不法占拠している旧寺院建物に「占有回収の訴」を提起した秋山徳道


ayapanayapan1810さん
正信会が管理している三重県松阪市の正福寺は 新しい正信会の寺院を建立して引っ越したために無人になって日蓮正宗側で取り戻しのために裁判を起こしたが敗訴となったようですが
詳しくわかる方はいらっしゃいますか?

たかぼんより
これは現在の正福寺(昭和55年10月落慶)ではなく旧正福寺(昭和34年建立)の占有を巡る訴訟で
元住職秋山徳道が宗門側の当時の登記簿上の正福寺住職國井位道師を訴えたものです。
最高裁判所は秋山の訴えを認める不当判決を下しましたが、
これは秋山の所有権を認めたものではありません。
従って秋山が死亡すれば現在の正福寺ともども日蓮正宗に返還されることになります。


編集日時:2009/8/16 12:44:22
回答日時:2009/8/16 12:37:51

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1429482854


最高裁判決平成12年1月31日裁時1261号1頁

(判例要旨)集民196号
秋山徳道が、宗教法人正福寺の代表者(住職)として寺院の土地建物の所有を開始した後に,正福寺を包括する宗教団体日蓮正宗から僧籍はく奪の処分である擯斥処分を受けたが、
正福寺の後任住職から提起された訴訟において、右処分の効力を争うとともに右土地建物の管理を続け、
正福寺の後任住職との間の右建物の撤去についての話合いの際にも、撤去後の土地の占有係属を主張していたなど判示の事実関係の下においては、
秋山徳道が個人のためにも右土地建物を所持していたものと認めるべき特段の事情があるということができ、
秋山徳道は、右土地建物の占有を奪ってこれを占有している正福寺の後任住職に対して占有回収の訴えによりその返還を求めることができる。


主文
原判決を破棄する。
被上告人(正福寺・当時の住職國井位道師)の控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人の負担とする。


