『眠り姫の起こし方』

※別名義で発表した作品の再掲になります。
「一人遊び」の続きのお話になります。
※この先、R-18指定な内容を含みます。苦手な人と18歳未満の方はご遠慮ください。



「・・・・・・?」

マンションの玄関の前で小狼は怪訝な表情を浮かべた。
出かける前、玄関のドアに施しておいた結界にかすかな乱れがあったのだ。
非常にかすかな乱れではあるが、乱れがあることには間違いない。
何者かが小狼の留守に部屋に侵入したのだ。
鍵はかかったままである。このマンションの鍵は最新の電子ロック方式だ。
そこらの空き巣狙いにやぶれるものではない。
結界の乱れがごくわずかなことも、侵入者がただものではないことを告げている。

何者か―――

小狼は軽く深呼吸して全身に気を漲らせた。侵入者がまだ部屋に潜んでいる可能性を考えたからだ。
侵入者が害意を持つ者であれば闘いとなることも考えられる。
部屋に入った瞬間を狙われても大丈夫なように少しずつ、慎重にドアを開き―――そこで小狼はフッと頬を緩めた。
玄関に小さな女性用の靴が置いてあるのを見つけたからだ。この靴には見覚えがある。
彼の最愛の人の持ち物だ。侵入者の正体は彼女らしい。
彼女の魔力は小狼を遥かに凌ぐ。
その彼女が、伝説のクロウ・カード『抜(スルー)』を使うならば、小狼の結界などなんの役にも立たない。
彼女であれば、ドアの鍵も開けず、小狼の結界も通り抜けて侵入することも容易であったろう。

(もう来たのか・・・・・・。オレの方から行くつもりだったんだけどな)

空港に着いた時にさくらに日本に着いたことをメールで知らせている。それを見てマンションまで出迎えに来たのかと思ったのだ。
少し遅い時間だったので、さくらの家に行くのは明日にしようと思っていたのだが、さくらの方から来てしまったらしい。
それほど自分に会いたかったのか。
そう思うと少しこそばゆい。

「さくら、いるのか。今、帰ったぞ」

部屋の奥に声をかける。だが、返事はない。

「さくら、来てるんだろう? さくら?」

もう一度声をかけてみるが、やはり返事はない。部屋は静まり返っている。

(どういうつもりだ? まさか、どこかに隠れててオレを驚かすつもりか?)

それならそうで、やりようはある。素直に驚いてあげればいいだけだ。
実際のところ、さくらがどこに隠れていても魔力の気配でわかる。
今もドアを開けた瞬間からさくらの魔力を感じ取っている。

(ふふっ、それで隠れてるつもりか。まだまだ修行が足りないな、さくら)

魔力を隠しているつもりなのか、いつもよりも気配は小さいが居場所がわからなくなるほどではない。
さくらがいるのは寝室だ。
ベッドの奥にでも隠れているのだろうか。それとも、寝室に入った瞬間に抱きついてくるつもりだろうか。
どちらにしても、驚いたふりをしてあげればいい。それで彼女も満足するはずだ。

・・・・・・と考えながら寝室に入った小狼だったが、そこで彼が目にしたのは予想とは異なる光景だった。

「すぅっー・・・・・・ すぅっー・・・・・・」

愛しい人はどこにも隠れたりしてはいない。ベッドの上で安らかな寝息をたてている。
魔力の気配が小さかったのは、隠そうとしていたからではなく眠っていたためらしい。

(おいおい、どういうことだよ。メールをしてからまだ1時間も経ってないぞ?)

メールを見てからここに向かったのなら、部屋に入ってから実質30分も経っていないはずだ。
それなのにもう眠ってしまったのか? いくらなんでも早すぎる。ひょっとして、また魔力が足りなくなってるのか?
一瞬、そう思いかけた小狼だったが、あるものを見つけて自分の考えが間違いであることに気がついた。
さくらの頬に乾いた涙の痕があるのを見てしまったのだ。
さくらはここで泣いていたのだ。それがうれし涙であるはずはない。
さくらはここで悲しくて泣いていたのだ。寂しくて涙を流していたのだ。
何が悲しくて泣くのか―――
何が寂しくて涙を流すのか―――
決まっている。自分と会えないことが悲しいのだ。自分と会えないことが寂しいのだ。
そして小狼は理解した。
さくらがメールを見てからここに来たのではないことを。
おそらく、あのメールよりもずっと前にここに来たのだろう。
何のために―――?
自分に少しでも近づくためだ。『待つ』という苦しみを少しでも和らげるためだ。
かつて、己がさくらに課した約束。

『まっててくれるか』

それがさくらにとってどれほどに辛いものであったのか、あらためて思い知らされる。
さくらにとって『待つ』という行為はとてつもない苦痛なのだ。それがほんのわずかな時であったとしても。

