『お兄様へ 7』



大丈夫だよお兄ちゃん。
言ったでしょ。
わたしはとっても元気だって。
どんな目にあったってへっちゃらなんだから。
身体はとっても元気だよ。
本当にね。
自分でもびっくりするくらいに元気なんだから。

うん。
わかるよね。
そう、おかしいんだよ。
こんなの。
こんな目にあってるのにこんなに元気でいられるなんて。
おかしいんだよ。
身も心もボロボロになってないとおかしいんだよ。
それなのにこんなに元気でいられるなんて。

その理由もわかるよ。
小狼様だよ。
小狼様はいつもわたしの中に精を放ってく。
人間じゃない小狼様は避妊なんて気にしないだって思ってたけど。
それだけじゃないよ。
小狼様の精、あれの中に何かが含まれているんだよ。
それがわたしの身体の中に染み込んでる。
もうどれだけ染み込んでるのかな。
それがわたしに生命を与えているの。
自分でもわかるの。
自分の中に小狼様の一部がいるのが。
小狼様が放ったものがわたしの中でわたしを支配している。
身体だけじゃない。
心にも滲んできている。
もうここから逃げようなんて思えない。
小狼様に何をされても反抗する気になんか全然なれない。
それどころかわたしの心は小狼様を求めている。
小狼様のお傍にいたい、小狼様の役に立ちたい。
今、小狼様に命令されたら人を殺すことだってなんとも思わない。
そんな風になっちゃってるの。

身体も心も小狼様に作り替えられてる。
自分がどんどん別のなにかに変わっていくのがわかる。
こんな風にお兄ちゃんのことを思いだせるのもあとどれくらいあるんだろう。
多分もうすぐわたしは。
お兄ちゃんのことも忘れちゃう。
だから今のうちにこうして。
お兄ちゃんへの手紙を残しておくよ。

ううん、やっぱり駄目だね、こんなの。
こんな手紙を見せたらお兄ちゃんを心配させちゃうね。
そんなのできないよ。
お兄ちゃん。
お兄ちゃんを安心させるためにウソの手紙を書くから。
心配しないでねお兄ちゃん。
さくらはお兄ちゃんのために頑張るから。
大好きだよ、お兄ちゃん……

オチへ


オチへ。

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