『一人遊び』

※別名義で発表した作品の再掲になります。
※この先、R-18指定な内容を含みます。苦手な人と18歳未満の方はご遠慮ください。



「星の力を秘めし鍵よ真の姿を我の前に示せ―――『抜(スルー)』!」

パァァッ

少女が呪文を唱えると輝く魔方陣が現れ、その上で一枚のカードが女性へと姿を変える。
カードから現れた女性は不思議な光を放つと、目の前のドアへ吸い込まれるように姿を消した。
女性に続いて少女もドアへと歩き出す。不思議なことに、少女は頑丈そうな鉄のドアをまるで存在しないかのように通り抜けた。
ドアを抜けた先はきれいに掃除された玄関だった。これもきれいに掃除され、チリ一つ落ちていない廊下へと繋がっている。
どうやらここはマンション、それもかなり高級なマンションらしい。
廊下もその先に見えるダイニングの広さもそこらの安普請のものとは大違いだ。
そんなマンションの中を少女は抜き足、差し足で歩いていく。
ダイニングを抜け、居間を通り過ぎて、お目当ての部屋へと急ぐ。
少女の目的は一番奥にある寝室。正確にはその寝室の主。
ついに辿り着いた寝室のドアの前で深呼吸をし、心を落ち着けてから―――

「小狼くん!」

恋人の名を呼びながら部屋に飛び込んださくらを迎えたのは、誰もいない静寂の空間だった。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「いるわけないよね・・・・・・」

ベッドに腰掛けてポツリと寂しげなひとり言を漏らす。それは始めからわかっていたことだ。
小狼は今、日本にはいない。実家の都合で香港に戻っている。

『小狼くん、香港に帰っちゃうの?』
『帰るといってもほんの一週間だ。用事が終わったらすぐ帰ってくるよ』
『一週間かぁ』
『さくら。いつもいつも寂しい思いをさせてゴメンな。できるだけ早く戻れるようにするから』
『ううん、いいの! 一週間くらいすぐだもん。気にしないで』

そう言って笑顔で小狼を送り出したさくらだったが、空元気は三日ともたなかった。
たかだ一週間だ。一年以上も小狼を待ち続けたあの日々に比べればなんでもない。
そう思っていた。なのに。

「小狼くん。寂しいよ・・・・・・」

今はたまらなく寂しい。
小狼が自分の傍にいない。ただそれだけのことに耐えることができない。
以前はこうではなかった。
いつ戻ってくるかわからない小狼を、ひたすらに待ち続けることができた。
無論、あの時も苦しくなかったわけではない。堪えきれずに涙で枕を濡らした夜もあった。
それでも待つことができた。小狼を信じてひたすらに長い時間を待ち続けた。
一日、一日と日が過ぎていくのは、それだけ小狼に会える日に近づいているのだと信じることができた。

しかし、今はダメだ。
日が過ぎる度に寂しさだけが増して行く。
たったの一週間、それももうあと何日もない―――頭ではそう考えているのに、心はきしむような悲鳴を上げ続けている。
ついには寂しさに耐え切れず、魔法を使って小狼の部屋に忍び込んでしまうほどに。
もちろん、部屋に入ったところで小狼に会えないのはわかっている。
それでも、ほんのわずかにでも小狼の温もりに触れていたかった。

「わたし・・・・・・弱くなっちゃったのかな」

その理由は自分でもわかっている。小狼と一緒にいることの心地よさを自覚してしまったからだ。
かつて、クロウ・カードを追いかけていた時、自分はそれを自覚していなかった。
小狼くんが助けてくれる、優しくしてくれる、それを当たり前のことだと感じていた。
それが自分にとってどれほど大事なものであるか、小狼がいなくなるまで気づくことができなかった。

『明日、香港に帰る』

そう告げられた時の衝撃は今でも忘れることができない。

『これからはずっと一緒だ』

舞い散る桜の中で再会したあの日の喜びも。
そして、それからの喜びに満ちた日々は、さくらの中の小狼の存在を以前とは比べ物にならないほどに大きなものへと育て上げていった。
ほんのわずかな時間、離れることに耐えられないほどに。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「小狼くんの匂いだぁ・・・・・・」