「・・・・・・また待たせちゃったみたいだな。ゴメンな、さくら」

さくらの寝顔を見下ろす小狼の口から愛しい人への謝罪のつぶやきが漏れた。
すまない。許してくれ。
けれど、同時に喜びの感情も小狼の中に浮かぶ。
この少女はこれほどまでに自分を求めてくれる―――それが嬉しい。
かつて、自分がこの少女への恋を自覚した時、少女は自分ではない別の人のことを想っていた。
その人は自分も一度は魅かれたこともあるとても魅力的な人で、自分が叶うはずはないとあきらめていた時もあった。
その少女が、今は自分をこれほどまでに求めてくれている。あの時と比べたらまさに、夢のように幸せな時間だ。
小狼はベッドの横たわるさくらの全身を眺める。
今、この少女は自分のものだ。頭のてっぺんからつま先まで全て―――
頭のてっぺんからつま先まで・・・・・・?

「ん? なんだ、これ?」

そこで小狼はさくらのつま先に何か白いものがひっかかっていることに気がついた。
白いハンカチみたいなものがひっかかっている。
何気なく手を伸ばしてそれを広げ・・・・・・次の瞬間、小狼の顔面は沸騰した。

かぁぁぁぁ〜〜〜っ!!

一気に顔全体が真っ赤になる。湯気が立ち昇りそうな勢いである。
小狼が手にした白いもの・・・・・・その正体はさくらのパンティだったのだ。

「な、なななっ? な、なんで?」

パンティがここにあるということは、今、さくらはノーパンということである。
ベッドの上にノーパンで横たわる彼女。お年頃の男の子にとってこれほど破壊力のあるシチュエーションはそうはあるまい。
あわててベッドを見直すと、他にもいろいろと不自然なものが目に入る。
まず、シーツがおかしい。乱れすぎてる。家を出る前にきちんとシワをのばしていったはずだ。いかにさくらの寝相が悪くてもここまで乱れはしまい。
それにさくらの格好もよくよく見ると不自然さ大爆発である。
胸元がやけに開いててブラジャーが丸見えだ。そのブラジャーもずれかかっていてその下の膨らみが半分見えてしまっている。
スカートもなぜかボタンが外れていて、おまけに左手がその中に忍び込んでいる。
これらの意味するものは・・・・・・?

「ま、まさか? さくら、こ、ここで・・・・・・」
さくらがここで、オレのいないこの部屋の中で自分のあそこを指で慰めていた―――

『小狼くん・・・・・・寂しいよぉ・・・・・・』

オレの名を呼びながら―――
その光景を想像して小狼の顔面は再び沸騰した。頭の奥が真っ白になる。

ゴクッ

ノドが下品な音をたてる。
同時に身体の奥、底の方から熱いものが込み上がってくる。
それは愛しいものを愛でたいという純粋な思いだけではない。もっと激しい熱をもったなにかだ。
小狼の瞳に何かに憑りつかれたかのような妖しい光が灯り始める。
無理もない。この1週間、我慢していたのはさくらだけではない。小狼も我慢していたのだ。
それに耐え切れず、無理をしてスケジュールを切り詰めてようやく帰ってきたのだ。
そんなところへこんな美味しそうな『ご馳走』が並べられていたら、これはもう、おかしくなってもしょうがない。
さくらの妖しい寝姿は、小狼の中の『スイッチ』を押してしまったようだ。
小狼を『優しい少年』から『冷酷な魔術の後継者』に切り替えてしまう危険なスイッチを。

ぷち、ぷちっ

無言の小狼の指がさくらの上着のボタンを外していく。全てのボタンを外し終えると、そのまま指はブラジャーの中央の金具へと伸びた。
フロントホックのブラジャーは一瞬の遅滞の後に左右へとずり落ち、その下に隠されていた双つの膨らみを露にする。
その作業を終えても小狼の指は止まらない。次はさくらの下腹、スカートへと伸びていく。
こちらのボタンは最初から外されているのでずり下ろすだけでいい。
スルスルと何の抵抗も無くスカートが下ろされていく。

スルッ

可愛い靴下を履いたつま先をスカートが通り抜けると、もうさくらの身を隠すものは何一つなかった。
さくらの全てが小狼の目に曝されている。
細い首筋。
まだ幼さを残した白い双つの膨らみ。
なめらかな下腹。
ふくよかな太股。
そして、淡い柔毛に被われた秘密の花園も・・・・・・

(さくら・・・・・・キレイだ。とってもキレイだ・・・・・・)

