Q1.加入保険会社が行う事故の際の示談交渉は、契約者の権利や利益を守るために
やってくれるのではないんですか。


残念ながら違うんです。
「被保険者」が事故相手に対して、法律上負担しなければならない損害賠償責任の内容を確定するために被保険者の代理人として示談交渉を行うのです。
ですから、被保険者が事故の際、無過失主張をした場合、保険会社は
保険を使わない意思表示とみなし賠償責任を確定する必要がないとして、積極的に事故相手との事故交渉の場に出て行かないわけです。




Q2.自動車保険に長いこと入っているけど、いまだに契約者・記名被保険者・被保険者の区別
があやふやです。分かりやすく説明してくれませんか。


●契約者
保険会社と自動車保険契約をした人のことです。契約者は、運転免許をもっていない人でもいいんです。

●記名被保険者
契約車(被保険自動車)を主に使用される方、とまず覚えておいてください。その他に、車検証の「所有者」欄に記載されている人も記名被保険者にすることができますが、いずれにしても、自動車保険は、この記名被保険者に基づいて(免許証の色)保険料などが決定されます。
ですから、誰を記名被保険者にするかは、保険料に影響するため大切になってきますね。

●被保険者
自動車保険契約内容の補償を受けられる権利を有する人のことです。
例えば、記名被保険者Aさんの同居の実父は、「家族限定」で契約していれば被保険者となりますが、「本人・配偶者限定」で契約していれば被保険者にはならないことになります。





Q3.保険会社が契約者の権利を守るために示談交渉を代行しているのではないとすると
一体誰が契約者の権利を守るために動いてくれるんですか?


代理店ということになります。

契約者の無過失主張事故において、代理店が契約者に対し、代理店の示談交渉は弁護士法72条に規定する「非弁行為」に該当するおそれがあるからできません。そのために「弁護士特約」に加入していただくのです。
言っていることに間違いはありませんが、こう答える代理店は、まず事故の際、使い物にならない代理店が多いですね。


確かに、契約者の代理人として代理店が行う示談交渉は、弁護士法72条に抵触するおそれがあるとして、各保険会社は例外なく代理店が行ってはならない業務行為の一つとして各代理店に通知しています。
では、どうするか。契約者の「使者」として交渉の場に出て行けばいいんです。事故相手保険会社と交渉するのは、あくまでも契約者。代理店は、契約者の言葉をそのまま伝える使者としての役割に徹すればよいのです。そして、この過程で、当該事故の見通しを判断すればよいのです。訴訟事案とするか。妥協的示談をするか。

契約者の無過失主張事故において、「使者」の役割も果たせない代理店。
それはいないに等しい代理店ということになります。そんな代理店で加入するなら、代理店の存在しない通販型自動車保険に誰だって行きます。代理店手数料を支払わなくていい分、保険料が確実に安くなるから…。






Q4.住宅街を走行していたら、突然大きな衝撃を感じ驚いて急ブレ-キをかけ停車し降りてみたら、
民家の車庫から飛び出してきた車が左後部ドア付近に側面衝突していました。
相手保険会社は、過失割合10対90を提示し、こちらの100ゼロ主張を絶対に認めようとしません。
相手ドライバ-は左右の安全確認を全くしないまま道路に飛び出したことを認めているにもかかわらず、
頑として受け入れず、裁判でもしてくださいと居直る始末です。

車の修理費35万。この事故どう対処すればいいと思いますか…?


「物損事故というのは本来、手間、暇をかけるものではありません。所詮は「モノ」なのですから、「正義」などの出番は無く、適当にかたずけるべきものです。加害者が嘘を言って、事故では多少、トクをしたとしても、そういう人格の加害者は人生をトータルに見れば、プラスマイナスの帳尻はマイナスになっているはず だと考えておけば良いのです。」
これは、ある弁護士が自らのHPで述べている言葉ですが、はたして、事故の被害者はこのように割り切れるものかどうか。所詮他人事だからそういえる、と反論する被害ドライバ-も多いのではないでしょうか。

それにしても、保険会社は100ゼロ事故を簡単には認めないですね。見事なくらいに…。何故なのか…?

そもそも、車同士の事故において、一方の当事者が全面的に過失責任を負わなければならない事故などというものは、特別の例外的事故(追突事故・信号無視事故・反対車線飛び出し事故等)を除いてはありえないのだ、という動かしがたい信仰ともいえる考え方が伝統的にあり、しかも、日常的に大量発生する事故の迅速・簡潔処理という要請上の問題も複雑に絡みあって、法的見地から過失存在の有無を検討するという考え方を、事故担当者の誰一人持ち合わせていないという動かしがたい現実があるということです。

理屈をこねるなら、保険会社には、被保険者の事故相手に対する法律上の損害賠償の内容を確定する義務が課されており、その確定義務は、万人が納得する根拠付けによってなされなければならないにもかかわらず、保険金支払いを少しでも抑制したい等の会社都合の理由付けでなされているのではないか、との疑いを法律の素人である事故相手ドライバ-が感じ取るため、保険会社は、世間から「保険屋」とある種のさげすみの言葉をもって呼ばれているわけです。

