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III. GKのパッケージデザイン
現代は変化の時代である。
急激な価値観の多様化は生活の複雑化と高度化をもたらすが、一方で画一化する風景の中に自己の存在感はうすれつつある。
今、グラフィックデザインが果たさねばならぬ役割は、この現実の生活の中に確固たる存在の杭を打ち、未来へ向けての力強い基とすることである。
今ここに、我々の視点として変化しつづける生活環境をとらえる三つの軸を提出しよう。
それは人とそれをとり囲む三つの世界。すなわち、「もの」 「環境」そして「情報」の世界との関係である。これはいわばインターフェイスの世界であり、デザインがその行為の対象とする領域の世界でもある。
日本の伝統的なパッケージがもつ意味のところでかかげた三つの工夫は、今日の我々の視点と次のようにからみ合う。
1. 保存の工夫は生活を支える「もの」に。
2. 節目で生活を運ぶ工夫は外的要因の生みの親たる「環境」に。
3. 感謝に次の保障をとりつける工夫は食料の獲得を保障する「情
報」にと、からみ合い受け継がれている。
この3つの軸にはそれぞれにさらに2つづつその軸を成立される行為がある。
「環境」に対しては、普遍化普遍化と儀式化。
「もの」に対しては、個性化と同一化。
「情報」に対しては、変換と蘇生である。
そもそもグラフィックデザインの基本行為とは、生活における意味の翻訳作業であるといえる。それによって、人の心と生活の場のふさわしい関係がかたちとなって表出する。
先にかかげた6つの行為を配してこそグラフィックデザインは、その目的を完遂できると考えている。
STANDARDIZATION
美しい物には国境がない。
おいしい物にも国境がない。
すぐれたものは空間と時間を超越し普遍化する。
醤油は6世紀に中国からもたらされ、改良されて、日本の味作りに貢献してきた。日本の味には欠かせない。
テーブルコースをみたす卓上壜。
持ちやすく、注ぎやすく、切れが良く、まわりを汚さない。
日本の食卓にのぼって24年。すでに1億5千万本が作られた。
これだけ広まると醤油を示すシンボルとなる。
平均的家庭消費量の1ヶ月分を詰める1リットルの醤油パッケージ。スーパーマーケットの成長と共に、確かな地位を確立した。
主婦の買い物に持ち運びやすい軽さと、サイズが人気を得た。
DRAMATIZATION
感謝を込め、願いを込め、祝いを込めて行き来するパッケージ。
それは、パッケージであることを超えて人と人を結ぶ心となる。
パッケージは心の様を表す - 気分作り、雰囲気作り - という役割を担う。
日本特有の海の幸の一つは海苔。海苔は長らく贈答の主役でもある。海から山へとたなびく霞の美しい風景に海苔のほのかな香りと味を結びつけたパッケージ。
グラデーションが伝統的な日本の風雅さを伝えてくれる。
また、朝に夕に黄金色から濃紫色に染まる美しい海。華やかな海の寄せる波にイメージを重ね汐の香りを運ぶパッケージ。
心を包むパッケージはさらに風呂敷に包まれ届けられ、風呂敷をひらく時に込められた心があふれ出る。
IDENTIFICATION
おいしさの見極め方。
数ある食品の中から求める味を選ぶ行為には、パターン認識が敵している。
ビジュアルなアイデンティティがそれを可能にする。
一目で恋に落ちてしまう男女の仲ならぬ、一目みたとたん食べたくなってしまうというケース。
サラダオイルのパッケージ。
名前通りのサラダ用ドレッシング、マヨネーズから、揚げもの、煮もの、いためものまでとオールマイティ。しかし、グルメ志向の影響で一層の良い味を求めて分化したとき、パッケージには素性をあかすアイデンティティが必要となった。
パッケージに内容物を分かりやすく表示する。
イラストレーションは写真以上にそれらしさを強く訴求する。
デザートに供されるシロップ漬けのフルーツ。フルーツ本来のおいしそうな色と形は何よりも雄弁な味と品質のアイデンティティ。
食品本来の姿を美しく見せるためのパッケージが生きてくる。
中身が見えた方が良いものはいろいろある。
  
Think Visually, Act Graphically!
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