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プロローグ10


最後まで読み終えてふとテーブルに視線を移すと、いつの間に置かれていたのか注文していた紅茶が置いてあった。
少しさめてしまっているが、良い香りを放つ紅茶であった。
気持ちを落ち着けるようにその紅茶を堪能し、視線を目の前に座るリュウガに向ける。
視線が合ったことを読み終えた事への同意と受け取ったリュウガは話を進める。
「さて、手紙を読んだ君のとるべき道は二つ。俺はどちらも強制はしない。あくまで自分の意思で決めるんだ」
「一つ質問させてくれ。実際俺がこれを断った場合、俺はどうなるんだ?」
「残念ながらロンドンに君の居場所はもう無い。ここアムステルダムから再出発って事になるな。
 必要最低限の援助はするがそこから先は自分で何とかするんだな」
「なんとも勝手な言い草だな。だが、確かにそれ以上を望むのはお門違いか……」
やれやれとため息を一つ吐く。
実際、援助の件もかなりの好条件だと思う。本来ならこの手紙の主には何のかかわりも無いのだから。
「そういうこと。ここまで手助けしてるのだって破格の扱いなんだぜ?」
リュウガの方も両手を挙げてやれやれといった感じのポーズをする。
「全員にそういってるんだろ?」
「まあ、そういうことだ」
そこまで確認した後二人は急におかしくなってきた。
なんだか、昔からの悪友と話しているような気分になったのである。
どちらからとも無く笑みがこぼれ、お互いに声を出して笑いだした。
「おいおい、多少は隠せよ。俺だけなんだぞとかさ」
「心にも無い事はいえない性質なんでね、だから交渉が出来る人材が欲しいのさ」
「それで俺ってわけか。なるほどそれで納得できたよ。OK。引き受けた!どうせやる事もないしな、
 それに、まろこ商事には借りを返してやらんと気がすまない」
そうこなきゃ。と二人はがっしりと握手を交わす。
「さて、本名での活動はさすがにまずいだろ?君は死んだ事になっているからな。仮の名前が必要だ」
「そうだな〜。じゃあ、この紅茶にヒントを得て、ローズウッドとでも呼んでくれ」
「ローズウッドか、長いな……ローズで良いか。ってなんか女みたいな名前だな〜」
苦笑を浮かべながらも中々良いんじゃないか?と感想を述べてくる。
「仮の名前だしな。名前から性別も偽れそうだし、もってこいだろう?」
「そういう一面も確かにあるな。OK、じゃあローズ。これからよろしくな」
改めて同志として確認しあうと二人はそろってカップに手を伸ばした。
話しつかれて水分がほしかったのだろう。
だが、カップは二つとも空になっていたようである。
「さて、仲間になったお祝いにもう一杯いっとくか?」
「じゃあ、今度はコーヒーをもらおうかな。さっきリュウガが飲んでるのが妙にうまそうだったんでな」
二人は二杯目の飲み物を注文し、談笑を続けるのであった。


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