理由

上告代理人小見山繁、同河合怜、同片井輝夫、同仲田哲、同竹之内明の上告受理申立て理由第3の2、第4及び第5について

一 本件は、被上告人(正福寺・当時の住職國井位道師)によって土地及び建物の占有を侵奪されたとする上告人(秋山徳道)が被上告人に対して民法200条に基づきその返還を求めている事件である。原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 被上告人は、宗教法人日蓮正宗の被包括宗教法人であるところ、被上告人の宗教法人正福寺規則では、「代表役員は、日蓮正宗の規程によってこの寺院の住職の職にある者をもって充てる。」と規定している(同規則8条1項)。
2 上告人は、昭和41年8月16日、当時の日蓮正宗の管長細井日達(上人)から被上告人の住職に任命され、同時に前記規則により被上告人の代表役員となって、被上告人所有に係る第一審判決別紙物件目録記載の土地建物(以下「旧寺院」という。)に対する管理、所持を開始した。
3 上告人は、昭和55年10月に被上告人が三重県松阪市下村町西之庄838番地3に新寺院を建立したことに伴い、それまで居住していた旧寺院建物から新寺院建物に転居したが、その後も、月に1、2度旧寺院に赴いて風通しのために窓を開閉したり、年2回敷地の草刈りを行ったり、旧寺院の近隣住民に何かあったら連絡するよう依頼するなどして、旧寺院を空き家のまま管理していた。
4 日蓮正宗の管長阿部日顕(上人)は、昭和57年2月5日、上告人が教義上の異説を唱えたとして上告人を僧籍はく奪処分である擯斥処分に付するとともに、上告人の後任として八木勝道を被上告人の住職に任命し、さらに昭和60年9月26日、その後任住職に國井位道を任命した。
5 被上告人は、上告人が擯斥処分を受けて日蓮正宗の僧籍を失うと同時に被上告人の住職及び代表役員の地位を失い、新寺院建物を占有使用する権原を喪失したとの理由により、上告人に対して新寺院建物の明渡しを求める訴訟を提起し、これに対して上告人は、擯斥処分が無効であるとして、上告人が被上告人の代表役員・責任役員の地位にあることの確認を求める訴訟を提起し、両事件は併合して審理された(以下、両事件を併せて「別件訴訟」という。)。なお、被上告人は、当時上告人が新寺院建物に居住していたため、別件訴訟においては、新寺院建物についてのみ明渡しを求め、旧寺院を明渡請求の対象とはしていなかった。
別件訴訟については、平成2年3月8日、双方の訴えをいずれも法律上の争訟に当たらないことを理由に不適法として却下する旨の第一審判決が言い渡された。上告人と被上告人は、右第一審判決に対してそれぞれ控訴、上告を提起したが、いずれも棄却されて、平成5年7月20日に右第一審判決が確定した。
6 上告人は、旧寺院の管理のため、昭和60年春ころ、檀徒であるNを旧寺院建物に居住させ、昭和62年5月に同人が転居したため、檀徒であるKを旧寺院建物に居住させたが、平成2年12月に同人が転居した後、平成4年ころ、檀徒であるYを旧寺院建物に居住させていた。ところが、Yが平成5年暮れに荷物を残したまま不在となったため、これに気付いた上告人は、旧寺院の見回りを行うとともに、門扉が開かないよう施錠するなどしていた。
 そして、上告人は、Yが平成7年4月ころに残していた荷物を持ち出して旧寺院建物から退去した後も、門扉の扉が開かないように施錠したり、施錠の代わりに針金でくくったりし、建物の窓を内側から施錠して雨戸を閉め、玄関等に施錠するなどしていたほか、年2回程度敷地の草刈りと除草剤散布を行っていた。なお、上告人が、平成8年12月初めに旧寺院を見回った際には、建物の雨戸はすべて閉められ、玄関等もすべて施錠されていた。
7 上告人は、平成6年1月10日、國井に対し、上告人が管理している旧寺院建物を取り壊すこととしたので、これに異存があれば文書で申し入れられたい旨記載した申入書を送付した。これに対して、國井は、同月26日、上告人に対し、旧寺院が被上告人の基本財産に当たり、その処分については正福寺における規則上の手続等が必要であるとして、旧寺院の明渡しを求めるとともに、上告人が勝手に処分することについて承諾しない旨記載した回答書を送付した。
國井は、被上告人の包括宗教法人の宗務院渉外部の阿部郭道から上告人が旧寺院建物の撤去に同意している旨聞いたことや近隣住民からも建物の撤去を求める申入れがあったことから、平成6年12月15日、上告人に対し、上告人が被上告人側で旧寺院建物を撤去することに異議がないと聞いたので、被上告人側で撤去する旨記載した通知書を送付した。これに対して上告人は、同月19日、國井に対し、旧寺院建物の撤去には同意するが、その敷地は従前どおり上告人において占有することを了承されたい旨記載した通知書を送付した。
その後も上告人と國井との間で、代理人を通じて旧寺院建物の撤去につき話合いが持たれたが、上告人が建物撤去後も従前どおり敷地を占有するという条件を譲らなかったため、平成7年初めころに右話合いは物別れに終わり、國井としては、旧寺院建物を撤去して、旧寺院敷地の管理をすることは難しいと考えていた。
8 國井は、旧寺院敷地内の放置物件を除去し、門扉を閉めて旧寺院を管理することとし、平成9年1月12日に被上告人の信徒であるNらと共に旧寺院敷地内に立ち入ったところ、建物の庫裏玄関左側の雨戸が何者かによって開けられており、その内側のガラス戸が施錠されていなかったため、國井らは、管理状況を確認するために建物内に立ち入ったが、建物内部も相当朽廃が進んでいる状態であった。そこで、國井は、旧寺院の門扉に新たに南京錠を取り付けるとともに、建物の庫裏玄関及び庫裏台所勝手口の錠前を付け替え、庫裏玄関のアルミドアに「無断で立ち入ることを禁ずる。平成9年1月12日、宗教法人正福寺代表役員國井位道」と記載した張り紙を掲示するなどして、旧寺院の管理を開始した。その後も、國井は、月1回程度旧寺院を見回り、年2回程度敷地の除草を行うなどして、旧寺院を管理し、上告人の返還請求を拒否している。なお、上告人は、旧寺院の近隣に居住する知人からの通報を受けて、平成9年1月15日、旧寺院を見回ったところ、國井が旧寺院の管理を開始したことを知った。