「法は不可能を強いるものではない」。この本質を突いた法格言に最も遠い存在が保険会社なのです。
たとえ10%でも過失責任を問われれば、民法709条に規定する「不法行為」を行ったものとされ賠償責任を負わなければならない。何の前触れもなく、民家の車庫から突然飛び出してきた車に側面衝突され、あなたにも10%の過失責任がありますと言われ、たかが物損事故。走行リスク税みたいなものと割り切り簡単に納得するドライバ-が存在するとは私には思えないわけです。私なら間違いなく怒ります。ふざけるな!と…。

この種の事故形態には、最高裁判例が存在しないんです。(高裁判例の有無については未調査)
これが一番の問題点です。上級審の判例が存在しないということは、過去に激しく争った事案がないということ。全て和解で処理されているということです。事故自体は日常的によく発生する事故形態ですから…。
誰かが、リ-ディングケ-スとなる上級審の判例を確立しなければならないということです。幸い、今は「弁護士特約」に加入している契約者が多くなり、損害額と訴訟諸費用との経済的バランスを考えることなく訴訟に踏み切ることが可能になったわけですから、判例確立はそう難しい問題ではなくなったということです。

この種の事故において、保険会社に100ゼロを認めさせるには上級審の判例を確立する以外に絶対的有効な方法はない。これが結論です。





Q5.事故に強い代理店を探そうと思い、いくつかの代理店ホ-ムペ-ジにアクセスしてみましたが、いずれも型にはまった内容のものばかりで個性というものがまるでありません。
せめて、事故に対しどのような姿勢で臨んでいるのか、くらいのことについて自己の見解を述べたホ-ムペ-ジにたどり着きたかったのですが、無駄でした。見栄えはいいが内容が乏しい。これが率直な感想です。
代理店のホ-ムペ-ジは、どうしてこうも個性的内容に乏しいのですか。


代理店のホ-ムペ-ジは、「保険募集文書」とみなされ、そこに掲載される内容は保険会社の厳しい事前点検を受けた上での承認制となつています。
一言でいえば、この厳しい事前点検が、代理店の個性的記載内容を奪っているといっても過言ではないのです。


この事前点検をパスするためには、販売商品の説明に終始していれば無難であり、商品の問題点や改善策まで突っ込んだ独自の見解を契約者のために公表しようとしても、まず、事前点検ではねつけられるでしょう。
例えば、ある保険会社発行の資料によれば、保険会社が代理店のホ-ムペ-ジの作成・管理に介入するのは、「差別的な表現や用語」「公序良俗に反する記載」等の不適切な表現があった場合は、損害賠償請求や使用禁止請求を受けたり、行政処分や刑事処分を課せられたり、社会的信用の失墜につながるおそれがあるからだとしています。

問題は、「差別的な表現や用語」、「その他の不適切な表現」に該当するかどうかの判断の客観的な基準というものを保険会社として具体的に制定しているかどうかということです。これがなければ、その時々の審査責任担当者の個人的・恣意的判断に結果として委ねられるということになるからです。
私の考えるところ、保険会社は、その客観的基準というものを制定していないのではないかと思っています。(知人の代理店に確認したところ、そのような具体的基準資料というものを保険会社から提示された事実はないということでした。)
そのほうが保険会社にとっては都合がいいからです。自らの判断行動を規制するような規定を自ら設ける必然性が無いからだということに尽きると思います。

その結果、どういうことが起ってくるか。多分想像がつくかと思いますが、加入者側にとって有益な情報も保険会社にとって不利益な情報というものは、不適切な表現の名の下にネットでの公開が許されないということが起きてくることは必然だということです。
いま、まさにその現象が起きているのではないのか。代理店のホ-ムペ-ジが如実にそのことを物語っています。見栄えはいいが、内容の乏しい代理店のホ-ムペ-ジ。保険会社という優越的地位にある組織が劣後的地位にある代理店側に対して行なった事前点検という名の実質上の「検閲」の成れの果てが、今あなたが現にご覧になっている代理店のホ-ムペ-ジそのものだといっても過言ではないのです。


保険会社にとって一番厄介な代理店とは、どのような代理店をいうのかお分かりですか?
それは、保険業務に対する鋭い問題意識を持ち、契約者サイドに立って営業活動を行う物言う代理店だということです。
問題意識を持つから→新たな疑問がわき→その疑問の解決策を模索する→模索した結果、さらに新たな問題意識を持つこの繰り返しを実践している代理店こそが、保険会社にとっては取り扱いが厄介な代理店ということになりますが、その反面、契約者側からは支持される代理店となるわけです。

契約者に支持される代理店とは、けっして契約者に「おもねく、媚びる」代理店のことではありません。

場合によっては、契約者側に苦言を呈する代理店でもあるということです。本当の信頼関係を築くためにです。
保険会社と契約者との間には、単に契約関係が有効に存在すれば事足りますが、代理店と契約者との間では、この信頼関係の存在がとても重要になってきます。なぜか…?代理店が契約者側に提供する「付加価値」は、契約上の義務などではなく、まさにこの信頼関係に基づいて提供される性質のものだからです。




Q6.代理店が契約者側に提供する<事故付加価値>サ-ビス。
その具体的内容を教えてくれませんか。

以下のようなサ-ビス提供です。
契約者が、保険料の安くなる通販型自動車保険か、保険料は高くなるが代理店の存在する国内損保保険か、その選択に迷った時は

以下に述べたような事故付加価値サ-ビスを自分は必要とするかどうかで判断すればいいのです。


なお、注意をしなければいけない点は、代理店は事故解決能力において全て同一レベルの存在ではないということです。
このことは、別に代理店に限ったことではなく、どの業界においても同じことだと思いますが…。
では、事故に強い、事故解決力のある代理店をどのようにして見つけるかという問題ですが、これについては、保険会社は、全ての代理店を平等に取り扱い 事故解決能力によって差別することはなく、加入者側に情報提供開示は一切行っていませんから、加入者側としては、友人等の紹介・口コミ等の情報を頼りに面談して判断するしかないというのが現実です。

