『お兄様へ 3』


(※今回はPixiv的に言うとR18Gになります。
苦手な方と18歳未満の方はご遠慮ください)



こうしてわたしは小狼様のモノになった。
まあ、そうはいってもそんなに何かが変わったってわけじゃないけど。
あんなことがあったら、あとは毎日のようにっていうのがありがちなパターンだよね。
でも、小狼様はそういう人じゃないの。

「おはようございます」
「あぁ、おはよう。今日の朝食はなんだ」
「はい。今日はホットケーキです」
「やれやれ。朝からそんな甘ったるいものか。まあいい」

あんなことをした後でもぜんぜん普通の対応なの。この人は。
本当にポーカーフェイスというか鉄面皮というか。
そういうのをぜんぜん表に出さないんだよね。
あんなことをした後は普通はもう少しは対応も変わるものじゃない。
いいにしろ悪いにしろ。
でも、この人はそういうのがないの。
ぜんぜん普通。
ほんとにどうなっているのかなあ。
わたしも男の子のことそんなに詳しいわけじゃないけど。
ちょっと、っていうか相当に変だと思うな。

もちろん、あの日で終わりなんてことはない。
あの後も何回か小狼様の相手をさせられたよ。
もう、わたしにはそれを拒む自由はない。
求められるままに従うだけ。
でも、そんなにはないんだよね。
なんか本当に気まぐれというか、思いついた時にたまたまって感じで。
この辺もわたしが思ってたのとはちょっと違う感じ。
噂に聞いていた男の子たちとは違うところ。
がっついてないっていうのかな。
この辺がブルジョアってやつなの?

でも、あるいはそれだからなのか。
求められる時は本当に身も心も、もう骨の髄までえぐられるみたいになっちゃうんだよね……

その日も気がついた時にはもう小狼様の部屋にいた。
いつもと同じ。
いつも通り、なにがどうしてこうなったのか全然わからない。
身につけているのは靴下とチョーカーだけ。
身体を隠すものはない。
冷たい小狼様の視線に全てを曝け出している。
これもいつもと同じ。
靴下とチョーカーだけ残されているのは小狼様の趣味なのかなあ。
そういえばいつもこれだけは残されている気がするよ。
いつもと同じように体の自由は奪われているけど。
いつもと違ったのは、それが縄で吊るされていたこと。
縄で両手を吊られて、足も広げた状態で縛られている。
こういうのに縄っていうのはつきものらしいけど。
小狼様は使ったことがなかった。
まあ、手も触れずに人を吊りあげられるような人だから必要ないんだろうけど。
されることはいつもと変わらない。

「ふむっ……んん……」

小狼様の指が敏感なところを弄る。
胸を擦られ乳首をつままれあそこに指を突き入れられる。
はじめるとも何も言わず、ただ事務的にわたしの身体を弄っていく。
慣れてきたのか慣らされちゃったのか。
今はもうわたしの身体は小狼様の責めにすぐに反応してしまう。
まるで小狼様が欲しい欲しいって言ってるみたいに。
ちょっと恥ずかしいな。

「はぁ、はぁ」

まるっきり無表情な小狼様の前でわたしだけはぁはぁしているのは本当に恥ずかしいよ。
これでまた無表情なままされちゃうのかなって思ったんだけど。
今日は少し趣向が違うみたい。

そろそろと思った時。
すっと小狼様が身を引いた。
そのまま一歩下がった位置からわたしを見ている。

「?」

下がった位置から動こうとしない。
ただわたしを見ているだけ。
なんで? と思ったけど。
すぐに気がついた。
小狼様はわたしを見ているんじゃない。
わたしに見せているんだ。
手にしたものを。
小狼様がつまんでいるそれを。
それは鈍く錆びついた光を放つ太く、長い針だった。

「ひっ……」

わたしにもわかる。
こんなところでこんな状況で針の使い道なんて一つしかない。
だけどそんな。
そんな酷いことをまさか。
うそですよね小狼様。
そんな酷いことしませんよね……

そんな哀願に満ちたわたしの怯えた表情は小狼様にとってはなによりのご馳走なのだろう。
間をおいているのはそれを楽しむために違いない。
そしてそれを存分に楽しんだのか。
無慈悲に無表情なまま小狼様の指は動いた。

