フォルクロリスタ FOLKLORISTA 〜民間伝承実践者
木下尊惇は、世界的なチャランゴの巨匠エルネスト・カブールに見いだされ、19歳で、単身ボリビアに渡りました。E.カブールは、チャランゴの現代的奏法を確立したのみならず、アンデス・フォルクローレのアンサンブル形式を築き上げたひとりでもあります。
E.カブールの音楽の礎には、「フォルクロリスタ〜民間伝承実践者」という哲学があります。「民衆の日常を離れて、音楽の存在はあり得ない」というこの思想は、フォルクローレと呼ばれる音楽の性質を、そのまま代弁していると言えるでしょう。
木下尊惇は、E.カブールが認める「フォルクロリスタ」の数少ない継承者のひとりです。4年間ほぼ毎日、E.カブールのギタリストとして舞台に立ち、共に伝承音楽の採集調査に力を注いできました。公私にわたる家族のような付き合いを通じて、E.カブールは木下に、「フォルクロリスタ思想の継承」を行ったのです。
現代社会において、音楽は必要以上に商品化されています。売るためだけに作られた、耳あたりの良い音楽は、一瞬の快楽をもたらしますが、あとは産業廃棄物となってしまいます。そこには民衆の意志も行動もなく、生活も伴いません。生活の力であるはずの音楽が、生活を消耗させてゆく姿は、決して良いことだとは思えません。
「音楽を生活者(民衆)の手に取り戻す」これが現代のフォルクロリスタに課せられた使命のひとつだと、木下尊惇は考えています。この時初めて、「音楽によって世界が動くのだ」と、かたく信じて、音楽を奏で続けているのです。