甲さんから、事故連絡がきた時点では、A代理店は、「他車運転危険補償特約」の適用ができるのではないかと考えました。しかし、保険会社は適用できないとの回答。何故でしょうか。
まず、この特約は、記名被保険者(通常は契約者)・配偶者・同居の親族・別居未婚の子が他人の車(自家用8車種<レンタカ-含む>)を運転中(駐車中・停車中除く)に生じた事故による損害・傷害に対して、契約自動車の契約条件で、
@賠償責任(対人・対物)
A自損傷害(契約自動車に人身傷害補償特約が付保されていない場合・人身傷害の契約自動車搭乗中のみの補償特約が付保されている場合に限る)
B車両損害(契約自動車に車両保険が付保されている場合に限る)
を補償する特約です。
この特約は、契約自動車の記名被保険者(通常は契約者)が個人であることを条件に、自家用8車種の自動車保険契約に自動的にセットされているすぐれもの特約です。
今回の場合は、Bの車両損害に該当するかの問題だったのですが、この特約の約款上の規定はこうなっています。他車運転危険補償特約条項第4条(車両損害に対する特則)です。
「…被保険者が法律上の損害賠償責任(当該他の自動車に直接生じた損害に対する損害賠償責任に限ります)を負担することによって被る損害(以下「車両損害」といいます。)に対して、…保険金を支払います。」
分かりにくい表現になっていますが、要するにこういうことです。この4条は、@まず、借りた車に「損害」が発生したこと。Aそして、その損害は運転をしていたAさんの過失行為によって発生したものであること。以上二点が満たされたとき、この特約が適用できますよ、といっているわけです。
そうすると、今回のガラス破損は、@の要件は満たしますがはたしてAの要件は…? ガラス破損はAさんの過失によって生じたものといえるのか。
つまり、Aさんはこのガラス破損に対して法律上の損害賠償責任(不法行為責任)を負うのか、ということですが、答えはノ-ということになりますね。ガラス損害はAさんの過失責任によって生じたものではなく自然災害的な損害というわけです。
よって、Aの要件が満たされないことになり、この特約は適用できないということになります。Aさんには気の毒な結果となるわけです。
この特約は、もう一点注意しなければならないことは、「駐停車中」の車両損害に対しても適用できないということです(特約条項第3条1項)。駐車中、当て逃げされた。イタズラされた。よくあるケ-スですね。
以上のように、今回の事故ケ-スでは、保険的救済はできないということになりますが、民法の規定により、借りた物は元の状態に戻して返す義務があり、これができないときは債務不履行に基づく損害賠償責任が生ずることになります(民法598条・415条)。
現時点では、債務不履行に基づく損害賠償は「他車運転危険補償特約」の適用対象外となっていますが、これが適用できるとなればこの特約の適用範囲は拡大され、契約者側にとっては大きなメリットということになります。(詳細は各保険会社の約款を参照なされるか、保険会社に直接お問い合わせください)
★自家用8車種
@自家用普通乗用車
A自家用小型乗用車
B自家用軽四輪乗用車
C自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン超2トン以下)
D自家用普通貨物車(最大積載量0.5トン以下)
E自家用小型貨物車
F自家用軽四輪貨物車
Gキャンピング車
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