ミニベロ1泊ツーリング新潟頸城




頸城の秋1日め

FCYCLEで企画されたツーリングオフに1泊2日で参加してきました。
場所は新潟県の頸城で、越後湯沢と直江津を結ぶ、ほくほく線沿線の地域にあたります。
隣接した松代、松之山あたりでは越後妻有トリエンナーレという、
アートイベントが行われていて、初日はそちらに寄ってから宿に向かいました。

朝、東京7時発の新幹線に乗り、越後湯沢で乗り換え。
が、ここから早くもトラブルというかミス発生。
ほくほく線のホームに停車していた特急列車に何も考えずに乗りましたが、
この列車、発車すると直江津まで停まりません。
車内の電光掲示板で気づいたときには時すでに遅し。ドアが閉まっていました。

仕方なく直江津まで行ったあと、ほくほく線で引き返します。倍くらい行き過ぎたか。
時間にすると約40分のロスとなりました。輪行で列車の乗り違えは今年3回め…。

まつだい駅に着いたのは9時50分頃。
自転車を組み立てて、まずは駅に隣接する「まつだい農舞台」を見に行きます。
この建物、設計はオランダの建築家グループ、MVRDVによるもので、
地上から延びる数本の階段にて本体の正方形平面の空間をつり下げています。
部屋はテーマカラーでそれぞれ統一され、コーナーの柱を省くなど
ディテールも凝っていて、中央が売店ではなくカフェだったら完璧ですね。
MVRDVといいHerzog & de Meuronといい、外国勢はいい仕事をしますね。
日本建築は世界レベルから再び引き離されてしまいました。

一方、意外だったのは建物の約半分を占める展示スペースが有料だったこと。
これでは地域の人が集うスペースにはならないのでは?
入場料はこの後、行く所全てでとられ、出費は合計2300円にのぼりました。

で、展示の方は企画展に加え、常設展示も幾つかあるのですが、期待はずれでした。
いちばん残念だったのは、カバコフの作品を見るデッキスペースで、入口はまるで裏口です。
これは作家本人に了承とっているのでしょうか?

その後、城山の展示エリアをざっと見て回ります。
結構な急坂だったのですが、前回に見たものがほとんどで収穫なし。
実際に農作業している人が隣にいたりすると
お気楽なアート散策がどこか後ろめたいような感じがしてしまいます。

さて、出発。城山の急坂を越えて、「森の学校キョロロ」を目指します。
が、この道県道350号は上ったり下ったりの坂だらけ。
他の道も例外ではなく、この地域の特徴となっているようです。

キョロロは公開コンペで設計者が選ばれ、自分も参加しましたが、実作は残念な結果に。
まず裏口から入るような雰囲気をなんとかしてほしい。表裏逆じゃん?
あと展望台は美人林に向けた方がいいのではないかなあ。暑いし。
そこへ至る階段の照明は暗くて危険きわまりない。手摺は途中で切らないように。
名物のアクリル窓は劣化しつつあるし、内部の展示まで素人レベルです。うーん。

対して隣接する美人林はとても気持ちのいい場所でした。
若いブナの木が林立しているのですが、木漏れ日と白い木肌が美しい。
まさに森林浴。心が洗われる感じがしました。
ここらでちょうど昼ですが、あとの行程を考えるとのんびりできないので
飲料を補給して、カロリーメイトを流し込みます。

さらにアップダウンを経て、「最後の教室」へ。
廃校の校舎を使って音と光による大規模なインスタレーションがなされています。
作者は著名なクリスチャン・ボルタンスキー。
いかにも氏らしい不気味さがありますが、モノとしてはすっきりしすぎていて
おそらく作家はスケッチまでしか描いていないのではないか。
作品は必見だと思いますが、この人の力量はこんなもんじゃありません。

松之山温泉の急坂を上りきったところにあるのは、M.アブラモヴィッチによる「夢の家」。
基本は宿泊施設で4つの和風の個室があり、テーマカラーに沿った色ガラスが窓にはめられて
部屋の真ん中には黒曜石の枕がついた棺桶を思わせる木箱があり、
宿泊者は貸与される人型シュラフを着てこの箱のなかで眠ります。
箱には「夢の本」がついていて、宿泊者は朝、そこで見た夢を綴ります。

浴槽は銅製で箱と同様に水晶の枕がついている、
共用部分には下に磁石を敷いた水がサービスされるなど魔術性満点です。
こちらは「最後の教室」と逆に、モノの完成度もとても高くて
個人的には今回見たアートのナンバーワンでした。

この作品は4名で泊まっても別々に眠らなければならないし、
夢というのは元々きわめてパーソナルなものなので、
どうやら個の自立あたりもテーマになっているのかもしれません。

さて、次が最後の「脱皮する家」なのですが、遠い上もう3時近くになっています。
各展示は4時で閉館になるのと、宿はさらに遠いので急ぎます。
県道80号は起伏がないので楽でしたが、国道403号に入るとまたアップダウンの繰り返し。
その妻有地区を上りきったところからさらに急坂を上って「脱皮する家」へ。
時間は3時半をまわっていて、日も傾いてきています。