「ぎぃぃッッッ!」

自分でもこんな声が出せるのかと思うような獣じみた絶叫が喉から迸る。
なんの予備動作も、刺すという振りも見せずに針は突き立てられた。
わたしの乳首へ。
いや、貫かれた。
わたしの左の乳首は針に上から下まで串刺しにされていた。
鋼が肉体を貫通していくというかつて経験したことのない、想像外の激痛が身を妬き尽くす。

「いぃぃ〜〜〜〜〜ッッ!」

小狼様を楽しませるだけとわかっていても、叫びを抑えることができない。
痛い、痛い、痛い!
この痛さ、わかる? お兄ちゃん。
男の人だったらおちんちんを針で串刺しにされるようなものだよ。
痛いなんてものじゃないよ。
もう痛い、ただそれだけが全て。
それくらい痛い。

「ひぃ、ひぃ……ひぃぃっ!」

激痛に呻きながらもそれに気が付いたのはやはり予感があったからなのかな。
乳首は一つじゃない。
二つある。
ならば当然……

当然のように小狼様の指にはもう1本の針が握られていた。
それがゆっくりと動き出す。
ゆっくりと確実に。
なんの遅滞も見せずにそれはわたしの右の乳首を貫いていた。

「いぎぃぃぃぃ〜〜〜ッッ!!」

先ほどよりもさらに凄まじい絶叫が口から洩れる。
それをどうこう思う余裕はもうない。
再び襲った激痛に脳が焼き焦がされていく。
痛い、痛い、ただ痛い。
それも普通の痛さじゃない。
肉を串刺しにされるという常識外の痛み。
こんなのに耐えられるわけはない……

「ハァッ、ハァッ、ハァッ」

痛みがおさまることはなくても、刺された、という物理的なショックはさすがに時間とともに少しは和らぐ。
ようやく息をつけるかというくらいに持ち直したわたしの目に映ったのは。

小狼様が手にしたさらにもう1本の針だった。

全身の血が音をたてて引いていく。
かくかくと膝が震える。
想像外の恐怖によって。
小狼様の目が自分のどこを見ているのかがわかる。
わたしの股間の一点。
女の子の一番敏感で一番弱いところ。
女の子の一番大切なところ。
まさか。
そんな。
まさかそんな酷いことを。
いくらなんでもそんな。
でもこの人ならば。
ううん、この人は。
そもそも「人」ではないこの人ならば。

「しゃ、小狼様! それだけはお許しを! お、お慈悲を! 小狼様!」

わたしの涙ながらの惨めな哀願の効果は小狼様の頬にかすかな微笑みを浮かばせることだけだった。
鉄面皮で無表情を崩さない小狼様がわずかに見せる表情。
それはこんな時に見せる笑みだ。
肉食獣が獲物を前にして浮かべる笑み。
ううん、多分……悪魔が魂を捧げる人間を前にして浮かべる笑みだ。

「さくら」
「は、はい!」
「お前は本当に可愛いなあ。本当に。可愛すぎる。だけどなあ、さくら。それは罪なんだよ」
「え、あの」
「お前がいけないんだ、さくら。お前のその可愛さがおれを狂わせるんだ。こんな風に……」
「ぎぃぃぃぃぃぃぃッッッ!!」

その時に感じたのは痛みというより物理的な衝撃だった。
もの凄いショックが「そこ」から脳天に向けて突き抜けていくような。
その後には当然、ものすごい痛みが押し寄せてくる。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛いッ!
乳首の時よりも数倍痛い!

ぷっしゅぅぅぅ〜〜〜

痛みのあまりわたしは失禁していた。
ぴちゃぴちゃと恥ずかしい音をたてながら床にお小水が滴り落ちていく。
それを恥ずかしいと思う余地なんてむろん、ない。
これだけの痛みで気を失わないのがおかしいくらい。
ひょっとすると刺された瞬間に痛みで気を失って、その痛みですぐに目が覚めているのかも。
それくらいにとんでもない痛み。
全身の全てが痛みに変わってしまったかのように痛い。
手足を封じられたわたしはそこを抑えることもできない。
ただ痛みにあえぎながら身を震わせるだけ。
それが小狼様の目を楽しませるだけだとわかっていても。
わたしにはどうすることもできない。
そんな権利はわたしにはない。
ただ小狼様を楽しませるためだけに、痛みに身をよじりながら呻きをあげることしかわたしに許されたことはない。
生きた玩具のわたしには。

