『ウサギとカメ』
世界迷作劇場その8 ウサギとカメ
キャスト
カメ:さくら
ウサギ:小狼
特別出演 森の動物達
ネコ:知世
森の村長さん:山崎
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むかしむかしのその昔。
とある森の中にカメさんとウサギさんが住んでいました。
このウサギさんはとっても意地悪でことあるごとにカメさんをいじめるのでした。
「お前の力では無理だ」
「なんでよ〜〜。わたしのどこが無理だっていうのよ〜〜」
「そんなのきまってる。そのノロマな足だ。そんな鈍足でこの森の平和を守ることなどできはしない」
「うえ〜〜ん。小狼くんのいじわる〜〜」
まあなんといいますか。
ウサギさんがカメさんをいじめるのは、好きな子ほどいじめたくなってしまうというお子ちゃまのアレなわけですね。
でもいじめられるカメさんの方も恋愛感情はお子ちゃまレベルですのでそんなのわかりません。
今日も親友のネコさんのところに泣きついてしまうのでした。
「ふえ〜〜ん、知世ちゃ〜〜ん。また小狼くんにいじめられたよ〜〜」
「あらあら。李くんも本当に困ったものですわね。もっと自分に素直になればいいのに」
「知世ちゃん、わたしくやしいよ。いつも小狼くんにバカにされて。小狼くんを見返してやりたいんだけどなんかいい方法ないかなあ」
「そういうことでしたらいい案がありますわ」
「なに? なんかいい案があるの?」
「かけっこ勝負ですわ。これで李くんを負かせば李くんももう、大きな口は叩けないでしょう」
「かけっこ? でも、わたし足おそいよ。小狼くんにもそれでいつもバカにされてるもん。かけっこじゃ小狼くんに勝てそうもないよ」
「いえいえ。わたしの見立てでは李くんは明らかに短距離向け。たしかに短い距離では勝ち目はありませんけど長距離ならばさくらちゃんに有利。さくらちゃんの持久力はわたしが保証いたします!」
「そ、そうかな」
「さくらちゃんなら絶対大丈夫ですわ! それにいざとなったらこれを使えばよいのです」
そう言いながらネコさんが取り出したのは小さなガラスの瓶。
中になにやらアヤシゲなお薬が入っています。
「それは?」
「眠り薬ですわ。万が一さくらちゃんが負けそうになったら、わたしがこれを給水所のお水に混ぜて李くんに渡します。そうすれば・・・・・・おほほほほ〜〜」
「え、でもそれって反則じゃないの。そんなことしていいのかなあ」
「さくらちゃん! さくらちゃんは李くんに勝ちたくないのですか? あの高慢ちきな鼻をへし折ってやりたいと思わないのですか?」
「そ、それはもちろん勝ちたいよ。で、でも〜〜」
「ならば行動あるのみですわ! 勝てばよろしいのです! 勝って栄光の未来を勝ち取るのです!」
「う、うん」
「その意気ですわ!(ニヤリ)」
ネコさんの強引な理論に押し切られてかけっこ勝負をすることになったカメさん。
なんかネコさん悪いこと企んでるような気がするのですが・・・・・・大丈夫でしょうか?
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さてさて。
こうして始まったかけっこ勝負。
「おれにかけっこで勝負とはな。その鈍足でおれに勝てると思ってるのか? 身の程知らずめ」
「そんなのやってみなきゃわからないでしょ!」
「やらなくてもわかる。お前には無理だ」
「ふん。あとでほえ面かかないでよね」
「二人とも用意はいいかな? それじゃあヨ〜〜イ・・・・・・」
パアァァァン!