面談して判断しろといっても、保険の素人に何ができるのかと反論される方も多いと思いますが、この判断の目安としては、「無過失主張事故にどう対応するか」という質問の回答内容で、その実力をほぼ推しはかることが可能です。
契約者の使者として交渉の前面に出て行くと答えることのできる代理店なら、ほぼ安心ですが、代理店の示談交渉は弁護士法に違反するのでできない。弁護士特約を行使して事故解決にあたる、と答える代理店は、事故の際役に立たない代理店の可能性が高いということです。






@加入保険会社が弁護士法の規定により、示談代行ができない無過失主張事故で、契約者側の使者として事故相手側と直接書面交渉するサービスを提供。

このサ-ビス提供が、契約者側にとっては一番の大きなメリットだと思います。
代理店の存在しない通販型自動車保険では、契約者側が受けることのできないサ-ビスですからね。
見方を変えれば、「代理」と「使者」の法的区別さえつかず、交渉力のない代理店は、このもっとも大切なサ-ビスを提供できない代理店ということになり、契約者側にとっては存在価値の希薄な代理店ということになるはずです。

イザというときは「弁護士特約」を行使すればいいではないか。この考えを否定するつもりはありません。
でもよく考えてみてください。弁護士は、電話一本で自宅に気軽に駆けつけてくれるようなそんな身近な存在ですか?違うでしょう。
相談にはいちいち事務所まで出向かなければならない上に、引き受けてくれるかどうかも全て弁護士ペ-ス。
余談になりますが、千葉県千葉市内に事務所を構えるある弁護士に、電車で片道約1時間の距離にある木更津市内に出張事故相談を要請した場合の費用を問い合わせたことがありました。返ってきた回答は、相談料とは別に出張費5万円というものでした。
弁護士という存在が、いかに世間相場の感覚から遊離した存在であるかが、このことだけでも想像がつくでしょう。ある意味、弁護士はいまだに敷居の高い武家商法を行っているのです。

事故交渉において大切な時期は、事故発生の初期段階です。事故事実関係の確認・事故相手の言い分・代車必要の有無等々。弁護士に事故相談している時間的余裕のない事故は、結構多いのです。
初期の段階で代理店が介入することによって、事故解決の見極め・弁護士依頼事故とすべきかどうかの判断が可能となるのです。



A
過失責任割合の修正交渉をサ-ビスとして提供。


事故が発生したとき、加入保険会社は、自分の権利や利益を守ってくれるために相手保険会社と示談代行交渉をしてくれるのだ。こう思っている方がおられたら、それは幻想にすぎないということをはっきりと認識すべきです。
保険会社が被保険者(保険金を請求する権利を持っている人)に代わって示談代行をするのは、「被保険者が法律上負担しなければならない損害賠償の責任の内容を確定するため」に行うのです。約款に明確に書かれています。

そして、その確定のためには、日常的に大量発生する事故を迅速・簡潔に処理する必要から各保険会社が採用している、通称「判例タイムズ」という過失割合判定マニュアル本を用いて、そこに搭載されている各種事故類型図のいずれかに、現実の事故を、原則、事務的・機械的に当てはめて処理していくわけです。
この事務的処理をする上において、現実に発生した事故を個別的・具体的に把握することは迅速・簡潔処理の流れに逆行することになることから、現実の事故を抽象化した事故態様として把握しようとするのが、保険会社のとるべき自然の流れということになるわけです。

現実に発生した事故を、抽象的に把握せざるを得ないのが保険会社の立場。それとは反対に、個別的・具体的に把握しようとするのが加入者側の立場。この相反する立場にいる当事者の一方が、もう一方の立場に立つ側に事故示談交渉を代行させる。保険会社の示談代行とは、このような構図の下で行われているということを認識しておくべきなのです。

以上からお分かりのとおり、「被保険者が法律上負担しなければならない損害賠償の責任の内容の確定」という目的達成のために、保険会社に課せられている示談代行に過度の期待をかけ過失責任の修正交渉を要求しても、その期待に応えるだけの成果はまず期待できないということです。はっきり言えば、事故担当者は、タイムズ適用による事務的処理能力は備わっていても、戦いとしての過失交渉実践能力は無きに等しいということです。くり返しますが、各保険会社の仕事はあくまでも「賠償責任内容の確定」にあるわけですから、タイムズ適用による事務的処理能力が備わってさえいれば、実務上、特段の不都合は生じることはないということです。

保険会社の、この賠償責任内容の確定という代行業務の目的は、互いに同一であり、この点での利害関係は一致しているため、交渉で互いが敵対関係に立ち激しく争うという関係には立たないわけです。
自社の加入者の過失責任が30%から20%に:減少すれば、それだけ会社の損失が軽減されることになるではないか。一つの事故の結果としてミクロ的にみれば確かにそういうことになりますが、マクロ的にみれば、賠償責任内容の確定による事故処理の早期完結がはるかに優先・重要視されるということなのです。



