「私はそんなにきちんと治療してもらわなくてもいい、気になるところだけそこそこ治してもらえばいい」
と考えている方も多いのではないでしょうか?
そう考えている方はおそらく「矯正治療は綺麗な歯並びをつくる治療」と考えているのだと思います。
確かに矯正治療を受ければ歯並びは綺麗になります。
しかし矯正専門医は「綺麗な歯並び」を第一目標とはしていません。
では矯正専門医は何を治療目標にしているのでしょうか?
それは、その患者さんに合った「きちんとした咬み合わせ」をつくることなのです。
「咬み合わせ」ですから当然上下の歯をコントロールしなければ作ることはできません。
上下の歯がぶつかりさえすれば咬めると思っていませんか?
上下の歯には互いに咬むべき位置が決まっているのです。
たとえ上下の歯がぶつかっていても咬むべき位置で咬んでいなければ食べ物はうまくこなれません。
きれいに歯を並べていかないと、そのようにきちんと咬ませていくことはできません。
ですからその結果としてきれいな歯並びができあがるのです。
咬み合せは静止したものではなく、運動するものですから、スムーズに咀嚼運動や発音ができなくては
なりません。
その原点とも言える顎関節や咀嚼筋のことも考慮しなくてはなりません。
つまり顎関節や咀嚼筋に負担のかからない咬み合わせにしなければなりません。
さらに、前歯の位置により口元が出っ張ったり引っ込んだりします。
治療後の患者さんの横顔がどのように変化するかも考慮して治療方針を決めなくてはなりません。
矯正治療を開始する前には色々なことを考慮して綿密にゴールと治療方針を立てる必要があります。
治療する側も治療を受ける側も「気軽に」できることではないのです。
あなたが「気になるところ」はその部分に原因があってそのような形態をとっているのではありません。
あなたの口腔環境ひいては全身状態の問題が「不正咬合」という形で出現しているのです。
その部分のみをいじって治るものではありません。
ですからあなたが軽度と思っている不正咬合も、治療するとなるとすべての歯をコントロールしなくては
なりません。
場合によっては他科受診も必要になります。
歯科矯正治療はプチ整形や美容歯科とは違います。
「気になるところだけ」「そこそこ」治療したばかりに咬みにくくなったり、発音しにくくなったり、
顎が疲れやすくなったり、口元が出っ張ったり引っ込みすぎたりしておかしな顔になる危険も
あるのです。
最悪の場合「治療しないほうがよかった」と後悔するような、「取り返しのつかない状態」になる恐れすら
あります。
「そこそこ治療は、後が怖い」と申し上げておきます。
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