示談交渉の切り札的存在となりうるすぐれもの特約。
「レンタカ-代車特約」の付加価値について考える。




太郎

今回は、お茶でも飲みながら気楽に語り合える話題ということで、いわゆる「代車特約」というものを取り上げてみることにしました。
花子さん。まず、この特約の内容について大まかなところを説明していただけませんか。

花子
分かりました。まずこの特約は、各保険会社によって正式名称は様々です。たとえば、東京海上日動は「事故・故障時レンタカ-費用補償特約」と呼んでいますし、ソニ-損保は、「代車等費用担保特約」と約款に規定しています。
また、この特約の具体的内容は、保険会社によってまちまちだと思われますが、基本的には、車両保険加入を前提として付帯できる特約であり、車両保険適用事故が発生したことを特約行使要件としている点は、どの保険会社も同じだといえます。

太郎
当然のことながら、この特約に加入することになるとその分保険料が高くなることから、この特約を付けない多くの契約者は、万一の時には、修理業者から代車はサ-ビスで借りられるから代車特約は必要ないといいますよね。
この言い分自体は、これはこれで何ら間違いではないのですが、この代車特約に加入していることが示談交渉時の切り札的存在になりうるということを契約者が認識したら、この特約に対する考え方も大きく変わるのではないかと思われるのです。

花子
私も正直言って、太郎さんの口から、代車特約は示談交渉時の切り札的存在という言葉を聞くまで、この特約は単純に車両事故の際にレンタカ-を代車として借りられる特約と考えていましたから、この特約が、示談交渉時の切り札となる可能性があるなどという考えは思いもよりませんでした。
ですから、太郎さんの説明を楽しみにしているところです。

太郎
これからの説明は、東京海上日動の約款に基づいてしていきますから、そのつもりで聞いてくださいね。
東海の約款では、ます、この特約は車両保険に入らなければ付帯できない特約ではあるが、車両保険を使うことを特約行使の前提要件とはしていないということです。
東海の場合、契約車両が故障して修理業者に入庫したときもこの特約が使えることになっていますから、車両保険行使を前提としていないのではないかと思われます。

花子

なるほど。車両保険を使わなくても代車特約は行使できるということなんですね。
でも、そのことによってどんなメリットが出てくるのか、まだよく理解できませんが…。

太郎
ではつぎに、車両保険を使わない
この特約の単独行使はノ-カウント事故になるとの約款規定はどうでしょうか。
少しは分かってきましたか…(笑)

花子
……?

太郎
では、花子さん。従来の示談交渉のやり方を振り返ってみましょう。
つい最近まで、各保険会社は「あなたにも過失がある以上代車は出ません」と、法律上なんの合理的根拠もないのに、いやにはっきりと拒否していましたね。

そうなると、たとえば過失割合10対90の主張を譲らない相手保険会社に対して、自らレンタカ-を借りて代金を一旦自らが支払った後、相手の過失責任分(90%)を請求するなどという手法を積極的にとる契約者は少なく、結局のところ、修理業者から無料の代車を借りて一件落着というケ-スが圧倒的に多かったのではないかと思います。つまり、相手保険会社は、法律上当然に支払わなければならない過失責任分の代車費用を正当な理由もなく免れていたということです。

また、代車特約も最近までその行使は保険事故とみなされていたことから、行使を躊躇する契約者は圧倒的に多かったはずです。
たかだか10%の過失責任のために、割引等級を3等級下げてまでレンタカ-代車費用の10%負担分を代車特約行使によってまかなうなどということは、大半の契約者がためらうのは当然のことですからね。

花子

いま、やっと分かりました。代車特約は独立に行使できる特約で、しかもノ-カウント事故扱いになるという本当の意味が…。

こちら側に10%の過失責任を主張する相手保険会社に対して、100ゼロを認めるなら代車費用は請求しないと条件付の交渉ができるということですね。

そして、代車は、割引等級にはなんの影響もなく、保険事故とならない代車特約を行使することによってレンタカ-を借りればいいんですね。



太郎
そのとおりです。相手保険会社担当者に対して、あくまで10対90での解決にこだわって90%の過失責任分代車費用を支払うか。100ゼロでの解決に応じて代車費用90%の支払いを免れるかの二者択一を迫ることが可能となるということです。


花子

いままで何気ない特約だと思っていた「代車特約」。
今回は太郎さんのおかげでこの特約加入の重要性を再認識することができました。


太郎
最後に重要なことを指摘しておくことを忘れていました。
「代車特約」は、@車両保険とセットではなく、単独行使することが可能A行使しても保険事故にはならず、
ノ-カウント事故である、というこの2つの重要ポイントは、各保険会社共通に存在するポイントではないということに注意しなければならないということです。

現時点では、国内損保、●東京海上日動●三井住友海上には@Aのポイントが存在するが、●損保ジャパン●AIUには存在しない。また、●ニッセイ同和には、@のポイントは存在するがAのポイントは存在せず、特約行使は「等級すえ置き事故」になる ことを調査確認済みです。
つぎにダイレクト保険である、●「通販型自動車保険売上げ
N0.1」と宣言するソニ-損保●「顧客満足度総合NO1」をうたうチュ-リッヒ自動車保険には、この@Aいずれのポイントも約款上存在しないことを確認済みです。

ですから、「代車特約」を付ける場合、保険会社に、この@Aの重要ポイントが存在するかどうか確認する必要があるということです。

花子
分かりました。太郎さん、本日はありがとうございました。(2009.9.11)