もし、貴方が裏通り住宅街を走行中、民家車庫から車が急に飛び出してきて衝突したという事故を想定してみてください。
この事故を保険会社に任せると、判例タイムズという事故過失割合判定マニュアル本に機械的にあてはめられることによって、過失割合、20(貴方)対80(相手)という数値が瞬時的に導き出されてきます。そして、この結果に異を唱えなければ、この数値のまま確定されて一件落着ということになるわけですね。

「なんで自分にも過失があるの?」。こう異を唱えれば、保険会社事故担当者と修正交渉をすることになるわけです。代理店の存在しないダイレクト保険では、まだ顔も見たこともない担当者と電話連絡の上、この担当者に相手事故担当者との交渉を任せることになるわけですが、立場が変われば、この担当者も常日頃、タイムズの機械的運用をすることによって、事故の迅速・簡潔処理の名の下に大量処理している人間です。かような人物に、発生した現実の事故を個別的・具体的に把握してきめ細かい過失修正交渉を期待するということは、しょせん無理があるというものです。

このような時、事故実践交渉能力にたけた代理店が存在していれば、きめ細かい修正交渉が可能となり、交渉結果によっては、過失割合0対100、0対95 、0対90という示談解決が可能となり、保険を使わない解決ができる場合もでてくるというわけです。


B人身事故に対処するするための各種アドバイスをサ-ビスとして提供。

保険会社は、契約者側が追及される民事責任のみをカバ-する義務しか負っていません。
契約者が、人身事故の加害者の立場に立たされたときは、民事責任のほかに
行政上の責任刑事上の責任を同時に追及されることになります。
これら2つの責任負担は、契約者側にとって極めて影響力の大きい自己負担責任であるにもかかわらず、加入保険会社にとっては、全くの無関心ごとであり、一切の手助けはしてくれないのです。

その時、力になれる存在が代理店なのです。
まず、行政上の責任。この責任は、危険な運転をする゛ライバーを交通の現場から排除するために科せられる責任だと理解してください。人身事故を起こした加害ドライバ-を「再度、事故を発生させるおそれのある危険性の高い運転者」とみなし、違反点の加点により一定の点数以上に達すると、免許停止・免許取消などを行って一定期間、道路交通の現場から排除する行政上の処分ですが、職業によっては、日常生活に重大な影響を及ぼす大きな負担責任となります。
全治2週間以内の比較的軽微な人身事故でも、この責任負担に無関心な保険会社の、「対人保険を使うには人身事故扱いが必要です。」との指示にしたがって警察に人身事故として届け出ると、一体どういうことになるのか。通常、4点以上の行政点が加点され、過去の累積点が2点以上あれば合計6点以上となり免許停止処分は免れないということになるのです。
では、この不利益な処分結果を法に触れることなく回避できる方法はないのか。事故実践にたけた代理店なら、きっといい知恵を貸してくれるはずです。

また、万一、人身事故の加害者の立場に立たされたときは、どのように対処すべきなのでしょうか。
以下に述べるような具体的アドバイスを代理店からもらい、:刑事手続きに関しての今後の全体的な流れを説明してもらえれば、どんなに心強いことか。実際にアドバイスを受けたドライバ-が例外なく認めているところです。

まず、事故現場でドライバ-が一番陥りやすく、かつ盲点となる点は、交通担当の警察官の取調べは、供述調書を作成する段階ではなく、事故現場立会いの段階からすでに始まっていることを忘れてはならないということです。

そんなこと当たり前ではないか。この当たり前のことが、事故により気持ちが動揺している事故直後の現場では当たり前ではなくなってくるのです。
つまり、何を言いたいのかというと、警察官の誘導尋問に安易に応じてはいけないということです。警察官の描く事故状況に供述を合わせる必要はまったくなく、自分が体験した事実をありのまま述べ、それを貫き通すということです。それが、裁判官の言う「供述の一貫性」というものなのです。

そして、被疑者供述調書民事責任の分野にまで後々影響を及ぼしてくるこの調書の作成には、決して妥協してはいけないということです。
「供述調書」は「供述書」とは異なり、警察官が事故当事者の話を聞き取って作成する文書です。
:
納得のいかない文言があれば、必ず加除訂正を求めなければいけません。万一、警察官がこれに応じなければ書名を拒否すればいいのです。納得のいかない供述調書への署名拒否は、憲法上の権利でありいかなる不利益も課せられることはないのです。


C万一の事故に備えて、契約内容を充実した実効性のあるものにするアドバイスの提供。

年間保険料、わずか2,000円弱の「弁護士特約」。この特約を付けることのできなかったミスは、保険知識に乏しい契約者自身にあるというよりも、保険内容についてアドバイスを受けることのできない通販型ダイレクト自動車保険によく見受けられることです。
ダイレクトを選ぶ契約者は、保険料節約のため、可能な限り補償項目を削る方向に目がいってしまいがちですが、その結果、絶対に落としてはならないこの弁護士特約なども、節約の名の下に落とされてしまうことになるわけです。

人身傷害保険の加入を保険料節約のために拒否する加入者…? 時々見かけますが、常に事故を念頭においている代理店なら、「万一の際には、加入者だけでなく代理店もともに苦労することになる」と明確に告げ、契約自体を拒否するに違いありません。契約締結の自由は、加入者だけでなく代理店にもあるわけですからね。

