1.3.3 農業     

 

 農業とは何か.きわめて日常的な用語であり,各人がそれぞれの概念をもっているのでことさら討議するまでもないが,スペディング[1]によると「農業とは,主として陸上の植物と動物を計画的に,しかも管理をしながら利用することによって,主として食料と繊維,燃料その他の原料を生産するために行う人間の営み」である.

 したがって,農業システムはこのような農業を全体として一つのシステムとみたものであるといえよう.

 それでは農業の目的とは何か.それには,@個々の農家における農業の目的と,A社会的・国家的レベルでの農業の目的とに分類して考える必要があろう.

 個々の農家における農業では,

 a) 生計維持のための食料生産

 b) 生計維持のための繊維,燃料その他の原料の生産

 c) 生計維持のための家畜,その他の飼育

 d) 家畜飼育のための飼料生産

 e) 労働の対象としての営み

 f) 所有地の有効利用

 g) 生産物の売却による収入 などがあろう.

 また,社会的・国家的レベルでの農業の目的として,

 a) 市民・国民の食料の確保

 b) 市民・国民の繊維・燃料その他の原料の確保

 c) 社会的空間の保持(耕地,草地,林地など)

 d) 治水・空気の浄化等地域内の自然調節機能

 e) 木々の緑,花などの生活環境の提供

 f) 国家の安全保障や社会秩序のための食料その他の保有

など広い範囲の目的が考えられる.

 

 参考:b54133a

 演習問題 1.3.3 参照

次へ


[1] C...スペディング:農業システム論入門,共立出版,1982