どれくらいの時間が経ったのか、もうわからない。
何時間も経ってしまったような、それともまだほんの数十秒も経っていないのような。
痛みに支配されたわたしの頭にはそんなことを感じる余裕なんてない。
でも、多分そんなに時間は経ってなかったと思う。
そんなに長くこの人がわたしを放置するわけないからね。
小狼様はその間に準備を進めてたみたい。
わたしを苛めるための準備を。
痛みに揺らぐ視線の隅にふと、なにかが映りこんだ。
黒くて細いなにか。
それはわたしに刺された針の先につながってる。

「あ……?」

あわてて視線をそのなにかに集中する。
ぼんやりと見えてきたそれ。
それは黒いコードのようなものだった。
細い、黒いコード。
それが刺された針の先から床に垂れ下がりさらに伸びている。
床の上を通って伸びた先は小狼様の手。
小狼様の右拳に3本のコードが握られている。
黒い、電気コードのような線。
コード。
電気。
針。

「!!」

そこまで思い至った時、わたしの脳裏に閃く光景があった。

あれはその数日前のことだった。
その日、小狼様は書斎でお仕事をされていた。
小狼様はまだ学生だけど、李一族の当主としていろいろな仕事があるみたい。
その日も書斎に籠ってたくさんの書類を相手に奮闘されていた。
だけど、その日はちょっとよくなかった。

「カァッ、カァッ、カァァァ」

お庭にたくさんの烏が集まってひどくうるさい。
いつもはこんなことないんだけど、なにか餌になるものでも落ちてたのか。
ずいぶんいっぱいきている。
がぁがぁと鳴き声がえらく騒々しい。
わたしはちょっと心配だった。
小狼様はそんなに神経質な方じゃないけど、これはさすがにうるさすぎる。
お仕事をしている時にこれではさすがに気がめいるだろう。
なにか言われるかなと思っていたら案の定。

「うるさいな」

やっぱり気にされていたみたい。
少々おかんむりのようだ。
窓の外に向ける目つきが厳しい。
さすがになにか命じられるかと思って身構えてたんだけど。
わたしにはなにも言ってこなかった。
その代わりに一言。

「……雷帝招来」
「え?」

低く小狼様がなにかを呟かれたその瞬間。
窓の外に稲光が走った。
あわてて窓辺によって外を見てみると。
騒いでいた烏たちは全て地に落ちていた。

「後でかたづけておけ」

わたしにかけたのはその一言のみ。
なにもなかったように仕事に戻られている。

「は、はい」

わたしは間の抜けた返事をするしかなかった。
その後、わたしは言われた通りに烏たちの後始末に行った。
庭に出て落ちていた烏たちを集めたんだけど。
あたりにはなにか焦げ臭い匂いが漂っていた。
実際、何羽かには羽に焦げ跡がある。
まるで雷にうたれたみたいに。
あの光……
あれはやはり稲光、雷だったんだ。
小狼様は雷を操ることができる。
普通に考えたらものすごいことなんだけれど。
わたしはそうなんだ、くらいにしか思わなかった。
もうさんざんにいろいろなものを見せられて、ううん、実際に味合わされてきていたからね。
それほどたいしたこととは思わなかったよ。
この時は。

今は違う。
針、電気、コード。
そしてそのコードを小狼様が握っている。
わたしの身体に、わたしの身体の大事なところに繋がれた電気コードの端を小狼様が握っている。
雷を……電気を自在に操れる小狼様が。

「ひ、ひぃぃっ」

思わず漏れた恐怖の呻きから小狼様はわたしが自分の置かれた状況を理解したことを悟ったようだ。
獣の微笑みが深くなる。
あるいはあの日のことがあったから今日のこれを思いついたのか。
この悪魔の責めを。
そしてそれはきた。

「雷帝招来!」
「ひぎぃぃぃぃ〜〜〜〜ッッッ!」

身体の三ヶ所、一番大切な三ヶ所から迸る電撃!
それは一瞬でわたしの全身を骨の髄まで焼き焦がした。
さっきの針の痛みとはまたぜんぜん違う。
痛みじゃない。身体の奥底、骨の髄にまで響いてくる痺れというか衝撃。
文字通り、骨の髄にまで響いてくる。
手足がわたしの意思とは無関係に跳ねようとするけど、縄で縛られているから動かない。
その代りに身体の方が跳ねる。
まるで壊れたばね仕掛けのお人形のように。
さらにもう一度。