また、重要な特約として「代車特約」があります。車両事故が発生したとき、レンタカー代車を30日間借りられる特約ですが、東京海上日動と三井住友海上の代車特約は、この特約を付帯するメリットは、単にレンタカーを借りられるだけではなく、車両保険を使わなくてもこの特約行使が可能となる上に、「ノーカウント事故扱い」になるというすぐれものなのです。

事故実践にたけた代理店なら、これらの特約は不可欠のものとして理解していますから、付帯漏れなどということは絶対にありえません。契約時において、各特約の内容を分かりやすく説明する能力。この能力が代理店にあってはじめて契約者には、各種特約選択のための基礎資料の提示がなされたことになるのです。したがって、この提示説明・説得能力のない代理店は、事故の際にも役に立たない代理店と理解してほぼ間違いのないところです。


D人身事故における後遺障害等級認定申請をメリットのある被害者請求するお手伝いサ-ビスの提供

事故で負傷し医療機関で治療を始めた場合、必ず次のいずれかの状態を迎えることになり、保険的見地からの傷害治療は完了したことになって、対人保険等による治療費の支払いはストップするということになります。治療がうまくいき完治するか、症状固定(治療による症状の改善が見られなくなった状態)となるか。

症状固定の診断を医師から受けると、治療行為で治しきれなかった症状について、担当医に後遺障害診断書を作成してもらい、この診断書その他の医証(検査結果資料、レントゲン・MRI・CT等の画像)を、
@一括保険会社(治療費等を、自賠責保険の分も任意保険と一括して支払っていた加害者が加入している任意保険会社)、またはA自賠責保険会社(加害者が加入していた自賠責保険会社)に提出すると、損害保険料率算出機構の自賠責損害調査事務所に送られ、これらの医証だけで後遺障害等級認定が行われるという流れになります。

@とAのいずれの保険会社に診断書等を提出しても、行き着くところは自賠責損害調査事務所。だったらどちらに出しても同じではないか。そう思うのは当然の話ですが、実は大きな違いが生じてくるのです。ちなみに、診断書等の医証を、@の加害者加入の任意保険会社に提出して調査事務所に申請する方法を「事前認定」と呼び、Aの加害者加入の自賠責保険会社に提出して調査事務所に申請する方法を「被害者請求」と呼んでいます。

どちらの方法が被害者にとってメリットがあるか。このことを明確に説明しているのが「交通事故110番」です。

事前認定では、「主治医の作成した後遺障害診断書に顧問医の意見書を添付し、等級を薄めにかかる?被害者の分からないところで公然と行われています。」と説明されています。

後遺障害等級の認定を受けたとき、「事前認定」では、示談が成立しない限り後遺障害保険金は被害者の手元に入らないが、「被害者請求」では、被害者の口座にすぐに入金されるという違いがあるなどということは、どの後遺障害サイトにも説明されていますからご存知の方も多いと思いますが、なんといっても一番の大きな違いは、自動車損害賠償保障法(自賠法)16条の4、16条の5規定適用の有無にあるのだと思います。

「事前認定」では適用されないが、「被害者請求」では適用されるということです。


このことを明確に指摘しているのは、私の知る限り、後遺障害サイト「事故110番」だけで、次のように記述しています。
「自賠責保険は、自賠法16条の4に基づき、遅滞なく、『支払わない場合の書面の交付』を行わなければなりません。それでも説明が不十分な場合、被害者は自賠法16条の5を発動、『書面による説明』を文書で求めれば、1ケ月以内に、理由の詳細を文書で通知しなければならないことになっています。……被害者はこの制度を有効利用しなければなりません。参考までに、事前認定では、この縛りは一切ないのです。」

後遺障害の申請は、必ず、「被害者請求」で…。このことを実践ないしはアドバイスしている代理店は意外と少ないのです。


E保険会社が事故による損害と認めない、車両の格落ち損害(評価損)請求交渉をサ-ビスとして提供。

事故によるクルマ自体の損害は修理することによって原状回復がなされるが、財産としてのクルマの損害(市場における交換価値の減少)は、修理によってもなお回復されない損害であるとの認識をもつ代理店で加入していれば、その損害回復請求交渉を担当代理店を通してすることが可能となるわけです。


F全損被害事故において、保険会社が事故による事故損害と認めない「原状回復諸費用」(車両買換え諸費用)請求交渉をサ-ビスとして提供。

「○○様の廃車及び代替車購入に伴う諸費用につきましては、事故がなくても次の買換えの際にいずれ必要となるものですから、原則として賠償の対象にはなりません。ご了解ください。」

これは、全損時、車買換え諸費用を請求した保険会社からの回答文書の一部です。
この文言から、保険会社が、全損時の車買換え諸費用を事故による損害と認めていないことが分かります。

でも、よく考えてみください。車は自転車などと違って、時価相当額を賠償してもらっただけでは、事故前と同じように道路上を自由に乗り回すことはできませんね。代替車を事故前と同じように自由に乗り回すことができるようにするためには、法律で定められた各種の手続き等を踏まなければいけません。
そのためにかかった費用の補償。すなわち、事故前と同じように自由に車を乗り回せることができる状態にしてもらって、はじめて事故による損害が回復されたことになるのです。