これは日芸の学生が2年かけて建物のありとあらゆる部分を彫刻刀で削ったという
途方もない労力の産物で、実際に見ると圧倒されます。
例えるなら草間弥生の初期のネットペインティングに似ているかも。
光る発想こそないものの、これは意図的偏質性のたまものです。よくやった。

で、出た頃はもう4時。日没が5時前後なのでナイトランは必至。
さらに国道403号はとんでもない田舎の細道になったりして、不安感を煽ります。
相変わらず幾つのもアップダウンを繰り返しているうちに、
太陽が前方の峰に落ちていくのが見えました。

なんとか山岳部分をクリアし、安塚町に入ったときはもう日没。
しかし街路灯が出てきてかなりほっとしました。
途中、青木淳さん設計による「雪のまちみらい館」に遭遇しますが無念のスルー。

宿に遅れる旨を伝えようにも公衆電話が見当たりません。
まあそれでも6時までに着けば心配はかけないだろうとふんでいましたが、
時間というのはあっという間に経ってしまう。
一方で体力精神力はどんどん奪われていき、不安に包まれていきます。

国道403号から405号へ分岐するところまではまだよかったのですが、
最後の405号から宿への小道は照明がない上、急坂で完全にめげてしまいました。
もうこうなったら押しです。自転車に復帰してからどうしようもなくなって押したのは初めて。
それでも歩けば歩くだけ宿には近づくのだと自分に言い聞かせます。

周囲は自転車のヘッドライトで照らされるところ以外は闇に包まれています。
こういうとき、バックライト付きGPSというのは大きな心の支えになってくれます。
最終的に宿を発見するにも、GPSの力がなければ難しかったでしょう。

この日の宿泊地は「田舎屋」という昔の木造校舎を改装して宿にしたもの。
6時前に到着し、ひと風呂浴びてから夕食をとにかく食べてようやく人心地ついた感じ。
自家製手打ち蕎麦がみずみずしくて美味しかったです。
食後に濁り酒をちびちびやっていたら、記憶が飛んで就寝。

この日の走行距離:63.1km
平均速度:14.1km/h
獲得標高差:1639m
最高標高:492m



夢の家。


頸城の秋2日め

前日の押しですっかり自信喪失。この日のグループ走では
健脚揃いのオフで果たしてついていけるのか不安がありました。

宿で昼食のおにぎりを頂いて、8時半頃出発。
昨日通った国道405号を戻り、403号を右折します。
途中、道の駅で蕎麦の実ジェラートをゲット。
山に向かっているので、基本的に上り基調です。

再び国道405号に入り、ひと山350m程度のきつい峠を越えます。
このとき、走り方についていろいろ考えました。
まずは精神力。これがないといくら脚力があっても使い物になりません。
そして意識すべきは足の動きよりも、むしろ呼吸。

ツーリングもスポーツには変わりません。
ランニングのように足に合わせるわけにはいきませんが、
すってすってはいてはいて、もしくはすってすってはいて、とか。
きっちりリズム良く呼吸することを心がけると持久力が出る気がします。
最初で引き離されてもあとで追いつける走りですね。

そうこうしているうち、この日の本番の坂に突入。
県道348号線で菖蒲高原さらに野々海峠へ標高差約700mの上りです。
標高700m前後の菖蒲高原あたりから、紅葉が見頃になってくるので、
棚田も含め、ポイントポイントで写真を撮りながら上ります。

残念ながら天気は下り坂でちょっと日が射したかと思うと、
一気に暗雲が迫ってきたりして安心できません。
紅葉も実際の印象がカメラに写らないのが惜しいです。
本当はもっと鮮やかだったり、幻想的だったりしました。

野々海峠で昼食のおにぎりをとって小休止。
野々海池沿いにダートを少し下ってから、深坂峠へ軽く上ります。
この頃は本格的に日も陰ってきて、肌寒く草々に退散し、
また写真を撮ったり、湧き水を補給したりしながら松之山温泉まで一気に下ります。

久方ぶりの人里でコンビニ休憩を入れます。
ここで幹事さんから空模様が怪しいので寄り道せずに松代に直行するとの方針が出されました。
松代への国道353号は途中で怖いトンネルがあるも、下る一方でめずらしく楽なルートでした。
それは国道253号に入っても同じであっという間にほくほく線まつだい駅に到着。

すると20数分後発の電車があることが判明。
間に合わないかなと思いながら自転車をたたんでいたらなんとか乗れました。
越後湯沢でもかなり早い時間の列車で自由席をゲット。
連休最終日のラッシュに巻き込まれることなく、家には6時頃には着いていました。

最後は流れ解散みたいになってしまいましたが、皆様ありがとうございました。
楽しかったです。

この日の走行距離:53.6km
平均速度:14.7km/h
獲得標高差:1221m
最高標高:1099m

(08/11/02-03 h.taki)

深坂峠近くの紅葉。




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