると時間的に連続量として加減算,乗除算,積分などの演算ができ,微分方程式の解などを容易に求めることができる利点がある.一方複雑なモデルの取扱いがむずかしく精度が良くないなどの短所がある.
 
4) 確率的モデルでは,天候のようにまだ十分に解析されていないものに対して乱数などを用いた確率的な演算方法が用いられることが多いが,ある面積を求めることのように本来決定論的なものにも確率的モデルを用いることもできる.後者の例が2.3.3で述べるモンテカルロシミュレーションモデルである.
 
5) 図的モデルには,ブロック線図,フローチャート,ネットワーク,PERT2.4.4.1)などがある.

2.2.4 感度分析

 農業システムのモデルを作成する場合に,実際のシステムの重要な特徴を失わないようにモデル化することが必要である.それには実際のデータをモデルに入力して出力結果が現実と適合するかどうかの実証実験がまず用いられる.
 一方,モデルにおいて入力パラメータの値を変化させ,その影響がモデルの出力にどのように現れるかという分析を行うとそのシステムモデルの構造や機能を理解しやすく,そのモデルの実際への適合度を推定することができる.これをシステムモデルの感度分析(
sensitivity analysis)という.
システムの相対的感度の尺度
Rとしては,次式で示すように各要素x i の微小変化に対する目的関数z = fx 1x 2,・・・,x n)の微小変化の割合で表すことが多い.

   R = (δz/z)/(δx i /x i )                        eq. 2.1

すなわち,ある要素をx i oからε%変化させたときの感度は,

   δx i o/x i o = ε/ 100 であり,  R = (δz/zo)/(ε /100 )     eq. 2.2

ここでで,δz = fx,・・・,x{1+(ε/100)},・・・,x]z 0

感度は敏感すぎないように適度の安定度が要求される.

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