この「原状回復費用」は明らかに事故による損害であり、判例も認めるところです。
にもかかわらず、保険会社は上述のような理屈を並び立てて、当然のごとく拒否してくるのです。情けないかな、少しでもゼニを払いたくないという「保険屋」根性丸出しというわけです。
加入者が事故相手に与えた法的に正当と認められる損害は、誠意を持って迅速に賠償するという社会的使命を果たさなければならない。それが「保険会社」の本来あるべき姿なのですが、事故賠償の現場で時折さらけ出す次元の低い浅ましき商売人としての姿を見せつけられると、「保険屋」から真の「保険会社」に脱皮することは、そうたやすい道のりではないという感を強くするのです。

結論。事故実践にたけた代理店が介在していれば、被害者が、事故による正当な損害として買換え諸費用を請求することは容易となるでしょう。


G「紛争処理センタ-」への、裁判所基準による慰謝料請求の斡旋申込み手続きをサ-ビスとして提供

この慰謝料問題も、裁判所基準は何も特別の基準ではなく、国の認めた一般的基準との認識が広く浸透するに及んで、今後、この基準での請求が常態化してくるものとにらんでいます。
現に、「交通事故紛争処理センタ-」に持ち込めば、確実に裁判所基準での請求を認めてくれますので、紛争処理センタ-への示談斡旋申込み手続きのお手伝いも、事故実践にたけた代理店なら容易なこととなるでしょう。

たとえ自賠責支払限度内で治療を終えた被害事故であっても、加害者が一度たりとも見舞いの電話をよこすこともなく、すべて保険会社任せのような場合は、慰謝料請求加算要素として、「交通事故紛争処理センタ-」に斡旋申込みをすべきです。もちろん、センターへ代理人として出向いてもらうのは、「弁護士特約」利用による弁護士ということになります


H被害事故によるレンタカー代車費用請求をサ-ビスとして提供。

各保険会社は、まるで判を押したように、100ゼロ事故以外は、「代車は出ません。」といって代車請求を拒否してきます。この「代車は出ません」という意味は、正しくは、「代車という現物は提供できません」という意味なのですが、そんなかみ砕いた説明を保険会社は、意図的に、することはまずありません。ですから、多くのドライバ-は、こちらにも過失があるときは、「代車料」を
含めた意味での「代車」は出ないんだと素直に納得し、あきらめてしまうのです。

事故相手にも過失があるときは、「代車」という現物は提供できないという意味で「代車は出ません」と事故担当者が言ったとすれば、それ自体は間違いではないでしょう。しかし、レベルの低い担当者の中には、過失があるときには「代車料」も出ません、と確信的に言っている場合が多々あり、この場合には、何の法的根拠もなく法的には明らかに間違っています。「判例を提示してくれませんか」。この一言でケリがつきます。
この法律上何の根拠もない拒否回答に対応する措置を契約者のために行うのが、事故にたけた代理店の存在です


I代車特約等を利用した100ゼロ交渉をサ-ビスとして提供。

各保険会社によって特約の内容が異なりますが、あなたの加入しているレンタカ-代車特約等が、特約行使しても「ノ-カウント事故扱い」になる場合には、そのメリットを最大限利用しない手はありません。

例えば、相手保険会社がこちらの主張する100ゼロ解決をどうしても認めず、あくまで10対90を主張して譲らない事故が発生したとします。
この場合、事故対応力のある代理店は、あなたの使者として相手保険会社と交渉に入り、あなたの提示案を次のように伝えることになります。
「こちらの10%過失責任をどうしても譲らないのであれば、損害賠償の原則に従って、レンタカ-費用の90%を請求することになる。ただし、100ゼロを認めるのであれば、この請求は放棄することにしたい。どちらを選択するか回答願いたい。」

この提示案に相手がどういう反応を示してくるかです。
10%過失追及にあくまで固執してレンタカ-費用の90%を支払うか。100ゼロ解決を認めてレンタカ-費用の90%支払いを免れるか。どちらの選択が会社にとって得策か、二者択一の問題になるということです。

こちらにとっても、車両保険を使わなければ、レンタカ-費用を保険で全額支払ってもノ-カウント事故ということになり、割引等級になんら影響は出てきませんから、100ゼロ解決にこだわる理由は大いにあるというわけです。

ちなみに、レンタカ-代車特約を単独で行使することができ、しかも、割引等級に何ら影響のないノ-カウント事故となる優れもの特約としているのは、私が現時点(2010年7月)で知る限りでは、
@東京海上日動 A三井住友海上だけでした。






Q7.人身傷害保険は対人保険の弱点をカバ-する保険だということですが、
分かりやすく説明してくれませんか。


対人保険(正式名称は、「対人賠償責任保険」)は、契約車を誰が運転していたかによって、保険金が支払われる人と支払われない人とが出てきます。
例えば、契約者(=記名被保険者)が、奥さんを助手席に、友人夫妻を後部座席に乗せて運転中、単独人身事故を起こしたとします。
この場合、自動車約款「賠償責任条項」に規定する対人保険金を支払わない場合の@記名被保険者A契約車を運転中の者の配偶者に該当する
契約者助手席の妻には対人保険金は支払われないということになります。

では、契約者の友人が契約者に代って運手し、助手席にその妻、後部座席に契約者夫妻が同乗中、単独人身事故を起こした場合はどうなるでしょうか。この場合は、同じく対人保険金を支払わない@記名被保険者A契約車を運転中の者B運転中の者の配偶者に該当する、後部座席にいた契約者の奥さん以外の3人には、対人保険は支払われないことになります。

一方、人身傷害保険は、記名被保険者・その配偶者等だけでなく、契約車に搭乗中の者も保険金支払いの対象となりますから、対人保険が支払われない人もこの保険でカバ-できることになるわけです。





Q8.東京海上日動は、2010年7月からの商品改定により、自動車保険の主力商品である「ト-タルアシスト」で搭乗者傷保険を廃止するとのことですが、加入者側にとって、どんな不利益が生じると考えておけばいいのですか?