二 原審は、右事実関係の下において、(一)上告人は当初被上告人の代表役員として旧寺院を占有していたところ、その後に受けた擯斥処分が有効であるとすれば、上告人は、被上告人の代表役員としての地位を喪失し、個人のために旧寺院を占有していることになり、擯斥処分が無効であるとすれば、上告人が引き続き被上告人の代表役員として旧寺院を占有していることになるが、この場合に、上告人において法人の機関として物を所持するにとどまらず、個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特別の事情があるときは、個人としての占有をも有していることになる、
(二)上告人は、新寺院に転居するまで家族と共に旧寺院に居住しており、その間の旧寺院の占有については、右特別の事情があったといえるが、右転居後の旧寺院の占有については、上告人が被上告人の代表者であるとされる場合において、上告人が被上告人の機関として旧寺院を占有しているにすぎず、右特別の事情は認められない、
(三)そうすると、上告人の個人としての占有を認めるためには、上告人に対する擯斥処分が有効であることを確定する必要があるが、右の点を判断するには、宗教上の教義ないし信仰の内容に深く立ち入らざるを得ないから、結局、上告人の本件訴えは、法律上の争訟に該当しないと判断し、これを不適法として却下すべきものとした。

三 しかしながら、原審の右二の(二)、(三)の判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
法人の代表者が法人の業務として行う物の所持は、法人の機関としてその物を占有しているものであって、法人自体が直接占有を有するというべきであり、代表者個人は、特別の事情がない限り、その物の占有を有しているわけではないから、民法198条以下の占有の訴えを提起することはできないと解すべきである(最高裁昭和29年(オ)第920号同32年2月15日第二小法廷判決・民集11巻2号270頁、最高裁昭和30年(オ)第241号同32年2月22日第二小法廷判決・裁判集民事25号605頁参照)。しかしながら、代表者が法人の機関として物を所持するにとどまらず、代表者個人のためにもこれを所持するものと認めるべき特別の事情がある場合には、これと異なり、代表者は、その物について個人としての占有をも有することになるから、占有の訴えを提起することができるものと解するのが相当である(最高裁平成6年(オ)第1998号同10年3月10日第三小法廷判決・裁判集民事187号269頁参照)。
これを本件についてみると、前記の事実関係によれば、上告人は、当初は被上告人の代表者として旧寺院の所持を開始し、旧寺院建物から新寺院建物へ転居した後も旧寺院の管理を継続して、これを所持していたのであり、別件訴訟の係属中及びその終了後においても、N、K及びYを通じ、あるいは自ら直接旧寺院を所持していたところ、その間に日蓮正宗管長から擯斥処分を受けたものの、これに承服せず新寺院への居住を続けていた。そして、上告人は、被上告人から新寺院の占有権原を喪失したとしてその明渡しを求める訴えを提起されたときにも、右擯斥処分の効力を否定し、上告人が被上告人の代表役員等の地位にあることの確認を求める訴えを提起するなどして争っていただけでなく、別件訴訟終了後にされた國井との間での旧寺院建物の撤去についての話合いの際にも、上告人が旧寺院を管理、所持していることを前提として、建物撤去後の敷地の占有継続を主張するなどしていたのである。右によれば、上告人は、平成9年1月12日当時、上告人自身のためにも旧寺院を所持する意思を有し、現にこれを所持していたということができるのであって、前記特別の事情がある場合に当たると解するのが相当である。そして、本件においては、國井は、平成9年1月12日、被上告人の代表者として、上告人が管理していた旧寺院に立ち入って、建物の錠前を付け替え、無断立入禁止の張り紙を掲示するなどして旧寺院の管理を行い、上告人の返還請求を拒否しているというのであるから、上告人は、その意思に反して旧寺院の占有を奪われたものというべきであり、旧寺院を占有している被上告人に対し、民法200条に基づき、その返還を求めることができると解すべきである。

四 以上によれば、本件事実関係の下で上告人の本件占有回収の訴えを却下すべきものとした原審の判断には、法令の解釈適用を誤った違法があるといわざるを得ず、この違法は原判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。右の趣旨をいう論旨は理由があり、原判決は破棄を免れない。そして、前記説示に照らせば、上告人の請求を認容すべきものとした第一審判決は正当であるから、被上告人の控訴を棄却すべきである。

よって、裁判官全員(梶谷玄 河合伸一 福田博 北川弘治 亀山継夫)一致の意見で、主文のとおり判決する。


その後


* 令和3年(2021年)6月25日−第2代住職秋山徳道の死去により正福寺日蓮正宗に返還されました。

* 令和4年(2022年)5月21日 − 正福寺の復帰奉告法要が奉修されました。