『鶴の恩返し・ツバサ編』


日本迷作劇場その3改改改 鶴の恩返し

キャスト
村の若者:小狼(ツバサ・写し身)
鶴:サクラ(ツバサ・写し身)

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昔々のその昔。
ある村に一人の若者が住んでいました。
この若者は誰にでもやさしく、とても正直だったので村のみんなから慕われていました。

そんなある日のこと。
若者が森を歩いていると1羽の鶴が罠にかかって動けなくなっているのを見つけました。

「つるーっ、つるーーっ」

鶴は悲しそうな声で若者に助けを求めます。
ところで鶴ってどういう声で鳴くんでしょうね。
作者にはその知識がありません。ご存じの方がいらっしゃいましたらお教えください。

「かわいそうに。待ってろ。今たすけてやる」

若者は罠を外して鶴を逃がしてやります。
この若者は困っている者を見ると助けずにはいられないのです。

「これで大丈夫だ。もうこんな罠にかかるんじゃないぞ」
「つるーっ」

飛び去る鶴を見送る若者の瞳に浮かんでいるのはよいことをしたという満足感のみです。
そこにはなんの損得勘定もありません。
立派ですね。
どこかの誰かとはエライ違いです。

さて、その夜。

トントントン・・・

若者の家の戸を叩く音がします。

「こんな夜更けに誰だろう」

いぶかしみながらも戸を開けてみると、そこにいたのは栗色のショートカットの可愛らしい少女でした。

「夜分遅くに申し訳ありません。旅の者ですがこの雪に難儀してしまいまして・・・」
「それはお困りでしょう」
「申し訳ありませんが一晩、お泊め願えないでしょうか」
「こんなあばら家でよければどうぞ」

こうして若者のところにやってきた少女ですが夜が明けて1日たっても2日たっても若者の家を出ようとしません。
若者もそれを咎めることをしません。
そうして日々が過ぎていくうちにいつしか、

「ねえ、小狼くん」
「なんだい、サクラ」

二人はお互いを名前で呼び合う仲となっていました。
何気ない1日1日が二人の仲を縮めていくかのようです。

さて。
少女が若者の家に来てから半年も経とうかというある日のこと。

「小狼くん。小狼くんに一つお願いがあるんだけどいいかな」
「お願い?」
「うん。あのね。わたしここに来てからずっと小狼くんのお世話になっているでしょ。お世話になってばかりじゃ悪いと思って」
「おれはそんなこと気にしてないよ。サクラがいてくれるだけでおれは満足だよ」
「ううん、それじゃわたしの気が済まないの。だからね。小狼くんへのお礼に機を織ろうかと思うの。わたし、機織りはけっこう自身があるんだよ」
「そうか。それは楽しみだな。それじゃあ一つお願いしようか」
「ありがとう小狼くん。それでね。もう一つだけお願いがあるんだけど」
「なんだい?」
「わたしが機を織っている間は決して中を覗かないで欲しいの。これだけは約束して」
「覗かなければいいんだな。わかったよ」
「うん!それじゃあ、さっそく」

若者の承諾を得た少女はさっそく部屋にこもって機織りを始めます。

ぎったんばったん
ぎったんばったん
ぎったんばったん
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

そうして翌朝出来上がった織物を手渡された若者は驚きに目を見張るのでした。
それは若者がこれまで見たこともないほどに素晴らしい織物だったのです。

「これはすごい。こんなすごい織物は初めてみたよ」
「ふふっ、そんなに喜んでもらえるとサクラも嬉しいな」
「こいつは高く売れそうだ。ありがとう、サクラ」

本当に素晴らしい出来栄えの織物です。
羽のように軽く、柔らかく、織物自体がまるで不思議な輝きを放っているかのような見事な逸品です。
そう、まるで羽のように・・・・・・

若者の見込み通りその織物にはたいそうな値段がつき、若者はこれまで見たこともないほどのお金を手にすることができました。

こんなことが何度か続くうちに若者の織物は町でも評判となり、ますます高く売れるようになって若者の生活も次第に裕福へとなっていくのでした。
これもみな少女の織りだす不思議な織物のおかげです。
それにしても、いったい少女はどのようにしてこんなすごい織物を織りだしているのでしょうか。
そもそも、たいした素材もない若者の家のどこから織物の原料を調達しているのでしょうか。
けっして覗いていけないというわけは?
ちょっとあやしいですね。
少女がどのようにして機織りをしているのか少し覗いてみることにしましょうか。

