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イスタンブールパッケージデザイン事情
活気溢れるモダンな街と熱心な学生に魅了されたイスタンブール。
パッケージデザインに密かに託す欧州化の願い?
トルコ共和国イスタンブール市郊外のTUYAP見本市会場と、マルマラ大学において、10月12日から1週間、IIDE'98 (Istanbul International Design Encounters) のプログラムとして「Packaging and Branding Events」が開催された。このイベントは、パッケージ包装機材展、パッケージデザイン展、パッケージデザインセミナー、そしてパッケージデザインワークショップで構成されていた。名古屋国際デザインセンターを通じて社団法人日本パッケージデザイン協会より、セミナー講演とワークショップ講師の要請を受け、参加する機会を得た。
セミナーは世界5カ国から7名の講師が参加し、200名を収容するTUYAP内コングレスホールで開催された。講師は英国、イスラエル、オーストリア、トルコ、日本において実際に現業に携わるデザイナーであった。企業の製品開発者と学生に向けて主にそれぞれの国情を反映した昨今のパッケージデザイン傾向が話された。
一方、ワークショップは3クラスで構成され、ブランドアイデンティティ、ギフトパッケージ、そして私の担当したレーベルデザインの実習が行われた。総数40名程の学生のうち私のクラスには12名が参加した。ちょうど進級時期で、学生には今回がパッケージデザインの初授業となった。今回私は学生に対し、英語によるコミュニケーションの可能性と、パソコン利用のレベル、そして題材に取り上げる缶飲料が一般的かどうかということ、そしてわずか3日間という短期間にどこまでのことができるかが気になっていた。しかし、これらの当初の懸念は意外にもあっけなく吹き飛んだ。ほとんどの学生は英会話をスマートにこなし、また半数近くの学生が自宅に個人用のマックを持っていて、パソコン教室の不足をなんなく解決した。
缶飲料は、自動販売機はほとんど見かけなかったものの、大学近隣の食品店や郊外型大形ショッピングモールに各種のものが出回っていた。缶が主流ということはなく、紙パックやPET製品と市場を分け合っているように思われた。初日に他の2名の講師と共に、大学 構内のギャラリーに展示された学生の作品群を見たとき、そのレベルの高さに驚いた。同時に口をついて出た言葉が「皆いい仕事してるよ。教えることは何もないかも知れない」であった。
私はワークショップに4人づつの3チーム編成を取り入れた。このことは彼らにとても新鮮に映ったらしい。あっという間にチームとリーダーが決まり、後々チームの結束と、チーム内での問題解決意識を促したようであった。私を交えたチーム毎の活発な意見交換は最終日まで途切れることなく続いた。中には熱心のあまり初日から貫徹でデザインの基本構想段階をまとめあげた強ものチームもいて驚かされた。
課題のテーマとした「君自身が買って飲んでみたいと思う缶ジュース」は、若い世代らしいユニークなアイデアから、そつのないアイデアまで、この国の将来を彷佛とさせる広がりとまとまりを見せる力作に仕上がった。短い期間ではあったが学生各々が充分にパッケージデザイン実習を楽しんでくれたことに安堵した。
トルコの歴史は中央アジアのモンゴル高原から8世紀に西進を始めたことに始まり、15世紀には強大なオスマン‐トルコ帝国を築いた。今回驚いたのは、彼らの繁栄をもたらした「Go West」というスピリットが今も変わらず生きていると聞いたことだった。ちなみに近未来にはECに参加することを目標に掲げているそうだ。念のため、なぜ今もって「Go West」なのかと聞いてみたら「だって東にはあのイランが隣接しているから…」という答えが帰ってきた。
現在人口1200万人という急速に成長し続けるイスタンブール。都市のスカイラインは宮殿と数々のモスクに縁取られエキゾチックな様相だが、街中にはそんな面影はほとんどない。そこはむしろ、かっての我が国の高度経済成長の時代を彷佛とさせるような活気に溢れるモダーンな街であった。
  
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