スタートの号砲一発、走り出す二人。
足の速さではやっぱりウサギさんが圧倒的に有利。
カメさんはあっという間に引き離されてしまいます。
「ま、まだ始まったばかりだよ。ゴールは遠いんだから」
勝負はこれからと必死になって走り続けるカメさん。
汗をたらして長い道を進んでいきます。
し・か・し。
どんなに走っても追いつくどころか、ウサギさんの影さえ見ることができません。
いくつかの給水所を通り過ぎましたが、ウサギさんはとっくの昔に通り過ぎたとのこと。
最後の給水所を通過してもウサギさんの姿はどこにも見当たりません。
「お、おかしいな。知世ちゃんの眠り薬でねむっちゃってるはずなのに」
結局、最後の最後までウサギさんに追いつくことはできませんでした。
なんとかゴールはしたもののカメさん、力尽きてバッタリと倒れてしまいます。
倒れたカメさんをすでにゴールしていたウサギさんと森の仲間たちが取り囲みます。
「ハァハァ」
「ずいぶん遅かったな。待ちくたびれたぞ」
「小狼くん・・・・・・ど、どうして? なんで眠っちゃわなかったの〜〜?」
「なんの話だ。マラソンの途中で寝るやつなんかいないぞ」
「木之本さんおつかれ〜〜。よくがんばったね。まあ、結局勝負は李くんの勝ちになっちゃったけどね」
「そんなあ〜〜」
「勝負ありッッ!」
村長さんの決着宣言にカメさんはガックリとうなだれてしまいます。
あんなに頑張ったのに〜〜とか、知世ちゃんはなにやってるのよ〜〜とかいろいろ言いたいことはあるのですけど口には出すわけにはいきません。
「あ〜〜ん、くやしい〜〜。また小狼くんに負けちゃったよ〜〜」
地団駄を踏んで悔しがるカメさん。
で・す・が。
カメさんの受難はこれで終わったわけではありません。
むしろ、ここからが始まりだったりします。
「それじゃあさくら。掟通りお前の体はおれがいただくぞ」
「ほえ? 掟? なにそれ」
「今さらカマトトぶる気か。まあ、それもいいがな。それっ!」
「え? え? えぇぇぇ? ほ、ほえええぇぇぇ〜〜〜っっ!」
困惑するカメさんにウサギさんが襲い掛かります。
そして、手にした荒縄でカメさんを瞬く間に縛り上げてしまうのでした。
「できた! カメの甲羅を荒縄で縛り上げる! これが本当の亀甲縛りだ!」
うまいこと言ったつもりでドヤ顔をきめるウサギさん。
いや、それきまってませんから。
「なんなの、これ〜〜??」
「かけっこ勝負の敗者はその全てを勝者に捧げる。それが森の掟! 知らないとは言わせないぞ」
「そんなのはじめて聞いたよ〜〜」
「いけないなあ木之本さん。森の掟に逆らうなんて。そもそもかけっこは『賭家娘』っていってね〜〜」
賭家娘(かけっこ)・・・
その由来は明代において健脚をもってならした拳法家・偉望(ウェイ・ワン)と同じく健脚で知られた飛王(フェイワン)、二人の勝負にある。
万里の長城を往復するという勝負内容も凄まじいものであったが、それにも増して人の目を引いたのは二人がこの勝負に賭けたものであった。
偉望は己の一人娘・苺鈴(メイリン)を、飛王は己の家の財産の全てをこの勝負に賭けたのである。
どちらも己にとって命よりも大事なものを賭けたわけだが、結果は飛王の勝利に終わり、偉望はかけがえのない一人娘を失うこととなった。
この勝負以降、走力を競う勝負に財産や女性を賭けることが流行し、「家」と「娘」を「賭ける」すなわち「賭家娘」の語が誕生することとなったのである。
なお、近代においても好きな女の子の気を引くために運動会で競走に気合をいれる少年の姿が多々見られるがこの故事との関連性は明確になっていない。
民明書房刊 「スポーツの起源を探る」 より
「そういうわけだから。今日から木之本さんは李くんの所有物ってこと」
「そんなあ〜〜」
「あぁ・・・・・・。可哀想なさくらちゃん」
「知世ちゃん! 知世ちゃん、助けて!」
「お助けしたいのはやまやまなのですが掟は掟。掟に逆らうわけにはまいりません。可哀想ですけどこれも運命と思ってあきらめてくださいな」
「と、知世ちゃん? 知世ちゃん、まさかはじめから小狼くんと・・・・・・?」
まあ、ようするにそういうことだったわけです。
ネコさんも村長さんも森のみんなもグルだったのです。
用意周到なウサギさん、この日のために森のみんなを買収してたのです。
これがホントの出来レースってやつですかね〜〜。
それを察知できなかったカメさんはやっぱりポヤヤンさんだったということでしょう。
(おほほほ〜〜李くん、報酬のさくらちゃんの甲羅の下のお写真はお忘れなく〜〜)
緊縛されたカメさんを担ぎ上げたウサギさん、我が事成れりと満足そうにうなずきます。
「思ったよりいい肉づきをしてるな。今日の晩飯はスッポン鍋にするか」
「やめて〜〜。さくらスッポンじゃないよ〜〜。陸ガメだよ〜〜。食べないで〜〜」
「カン違いするな。スッポン鍋は精をつけるためだ。お前はなかなかタフそうだからな。責めるこっちもたっぷりと精をつけておかないとなあ。ククク・・・・・・」
「はううう〜〜〜〜」
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こうしてウサギさんにお持ち帰りされてしまったカメさん。
哀れにも甲羅を剥ぎ取られ、奥に隠されていた瑞々しいお肉をウサギさんにねっちりと貪られてしまうのでありました。
めでたしめでたし?
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(どこがめでたしめでたしなのよ〜〜。全然めでたくないよ〜〜!)
(あらあら。そんなことおっしゃって。本当は李くんにいぢめられて嬉しいんじゃありませんの)
(そ、そんなことないから! さくら、そんな変態さんじゃないから! チェンジ、チェンジ! キャスト変更!)
(そこまでおっしゃるならキャストを変更してみましょうか。でも、結末はあまり変わらないと思いますけど)
キャスト変更・・・・・・
魁! 男塾! PS3版発売記念。
キャスト変更版に続く。