搭乗者傷害保険は、保険金額1千万円で契約している場合が通常ですから、万一、死亡事故の時、1名1,000万円支払われる死亡保険金が確実に支払われなくなるということです。

しかし、契約者側にとって一番痛いのは、「後遺障害保険金」が支払われなくなるということではないでしょうか。
この「後遺障害保険金」というのは、事故発生の日からその日を含めて180日以内に後遺障害が生じた場合に支払われる保険金のことです。
例えば、搭乗者傷害保険に1千万円で加入している人が、14等級の認定を受ければ、1,000万円×4%=40万円が支払われます。12等級なら、1,000万円×10%=100万円。10等級なら、1,000万円×20%=200万円。8等級なら、1,000万円×34%=340万円。1等級なら、1,000万円×100%=1,000万円といった具合です。

死亡事故は、そうやたらと発生することはありませんが、後遺障害事故は、ある程度の確率で発生する、けっしてめずらしい事故ではありませんから、この保険金がまったく支払われることがなくなるというのは、加入者側にとってはかなりの痛手となるということです。 
等級認定を受けさえすれば、加入保険会社に請求することによって簡単に貰えていたものが貰えなくなるということですからね。

廃止が行われる7月以降は、搭乗者傷害保険を販売している他社と比べて大きく見劣りする商品内容になるということです。
東京海上日動は、他社も追従するとの見込みのもと決断をしたのでしょうが、ただでさえ、保険料に敏感になっているドライバ-が、商品内容の質的低下(その割には、保険料が思ったほど安くならないという実感。また、同時に行われる等級プロテクト特約などの保険料値上げにより、ケ-スによっては、改定前の前年度保険料よりも、逆に高くなるという現象。)に見切りをつけて他社に移動する可能性は否定できないということです。
代理店の努力にも限界というものがありますからね。

果たして他社も東京海上日動に追従し、いつの時点で搭乗者傷害保険を売り止めとするか。興味のあるところです。
そして、気になるのは、通販型自動車保険の動きです。
事故確率の低い優良ドライバ-を多く取り込んでいるといわれている通販型自動車保険が、国内損保保険会社が販売する自動車保険商品の質的低下をチャンスと捉えて、搭乗者傷害保険の販売を維持継続するということになると、少なからず影響が出てくると見ています。保険料が安い上に、一定の品質を確保しているという好印象をドライバ-側に与えることになるからです。
国内損保保険会社は、通販型自動車保険をいつまでも軽く見ていてはいけないのではないのかな現に、現時点でも、国内損保会社の商品内容よりも一歩上を行く優れた商品を一部販売していますからね。加入者側の目線に立って……。(2010.5)




Q9.同じく、東京海上日動は、2010年7月からの商品改定で、人身傷害保険において、人身傷害に関する「交通事故危険補償特約」も廃止されるとのことですが、加入者にとってどのような不利益が生じるのですか。


交通事故危険補償特約は、ト-タルアシストに加入すると自動付帯で、しかも保険補償の対象となる身近な負傷事故が数多く含まれているため、この特約が廃止されるのは、加入者側にとってはかなりの不利益が生じるということです。

具体的な例で説明することにしましょう。
7月の商品改定までは、被保険者が以下の乗り物に搭乗しているときの負傷事故に対して保険金が支払われます。

●汽車・電車・モノレ-ル等 ●自転車・身体障害者用車いす・ベビ-カ- ●飛行機・ヘリコプタ- ●船舶・ヨット・モ-タ-ボ-ト・水上バイク・ボ-ト・カヌ- ●エレベ-タ-・エスカレ-タ-・動く歩道…等

ですから、お子さんが自転車搭乗中に転倒してケガした場合やご主人が通勤の際に満員電車で押されてケガをした場合・停車中の自動車でお茶をこぼしてやけどをした場合などにも保険金が支払われるということです。
また、この他に、建物火災による負傷・歩行中にお店で起きたガス爆発事故でケガをした場合等も保険補償の対象です。

いかがですか。よく、逃がした魚は大きいといわれますが、失う保険的メリットは大きいということです。特約保険料を払う必要はない自動付帯の保険的恩恵ですからね。
商品の質的低下。実質的な保険料の値上げを意味するということです。






Q10.A子さんは、朝の通勤時、軽自動車を運転して片側一車線(幅員3メ-トル)の道路を時速40キロで走行していました。ある丁字路交差点にさしかかった際、対面する信号機の色が青色だったのでそのままの速度で通過しようとしたところ、左方交差道路から乗用車がいきなり左折侵入してきて衝突する交通事故が発生しました。
路地から進入してきた乗用車側には、歩行者用の押しポタン式信号機があるのみでしたので、乗用車からみれば、進行が規制される対面信号機がないということになり、事故の発生した当該交差点は、信号機により交通整理が行われていない交差点ということになります。
相手車は影も形もない状態からのいきなりの飛び出しです。一方のA子さんにとっては、青色信号に従っての交差点通過時の降って沸いたような突然の事故。この事故を、加入保険会社に事故連絡を入れ、相手保険会社との示談交渉を任せたら、一体どのような結論が導き出されることになるのでしょうか。


