これでいいのか、警察の物件事故処理




年間約300万件を超える物件交通事故処理の合理化・省力化により、現場警察官の負担軽減を図ることを主たる目的として、一定の要件を満たす物件事故(警察では物損事故のことを「ぶっけんじこ」と呼びます)については、現場における実況見分を省略できる、という通達が平成4年2月1日付で警察庁より各都道府県警察に出されました。(警察庁交通指導課長等通達「物件交通事故処理要領について」)

この通達によれば、現場における実況見分を省略できる物件事故は、以下の要件に該当する場合です。
     

@警察官による現場交通流の回復等緊急の措置を講ずる必要がない場合であること。
A事故の当事者が現場の実況見分を希望せず、当事者が車両とともに警察署・交番等に出頭することが可能な場合であること。 

そして、警察署等に出頭した事故当事者から事情聴取を行った結果、次のいずれかに該当することが判明した場合には、現場における実況見分を省略できず、速やかに現場に臨場して実況見分を行わなければならない職務上の義務が上記通達により事故受理警察官に課せられています。
     
@人身事故に発展するおそれがあるとき
A運転者の交通違反が明白で、違反の立証が必要になったとき
Bその他実況見分を実施する必要があると認めたとき
<Bの具体例>
◆事故当事者が現場見分を要求するとき
◆暴力団関係者が関与する物件事故であるとき
◆当事者間で事後紛議が発生するおそれがあるとき

本来警察官には、たとえ届出事故であっても、客観的かつ明白に立証できる事故を伴う道路交通法違反行為については、検察官に対して書類送致する義務が課せられていますが、実務上はほとんどの物件事故が不送致現場処理でおとがめなしというのが現実の姿です。

違反事故書類送致に伴う事務処理の過重な負担。事故を伴う交通違反については、反則行為として反則切符処理ができない。これらのことが大きな足かせになっていることは事実です。

たとえば、一時停止をしなかった場合には、一時停止違反の反則行為となり反則切符をきられ反則金を納めなければなりませんね。ところが、一時停止違反により事故を起こした場合には反則行為とならないために、反則切符はきれないことになります。

本来は、この一停違反による事故は書類送致しなければならないにもかかわらず、現実には書類送致しないために違反者にはなんらの処分も科せられない。事故を起こしたほうが不利益処分がない。やっぱりこれはどう考えてもおかしなことです。

物件事故に関しては、取り扱い警察官が、事故証明を発行するためのたんなる行政官に堕しているという現実を、関係当局はもっと重く認識しなければならないのではないのかな。事故を起こしても反則行為として反則金を科せることのできる制度の検討、ぜひやるべきだと私は考えています。





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