最近ツタヤのプレミアム会員になり、ネットでも動画がみられるようになったので、久しぶりにジェラシックパークTを見た。
この作品の目玉は何といっても遺伝子操作で現代に蘇ったティラノザウルスが、大暴れするストーリーにある。
監督がジョーズでデビューしたスティーブン、スピルバークだから面白くない筈がない。映画館、TV、と何度か見たが、流石に息をつかせぬ面白さである。
確か、CGによる本格的な恐竜映画だったと記憶している。ジョーズは実物大の張りぼてを動かしていたから、リアル感が全く違うのは劇場で感動したものだ。
ダチョウのような小型恐竜を捕まるシーンは、今までの鈍重な恐竜のイメージを一新させて話題となった。
そのリアル感はたいしたものだったが、わたしが子供の時から、この恐竜に対して抱いていた疑問はこのシーンでも解決しなかった。
それは、あまりにも小さい前足は、一体何のために使うのかという疑問だった。
映画の捕食シーンでは、巨大な口で獲物を咥えてしまうだけである。猛禽類が獲物を捕獲する場合と変わらない。前足は不要なのだ。
普段は二本脚歩行だから、転んだときは顔を強打してしまうが、貧弱な前足では、とてもこの巨体を支えることはでいない。下手に手を使えばたちまち粉々に砕けてしまうだろう。
かといって、あまりにも短すぎて口にも届かないから、リスやネズミのように獲物を口に持っていくことも出来ない。
まったく日常生活に何の役にも立たないこの前足が何故にあるのか、どの文献にこれといった理由は書いてなかった。
となれば、自分で解決するしかないので、いろいろ考えてみた。
その結果が、ご覧の絵である。
すでに結論が出ているので、その説明に入ろう。
恐竜は全て卵生である。地上最強のティラノザウルスといえど、卵の時は全くの無防備である。
文字通り、手も足も出ないのである。
それで、最近では、両親が互いに卵の世話をしていたのではないかと、言われている。
一般的にワニや、カエルは産みっぱなしである。ところが、恐竜の一部は自分たちで子育てをしたのではないかと言われている。
だとすれば、卵の数はせいぜい二三個だろう。私は5年ほどオオタカの観察をしていたが、食物連鎖の頂点にいる彼らも産む卵の数は二三個である。
一般に強い動物は少ない数しか子供を生まない。大事なものの例えに、虎の子、というのがあるが、トラは一頭しかうまないことから来ているらしい。
ティラノザウルスも少なく生んで大事に育てるという方針なのだろう。真偽はわからないので、この場合はそういうつもりで読んでほしい。
次に彼らの生育環境だが、わたしは映画のような草原ではなく、水辺が彼らの生育環境だったのでないかと思う。
理由は一つしかない。彼らの骨格や筋肉から、あまり長時間の運動に適していなかったという研究結果が最近でてきたことだ。
確かに、重さ5,6トンもある巨体を二本脚だけで長時間走らせるには、よほどしっかりした骨と筋肉が必要だろう。象は巨体だが幸いなことに四本脚歩行であるから、問題ないのであろう。
だとすると、彼らにとって日々の糧は確実の獲物を得られる狭い場所に限定されるはずだ。
以上の理由から、わたしはティラノザウルスが水辺の生き物ではなかったかと、推定した。
まず、彼らの顔の形がワニに似ている。目と鼻が上部に突き出していて、からだの殆どを水中に沈めて獲物を待ち伏せするのに好都合である。
目は閉じていても、嗅覚が優れているので、においで獲物の接近を知ることができるはずだ。
巨体だが、瞬発力はあったのだろう。太い尾は、地上では体のバランスを取るくらいしか役に立たないが、その一振りは強力な推進力になっただろう。
水辺に来た獲物を捕まえるのに、大きな口と歯は巨大なバケットのように役にたっただろう。
ライオンや虎のように狩りをする動物の口は意外に小さい。獲物を仕留めてからゆっくり食べれるので、それほど大きな口は必要ないからだ。
しかし、一発勝負の待ち伏せ型では、最初の一撃で、獲物を捕らえなければならない。
蛇の口が体と比較しても巨大なのを見れば、いかに最初の一撃で獲物を捕らえることが重要か分かる。
一度失敗すれば、周囲の獲物は一瞬にして逃げ去り、当分そこへ獲物がやってくることはないだろう。
彼らも縄張りがあるので、おいそれと場所を移動することはできないし、托卵期ならなおさら、巣を離れることは出来ない。
さて、そろそろ本題だが、極小の前足はどんな時に役立ったのか、具体的な事例を想像してみよう。
平常時に彼らの巣を襲う敵は殆どいない。稀に、空中から翼竜などの攻撃があるかもしれないが、彼らとて、無事卵を襲えたとしても、それを食べている間に、親に襲われては元も子ないので、まずしないだろう。
では、どんな時、彼らは巣の卵を移動しなくてはならないのか。
おそらく、これも彼らの巣が水辺にあることに原因がある。つまり、川の水量が増えて巣が水没する危険が迫った時だろう。
親が獲物を待ち伏せしているのが水中だとすれば、彼らの目線が限りなく水面に近い。それで、どうしても巣を見張るため、巣も水辺の近く場所に造らざるを得ない。
他の動物から巣は守れても、水嵩が上がってきたら、卵が流される前に卵を別の場所に移動させるほかに手はない。
そういう非常時に卵しか抱きかかえられない小さな手の出番である。
それ故、彼らはこの前足を普段は、亀の頭のごとく蛇腹のようにして、胸の筋肉の間に格納していたのではないかと思う。
なぜなら、前にぶらぶらしていては、他の恐竜との闘いで、食いちぎられでもしたら、もはや、卵を守る手立てがなくなってしまうからだ。
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2018年9月16日
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