Company

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プロローグ1


それを見つけたのは本当に偶然だった。
普段は気にも留めない奥の棚。
そこに収められた資料は会社設立当時の書類と言う事で今の彼にはまったく関係の無い資料郡であった。
普段であればまったく用事の無いエリアである。
だが、今日は予定した会議が関係者の都合で30分遅れになったため、少し暇になっていたのも災いした。
(設立当時はどんな仕事をしていたのだろう……)
そんな一寸した好奇心から、彼はそのエリアに足を踏み入れてしまったのであった。
実際におされめられていた資料はその大半がかなり古いものであり、色あせているもの等が並んでいた。
1冊手にとって読んでみると、1年の決算書や、業務内容、業務実績、反省点などを細かく記してあった。
どこの会社にでもあるごくごく普通の資料であった。
業務内容も会社説明にあった通りの内容のものがそこには記されていた。
(今と対して変わってないんだな〜、まあ売上の数値は桁が違うけど)
特に目新しいものも無かったので本を元の位置に戻し、部屋から出ようとした。
ここで何事も無く部屋を出ていれば、この後に起こる事件に巻き込まれる事も無かっただろう……。
しかし、彼は目にしてしまった。やけに真新しい1冊の資料を……。
その棚には不釣合いの最近収められたであろうその資料を手に取り中を読む。
何のことは無い、最近行われた取引の内容をまとめた本であった。
利益の数値は最近のものになっており、先ほど見た資料とは桁が4つから5つほど違っている。
「なんだこれ?こんな数字の利益をうちがだしたって?そんな話は聞いた事が無いような……」
書類に記されていた数値は実際に彼が聞いていた売り上げ実績の数値を遥かに上回るものであった。
これほど大掛かりな取引であれば噂話しの一つくらい確実に聞こえてくるはずなのだが、
そういう話にはまったく心当たりが無かった。
一体何をどうすればこんな額になるのか……興味を持った彼は取引内容のページをめくる。
そこに記されていたのは……
「こ、これは……」
その1冊の資料との出会いが、この後の彼の人生を大きく狂わせるものになるのだった。

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