この事故の解決を加入保険会社に全面的に任せると、保険会社は何の迷いも無く、「判例タイムズ」95図を適用し相手保険会社事故担当者と示談交渉に入り、10(A子さん)対90(相手)で過失割合が決まりましたと報告してきます。何のことはない、ただ95図を当てはめただけで、交渉とは名ばかりで、判例タイムズを機械的に適用したにすぎないわけです。何も分からないドライバ-、何の問題意識も持たない代理店なら、これですんなり解決ということになるのです。

そんなバカな。事故回避不可能な事故ではないかと抗議の声をあげたとき、はじめて加入保険担当者は、この抗議に耳を傾け95図に掲載されている過失割合修正要素の一つである「左折侵入車の著しい過失」(脇見運転等前方不注視の著しい場合等)に該当するから、過失10%を左折車に加算するよう相手保険会社事故担当者に申し入れることになります。

結果は、はじめから分かっています。相手保険会社担当者からは、次のような回答が返ってくるに違いありません。
「契約者に事故状況の説明を求めたところ、設置ミラ-で相手車が進行してくることは確認していたが、先にいけると判断して交差点内に左折進入してしまった、自分の判断ミスだと説明している。したがって、この判断ミスは基本過失割合の中に織り込み済みであり、修正要素『著しい過失』に該当するものとは考えておりません。」。

この回答が返ってきた段階で後は何を言っても、いたずらに時間だけを浪費するという状態に陥り、事実上の交渉は打ち切りということになります。
これが保険実務の実態なのです。この現実を直視し、実質的に事故回避不可能な事故、したがって無過失事故において、当然のごとく無過失をかち取るために活動している代理店。残念ながら、その存在は多くはありません。その一方で、「双方ともに動いている以上、お互い過失責任は生じるものなのです」などと、何の理論的説明もすることなく、さももっともらしく加入者を説得している代理店は、数多く存在しますが…。

何の違和感もなく流れ作業的に判例タイムズの機械的運用によって日常的に大量発生する事故を処理していく保険会社事故担当者、そして、少しの問題意識も持つことなく無条件に事故解決を保険会社に委ねる代理店に対し、不可能なところに法的義務は存在するはずもないという意味での
「法は不可能を強いるものではない」との法格言を、いくら強調しても強調しすぎることはないのです。




Q11.事故態様・事故類型ごとに「判例タイムズ」に記載されている基本過失割合の数値。この数値は、相手保険会社と事故交渉をする際、現実の事故に適応するように柔軟に修正することは可能なの。

もちろん可能です。
タイムズ筆者は冒頭1頁で、「四輪車同士の事故の『過失相殺率』は、若干の修正を除き、『過失割合』と同一といってよい。」と述べた上で、引続き、「…もとより、個々の事案に沿った柔軟な解決が望まれるのであり、過失相殺率の認定基準の画一的な運用は避けるべきである。」と述べているからです。


具体的な例をあげて説明をしましょう。
よくある事故態様として、駐車場内の走行通路を走っていたら、白線駐車スペ-ス内に駐車していた車が突然走行通路に発進してきて事故になった、というのがあります。過失割合において、よくもめる事故の代表的なものの一つですね。

昭和56年7月14日の名古屋高裁判決は、駐車場内の駐車位置を示す区画線によって仕切られた部分は、一般交通の用に供するその他の場所ということが困難であるから道路ではないが、駐車位置区画線のない通路部分は、不特定多数の人ないし車両等が自由に通行できる客観的状況にあると認められるから、道路交通法にいう道路に該当すると明確に判示しています。

この判決に従えば、駐車
区画線内から飛び出して通路部分走行中の車両に衝突した事故態様には、判例タイムズ100図を適用し、基本過失割合20対80から交渉を始めることになります。
しかし、この100図の基本過失割合20対80について、タイムズ筆者は次のような説明を加えています。
「基本割合においては道路外出入車が法定の合図等を履行していることを前提として直進車に軽度の前方注視義務違反があることを含んでいる。」


つまり、路外からの道路侵入車が予め進入のための合図等を履行していたにもかかわらず、道路進行車が気づかなかったということを含んだうえでの基本割合であるということをタイムズ筆者は説明しているわけです。
だとするならば、通過直前、何の前触れもなく区画線内から突然発進してきた車に衝突された通路走行車の運転者が
軽度の前方注視義務違反すらなかったのであるから、相手に対して、まず、基本過失割合を10対90に修正して交渉を始めたいと申し出るのは、ごく自然な論理的流れであって当然の要求だといえると思います。

この申し出要求に現実の実務事故担当者はなんと回答してきたか。
「判例タイムズの基本過失割合は、法的な裁判により解決された事案を集約したものと考えます。裁判官ではありませんので基本過失割合自体を修正しての考え方はできかねます。」。

せっかく裁判官であるタイムズ筆者が、タイムズ誌に記載された基本過失割合は絶対的なものではないのだから、現実に発生した事故に沿って柔軟に対応すべきと説明しているにもかかわらず、タイムズ誌を運用する現実の事故担当者がその趣旨を理解せず、いや無視して、あくまでも自社に有利な方向での解決に固執し、硬直的な考え方に終始しているわけです。これが事故交渉実務の実態で、そこには論理性のかけらも見当たらないということです。