Pirate family(仮) 番外編:最高の船を求めて

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第2章 進水式

キャスターとの初コンタクトを終えた後、猛烈な勢いで設計図を書き終えた彼は、
その情熱のまま、船大工に建造を依頼。
驚きの速さで船が完成するのであった。
(驚いた……まさか2週間足らずで完成させるとは……)
新設計の船体をこうもすばやく実現させるとはここの船大工の腕は相当なものだな。
「だろ?まあ、俺もこんなに早くできるとは思っても見なかったんだがな〜」
どうだ!まいったか!!と言わんばかりで胸を張るキャスター。
(別にお主が作ったわけではあるまい?なぜそんなに自慢気に話すのだ?)
「うぐ……痛いところをつく奴だな。良いんだよこういうのは気分だ気分」
(我には理解できぬが、まあ良い。それより隣の助手がかわいそうな者を見る目でお主を見ておるが良いのか?)
キャスターが横にいるゼンを見る。
ゼンは曖昧な笑顔を見せながら、
「先輩、仕事のしすぎで遂に……うん、大丈夫ですよ。これが終わったらカリブ海にバカンスにでも行きましょう」
生暖かい笑顔と視線をよこしながら時折涙を流してうんうん、言っている。
「ば!ち、ちがうっての!!これは、あれだ……船に宿った精霊と話してんだよ!!」
「ええ、ええ、わかってますよ先輩。僕良い医者知ってますし、それにたまには仕事を忘れてゆっくりするべきですよ」
そっとハンカチで涙を拭いながらやはり笑顔で答えるゼンであった。
「ちっげ〜んだよ!くそ!お前も何とかいえよな、セリオス!」
(セリオスというのはもしかして我のことか?)
「ああ、いい加減名前が無いと不便だからな。この船はセリオス号に決めた。なのでお前もセリオスだ!」
(ふむ、了解した。が、我の声はお主の助手には届かないようでな……無理だ)
「先輩、ついに名前までつけるようになっちゃいましたか……これは思ったより重症ですね」
ほろほろと涙をこぼし続けるゼンに絶叫しまくるキャスターであった。
しばらくそんなやり取りが続いた所で、
「はぁはぁ、もう良い!頭がおかしいでも何でも良いから式を始めるぞ!」
用意しておいたワインのビンも無事に割れ、順調に式がすすむ中、
(何やら妙な感じが……)
セリオスが妙な感じを味わっていた。
(ぐ……苦しい)
「おい?セリオスどうした!?」
セリオスの苦悶の感情がキャスターにも伝わったらしく、声を荒げる。
(わからん、わからんが、このままでは……)
「くそ!中止だ!船を引き上げろ!!」
「先輩!?どうしたんですか急に……」
「良いから、船体の再チェックをするぞ。急げ!!」
こうして慌しく船を引き上げて進水式は中止されるのであった。

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