予想を遥かに超える素晴らしい眺めに小狼はうっとりとした表情を浮かべた。
無論、さくらの裸を見るのはこれが初めてというわけではない。これまで何度も肌を重ねてきている。
ただ、いつもはさくらが恥ずかしがるので部屋を暗くしていた。そのため、こんなに明るいところでマジマジと見つめたことはない。
本当に素晴らしい。
こんな素晴らしい少女の全てが自分のものかと思うと、幸せすぎて眩暈をおこしそうになる。
彼女の親友であれば、この光景だけで充分に満たされたことだろう。
だが、小狼は男だ。眺めているだけでは満足できない。
それに、自分の部屋でさくらが一人、イケない遊びに耽っているという妄想が小狼を昂ぶらせている。
即、さくらの肌にむしゃぶりついてもおかしくはないほどの猛りだ。
にもかかわらず、小狼は数瞬、さくらを眺めるだけでその肌に手を伸ばそうとはしなかった。
意識の無い少女の身体を弄ぶことへの罪悪感が小狼を押しとどめていたのだ。
お互いに合意のもとでのエッチならばともかく、抵抗の余地のない状況で少女を汚すことを躊躇したためだ。
が、それもほんの数秒のこと。
昂ぶる男の欲望は、わずかな罪悪感をあっさりと吹き飛ばしあまつさえ、さらなる邪な欲望へと少年を誘う。
小狼の唇がさくらの肌へと近づいていく。その最初の目標は首すじ。

ちゅっ

と軽く触れるようなキス。次いで唇を貼り付け、所有の証を刻みつけるための長いキス。
その次の目標は胸の膨らみ。
手のひら全体でゆっくりと擦るようにさくらの下乳を愛撫する。
強い力は加えない。まだ膨らみきらない成長途上の胸の形を崩すことを怖れるかのような優しい愛撫。

ぺろっ

胸の頂点の蕾への愛撫も忘れてはいない。
これも歯を立てるような鋭い刺激は与えない。唇で包み、舌先で柔らかくなめす。

「ふぁ・・・・・・んぁぁ・・・・・・」

小狼の愛撫に反応し始めたのか、さくらの口から熱い吐息が漏れ始めた。
吐息だけではない。
胸の蕾も徐々に硬くしこり始め、頬もうっすらと上気して赤みが差してきている。
しかし、さくらが目覚める気配はない。
意識は眠りに落ちたまま、身体だけが小狼の愛撫に反応している。
その様子に小狼は満足げな笑みを浮かべた。

(さくら、感じてきたみたいだな。でも、まだ目を覚ましそうにないな。ならお次は・・・・・・)

以前、ケルベロスに聞いたことがある。さくらは一度眠ってしまうとなかなか目を覚まさないそうだ。ケルベロスが怒鳴っても蹴っ飛ばしても起きないらしい。
ケルベロスから聞いたこの話と、淫らな格好で眠りこけるさくらの姿が結びついた時、小狼の中で邪悪な欲望が生まれた。

眠り姫を穢す―――

眠ったままのさくらの身体を弄ぶ。
けだものじみた発想ではあるが、この発想の元にはかつて学芸際で演じた眠り姫の影響がある。
あの時は今とは逆に動けない小狼がさくらに唇を奪われそうになった。
女装した上に女の子に唇を奪われそうになるという、小狼にとっては屈辱的な想い出だ。今だに笑い話のネタにされることがある。
あの屈辱をここで一掃する。眠り姫の身体を穢すという、遥かに邪悪な行為によって。
そのためにキツイ刺激を与えない、緩い愛撫だけを続けている。ゆるゆると弄うように。

ぬちゃぁ・・・・・・

小狼の指が目覚めぬさくらの秘所を責めはじめる。
そこは小狼の愛撫によってか、あるいは自らの行為の余韻によるものか、すでに充分な潤いをたたえており、小狼の指を何の抵抗も無く受け入れた。
指だけでは足りず舌でもそこを責める。
花弁を押し広げ、あらわになったサーモンピンクの肉壁を舌でなぞりあげる。
小狼の舌が動く度にさくらのそこは淫らな雫を垂れ流す。それを小狼の舌が啜る。
時折、より深い箇所へと指を挿し入れると、さくらはビクンビクンと身を震わせながら声をあげる。

「あぅぅ・・・・・・んん・・・・・・」

それでも目を覚まさない。
そんなさくらの痴態が小狼の欲望をさらにエスカレートさせて行く。

(すごい・・・・・・女の子のここって、こんなに濡れるんだ・・・・・・。知らなかった。いつもこんなになってオレを受け入れてたのか・・・・・・。
すごい・・・・・・すごいキレイだ・・・・・・)

いつもは薄明かりの中、おぼろげにしか見られなかった秘密の泉。それが今、白日の下に曝され無抵抗で自分の指を飲み込み、しとどに蜜を垂らしている。
もう、たまらない。
挿し入れる指の本数を増やし、敏感な肉芽もこすりあげ、蜜がシーツまで滴るのもかまわず、夢中になってしゃぶりつく。

