Company

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プロローグ9


アムステルダムに着いたのは日が昇ってすぐの早朝であった。
港に降り立ったロビンは眠い目をこすりながら少し眩しげに太陽が昇る水平線を見ていた。
ロンドンを追われてこの街に来てみたは良いが、特に行くあてもないロビンはこの先どうしようと考え込んでいた。
「はぁ、アムステルダムに知り合いは何人かいるが、この状況だと気軽に尋ねていくわけにもいかんよな〜やっぱ」
途方にくれて海を眺めていると、一人の男性がロビンに声をかけてきた。
「やあ、あんたがロビン君かい?はじめまして、俺の名はリュウガ。よろしくな」
にこやかに右手を差し出してくる。
ロビンは少し怪しんだが、握手に応じた。
「さて、こうして声をかけたのにはわけがある。この手紙を君に渡すためさ」
そう言うと懐から1通の手紙を取り出しロビンに差し出してきた。
「俺に手紙?誰から??」
「それは読めばわかる。まあ、ここで立ち話もなんだし。向こうのカフェにでもいこうか」
妙な展開に少し不信感を抱きながらもロビンはリュウガに従い、カフェテリアに向かうのであった。
カランと入り口ドアにつけられたカウベルが良い音色を立てる。
店内はさほど広くは無いようで、カウンターは無く、テーブルが6台置いてあった。
店内の雰囲気は落ち着いた良い雰囲気を漂わせており、静かにお茶を楽しむには最高の店であろう。
ざっと見たところ、自分達の他に3組のお客がいるようであったが、
相手との楽しいひと時を満喫していたり、コーヒーの香りを堪能したり個人の世界に集中しているようで
こちらを気にするような者はいなそうであった。
「良い店だろ?最近の俺のお気に入りなんだ。俺はコーヒーを、君は?」
「紅茶があるなら紅茶を、無いならコーヒーで良い」
「かしこまりました。壁際のテーブルへどうぞ」
ウェイターに案内されるままにテーブルに座り、ロビンはさっそく先ほどの手紙の封を切る。
中には見覚えのある紋章が書かれた便箋が一枚入っていた。
「こ、この紋章はまさか……」
がたっと椅子を立ち上がりかける。
「おっと、あまり大声で言わないでくれ。誰が聞いてるかわからないからね」
「あ、ああ。すまない」
かなり動揺した行動を取ってしまったらしく、他の客の視線を集めてしまったようだ。
リュウガが愛想笑いをして周りに平謝りをしているのに合わせてロビンもぺこりと頭を下げる。
それで興味をなくしたのか、それぞれの客はそれぞれの相手とのおしゃべりに戻っていったのだった。
「すまない。動揺してしまって」
「無理も無いさ。とりあえず中身を読んでくれ。話はそれからだ」
ロビンは少し震える手で手紙を取り出し中身を読み始める。





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