「ぎぃっ!」

もう一度。

「あがっ!」

もう一度。

「きぃぃっ!」

何度も何度も雷撃がわたしを襲う。
時には三ヶ所同時に、時には一ヵ所だけ、二ヶ所とバラバラに襲ってくる。
撃たれる場所によって変わるわたしの反応を楽しむためだろう。
間隔も不規則のランダムに襲い掛かってくる。
撃たれる度にわたしの身体は跳ね上がる。

「いぃぃ、しゃ、小狼さ……ぎぃぃっ!」
「ははは。いいぞ、さくら。踊れ踊れ」
「ひぃぃぃ!」

ああ、そういうことか。
わざわざ縄で縛ったのはこのためだったんだね。
わたしの無様なダンスを楽しむためだったんだね。
ほんとにこの人はこういうことには手間を惜しまないなあ。
まめというか。

ぷっしゅぅぅぅ

電撃が膀胱を刺激したせいか。
わたしの股間からわずかに残っていた尿が漏れ出でる。
その尿を巻き散らかしなからわたしは踊り続ける。
このうえなく惨めでこっけいなダンスを。

「きぃっ!」
「ひ、ひぃぃっ!」
「あひぃぃぃ〜〜〜〜」

どれほど泣き叫んでも小狼様はダンスを止めようとはしなかった。
止めるはずはない。
これが小狼様にとって最上の楽しみなのだから。
地獄のダンスはいつまでも続くかのように思えた。

ダンスが終わったのは小狼様が満足したからではない。
わたしの身体が電撃に反応を示さなくなったからだ。
完全に焼き切れたわたしの身体はもはや何の反応もしない。

「あっ、あ……」

電撃を受けてもかすかに声が漏れるだけ。
手足も身体もぴくぴくと震えるだけでそれ以上の反応は示さない。
全身の神経が焼き切れてしまっている。
もうこれ以上、反応のしようがない。
そこでようやく、わたしは縄から解放された。
ぐちゃりと床の上に潰れる。ふみ潰された蟇蛙のように。
だけどこれで終わりにはならない。
わたしを責めるだけで小狼様自身はまだ何も楽しんでおられないのだから。
今日の本番はここからだ。

「あ、あっ、あひぃ……」
「あぁ、やはりいいなあお前の身体は」
「はひぃぃ……」

その後、ベッドの上で小狼様に犯された。
犯される、といっても普通のやり方じゃない。
もう手も足も全く動かせないわたしは何もできないのだから。
わたしはなにもしない。
ただ小狼様のなすがままにされるだけ。
横になった小狼様の上に乗せられて、あそこで小狼様の剛直を咥えさせられる。
そして小狼さんの逞しい両手で肩を掴まれ、上下に揺す振られる。
上下に振られる度にわたしのそこは小狼様のモノを擦る。

「あっ、あっ、あぁっ」
「くぅっ、いいぞ、さくら。お前の身体は最高だ」
「あっ……」

こんなの違う。
こんなのはセックスでもなんでもない。
ただの玩具だ。
小狼様のモノを擦るための玩具。
小狼様にとってわたしは。
己のモノをただ擦るための玩具にすぎないんだ。
こんなことをされても反応してしまう自分の体がうらめしい。
そういう風にしつけられてしまっているから仕方ないんだけど。
まさに玩具だ。
小狼様を楽しませるための生きた玩具。
それが今のわたしなんだ……
小狼様の放つ精を肉の奥深くで感じながら、それに悲しみよりも悦びを感じる己の性をあさましく感じる自分もいた。

気がついたら自分のベッドの上にいた。
これもいつものことだ。
身体もキレイに洗われている。
いつもそうだけど、誰がわたしを洗っているんだろう。
小狼様が自分でするとも思えないけど。

真っ先に思ったのは傷の手当だった。
あんなに深く針を刺されたんだ。
ひどい傷になっているに違いない。
すぐに手当しないと。

そう思って刺されたところを見たんだけど。
不思議なことにそこには傷一つついていなかった。
何度も何度も鏡でも見て確認したけど。
どこにも傷はない。
あんなにひどく針を刺されたのに。

多分、あの針は本物の針じゃなくて魔法で作られた幻の針だったんだと思う。
痛みは本物だったけどね。
小狼様だったらそんなことができても不思議じゃない。
わたしを傷つけないために。
小狼様は絶対にわたしを傷つけたりしない。
やさしい、のかなあ……

NEXT……


続く。

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