「くぅぅ・・・・・・? あっ・・・・・・」

ここまでくると、さすがにさくらの意識も覚醒してきたようだ。声の質が変わってきている。
あと少し刺激を加えれば完全に目を覚ますだろう。

(さすがにそろそろ起きるか。さて、最後はどうしようかな・・・・・・)

あともう一つ、新しい刺激を与えればさくらは目を覚ます。その一つをどこにどうやって与えるか。
最有力候補は唇だ。今日はまだ一度もキスをしていない。今の状態で深いキスをしてやればおそらく目を覚ます。

眠り姫を起こすのは王子様のキス―――

定番の台詞が小狼の頭をよぎる。そして、それを実現しようと唇をさくらのそれへと近づけた。
しかし。
あと少しで唇が触れ合うというところで小狼は動きを止めた。
そして身体を起こし、さくらの全身を見渡す。その瞳には、先ほどよりもさらに熱く、さらに禍々しい光が宿っている。
唇を合わせようとした瞬間、ある邪悪な閃きが小狼の頭に浮かんでしまったのだ。

「くくっ、そうだよな。眠り姫を起こすのは王子様のキスだよな。でも、さくら。オレは優しい王子様なんかじゃないんだよ。残念だった
なぁ、さくら・・・・・・」

凶悪としか言いようの無い笑みを浮かべながら、さくらの腰を抱え上げる。
そして、太股を割り裂いて腰を差し入れ、その付け根に己の分身をあてがい―――

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「あぁぁぁっ!? な、なに? んぁぁぁぁぁぁっっ!!」

絶叫を上げながらさくらは飛び起きた。いや、飛び起きようとしたができなかった。
上半身を強い力でベッドに押さえつけられている。
自分の身に何が起きたのか全くわからない。
とても熱いモノが自分の身体の奥深いところで荒れ狂っている。

「な、なに!? なんなのこれぇっ!?」
「ようやくお目覚めか」
「小狼くん!? ど、どうして? 帰るのは明日だって・・・・・・」
「予定を切り上げてきたんだよ」

あわてて見上げた瞳に映ったのは、さっきまで思い描いていた愛しい人の顔。
それはいいのだが、今の状況がぜんぜんわからない。いつのまにか洋服は全部脱がされてしまっているし、おまけにトンでもないことをされている。

「ひぅぅっ! な、なにをやってるのよ小狼くん!」
「なにって、見ればわかるだろう」
「ダ、ダメだよ小狼くん! こんな・・・・・・あぅぅっ!」
「だってしょうがないじゃないか。急いで帰ってきたらお前がこんなになってるんだから。こんなもの見せられたらガマンできないよ」
「そんなこと言われても・・・・・・しゃ、小狼くん、ダメェッ! こんなのダメぇぇ! 小狼くん、やめて・・・・・・ひゃぅぅ!」

もう完全にパニックだ。身体はすでに小狼を受け入れて熱く悶えているが、精神の方がそれに追いついていない。

「ゴメン、さくら。オレの方はもうガマンできない。このままイカせてくれ」
「そ、そんな・・・・・・ダメ、小狼くん・・・・・・」
「さくら・・・・・・いくぞ・・・・・・」
「ダ・・・ダメ・・・・・・小狼くん、やめて・・・・・・。やめ・・・・・・あぅぅぅぅっっ!!」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「もう、小狼くんのバカ!」
「わわわ、そんなに怒るなよ、さくら。悪かったって思ってるよ」
「それだけなの!? 眠ってる女の子にエッチなことするなんて犯罪だよ! お巡りさんに言いつけちゃう!」
「そ、それは勘弁してくれ。なぁ、さくら。何でもするから機嫌を直してくれよ」
「ホントに? ホントになんでもしてくれる?」
「あぁ。なんでもするよ」
「じゃあね・・・・・・もう1回ちゃんとして!」
「え? もう1回って、何を?」
「ちゃんとキスして! 眠ってるところに不意打ちなんかじゃないのを」
「ちゃんとキス? こうか?」
「ん、ふぅ・・・・・・」
「これでいいのか?」
「まだ・・・・・・まだダメ・・・・・・。次は抱きしめて・・・・・・」
「こうか?」
「あ・・・・・・あぁ・・・・・・。つ、次は・・・・・・」
「次はなんだ、さくら? どうして欲しいんだ、さくら・・・・・・」
「次は・・・・・・次は・・・・・・」

恋人達の夜は続く・・・・・・

END


この作品はひがしとは別名で発表した作品の再掲です。
すでに読まれていた方はすいません。

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