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ここはいつも少女が機織りをしている部屋です。
機織り機のほかにはとくに珍しいものはありません。
あんなきれいな織物の材料になるような素材も見当たりません。
やっぱりあやしいですね。
ここで少女が部屋に入ってきました。
部屋に入ると少女はまるで何者の侵入も許さないとばかりにかたく襖を閉じます。
実にあやしい態度です。
少女はそのまま機織りを始めるかと思いきやなぜかおもむろに服を脱ぎ始めました。
一枚一枚と身に着けた衣を落としていきます。
その下からあらわれたのはおそらく若者にもまだ見せたことがないと思われる美しい裸身。
傷一つない真っ白な肌と女性になりきっていないこの年齢独特の微妙なボディラインの生み出すこの絶妙な妖艶さ。
いかなる紳士もこの裸身の前では己の欲望を抑えるのは困難なことでありましょう。
それほどの美しさです。
全裸になった少女は両手を組んで祈るかのように目を閉じます。
と、ここで不思議なことが起こりました。
染み一つなかった少女の白い肌にぽつんと黒い影のようなものが浮かび上がってきたのです。
浮かび上がったそれは広がり数を増やして少女の肌を侵食していきます。
やがて完成したそれは紋様のようにも文字のようにも見える異様な形をした刻印でした。
不思議なことはさらに続きます。
少女が祈りを続けると完成した刻印は形容しがたい光彩の輝きを放ち始めます。
その輝きは次第に何かの形をとりはじめ、ついには1枚の羽となって床に落ちるのでした。
少女の肌にあるものと同じ刻印の刻まれた光輝く羽です。
羽は1枚だけではなく、少女の全身から次々に生みだされていきます。
なるほど。
この羽が織物の原材料だったわけですか。
これが素材ならばあの織物の素晴らしさにも納得がいきます。
それにしても、清楚な少女の肌に刻まれた異様な刻印が輝く羽を生み出していくこの光景をなんと表現したらよいものでしょうか。
なんとも神秘的かつ、幻想的な光景です。

「もうすぐ小狼くんがこの部屋をのぞきにきちゃうんだわ。あんなに約束したのに。この姿を見られちゃう。小狼くん、どういうことだ、説明しろってわたしに詰め寄ってきて。それでだんだん興奮してきて。わたしを押し倒して。これが羽の元なのかってわたしの体を弄り回して。それだけじゃすまなくて。わたしの大事なところも調べ始めて。それから、それから・・・・・・あぁっ!」

・・・・・・。
前言撤回。
神秘さ台無し。
どうもこの鶴さん、過激なレディースコミックか何かの影響を受けてるみたいです。
それとも少女マンガの方でしょうか。
最近のやつは過激ですからね〜〜。
以前、なかよしにここまで載せていいの? という挑戦的なキャッチコピーを見たことがありますがどんなのだったのでしょうか。
未だに確認できていません。
まあ、鶴さんの故郷のクロウ国でそんなのを売っているのかわかりませんけど。
あそこの王様は堅物ですから。

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さてさて。
いけない期待を胸に今日も機織りにいそしむ鶴さん。

しか〜〜し。

鶴さんの期待に反して若者は一向に部屋をのぞきにこようとしません。

「いい、小狼くん。わたしが機織りをしてる間は絶対に部屋に入っちゃダメだからね」
「わかってるよ」
「ホントのホントにダメだからね」
「ホントのホントにわかってるよ。絶対にのぞいたりしないから安心して機を織ってくれ」

普通、ここまで言われたらかえって気になってのぞきたくなるものなんですけどね〜〜。
若者は頑なに約束を守ってのぞきにこようとはしません。

そう。
そうなのです。
この若者は超の上に超がつくほどの真面目人間。
一度交わした約束を破ることなど思いもよらない人なのです。
う〜〜ん。
なんといいましょうか。
人としては大変素晴らしい姿勢だとは思うのですけれど。
おとぎ話の登場人物としてはちょっと、いや、かな〜〜り問題がある気がします。
なによりこれではストーリーが全然先に進みません。

こんな調子でさらに3か月も過ぎたころ、いつまでたっても覗きにこない若者にとうとう鶴さんはブチギレてしまいました。

「小狼くん! どうしていつまでたってものぞきにこないのよ!」
「え、だってサクラがのぞいちゃダメだって」
「そう言われたらのぞきにくるのが普通でしょ! 小狼くんには女心がわからないの!?」
「そ、そういうものなのか」
「小狼くんのバカ! もう知らない!」
「あ、サクラ! どこに行くんだ! おい、サクラ! サクラ〜〜〜〜!」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・

今回の教訓:
おとぎ話の

「けっして覗いてはいけません」

は芸人の

「押すなよ? 絶対に押すなよ!」

と同じ。

まあ、その後は若者はすねる鶴さんを連れ戻して二人で幸せにくらしたそうです。
めでたしめでたし?

おわり。


ちょっと早いけどオタオメ話、ということにしておこう。
ツバサのサクラ(写し身)は一話を見る限りではかなりアグレッシブなタイプに見えましたのでこれくらいはやるかな〜〜と思ってます。

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