さくらはベッドの上で横になってマクラに顔を埋めながら、かすかに感じられる小狼の匂いを思い切り吸い込んだ。
せっかく忍び込んだ小狼の部屋だったのだが、持ち主の潔癖症ゆえか部屋は一分の隙も無いほどに完璧に清掃されており、朝早い出発だったにもかかわらずシーツもキレイに洗濯されていた。
そのせいで部屋からはさくらが思っていたほどには小狼のぬくもりを感じることはできなかった。
ほんのわずかに小狼を感じさせてくれたのは彼の枕だけだ。これだけはさすがに洗っていく暇はなかったらしい。感じられると言っても本当にかすかな、匂いとも呼べぬほどの残り香だ。さくらでなければ気づくことはなかったろう。
だが、今のさくらにはそれで充分だった。
ここ数日の間、求め続けていたものをようやく見つけてさくらは安堵する。
と同時に、さくらの全身に甘い痺れが走った。

「あ・・・・・・」

ツーンと脳天からつま先まで痺れるような甘い刺激が走り抜けていく。彼に抱きしめられた時に感じるのと同じ痺れだ。
再びマクラに顔をすりつけて小狼の匂いを吸い込むと、その痺れはさらに強いものとなった。
無理もない。
このベッドの上で横になる―――それは彼に愛される時間の始まりを意味しているのだから。
さくら自身が意識していなかったそれを、さくらの身体は敏感に感じ取ったらしい。
呼吸を繰り返す度に、彼の匂いを感じる度に痺れは強くなり、いつかさくらの手は自分の胸元へと伸びていた。

「んんっ・・・・・・」

服の上から膨らみかけの胸をさすり始める。始めは緩やかに手のひら全体で胸を、やがては少しずつ胸の頂点を集中して。

(ダメ・・・・・・こんなことしちゃダメ・・・・・・)

理性がそう命じても胸をさする手の動きは止まらない。ついには胸だけでは我慢できなくなったのか、反対の手が下着の中へと忍び込んだ。
一瞬、躊躇いを見せた後、花弁を割って二本の指が奥へと挿し入れられる。
そこは既に充分な潤いを示していた。

「ひぁっ! ふぅぅ・・・・・・」

びくん、びくんとさくらの体が震える。
それでも指の動きは止まらない。さらに強い刺激を求めて奥へと滑りこんで行く。
胸を擦る手も止まらない。服の上からでは物足りなくなったのか、今は上着を首まではだけて直に胸をさすっている。
その頂点の蕾は痛々しいほどに充血してその存在を誇示しており、指が触れるたびにさくらの口は熱い吐息を漏らした。

(わたし、なにやってるの? 男の子の部屋に忍び込んで一人でエッチなことしてる・・・・・・ふぁっ・・・・・・)

男の子の部屋に無断で侵入したあげく、ベッドの上で一人エッチをしている。
とんでもなく淫らでふしだらな行為だ。そんなエッチなことをしてるなんて自分でも信じられない。
いけないヤメなきゃ・・・・・・こんなことしてちゃダメだ・・・・・・
そう思っても一度火がついた体の疼きを抑えることができない。
それどころか、イケないことをしているという背徳感がさくらの理性を蕩かしていく。
もしも、こんなところを誰かに見られたら?
そう考えただけでゾクゾクしたものが背筋を走り、それだけで頂点へと達してしまいそうだ。

いや。
誰かにではなくて彼に―――もしも、小狼に見られてしまったら?

(あ・・・・・・そうだ。小狼くん言ってた。できるだけ早く帰るようにするって。ひょっとしたら今日、帰ってきちゃうかも)

もしかしたら、もう今すぐにでも彼は帰ってきてしまうかもしれない。
いや、ひょっとしたらもう、すぐそこまで来てるのかもしれない。
もう、すぐそこに―――さくらが気がつかないうちに玄関を開けて廊下を渡り、この部屋の前まで―――

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「さくら!?」

部屋に入ってきた小狼くんはすごいビックリした顔をしてた。
あたりまえだよね。
誰もいないはずの部屋に人がいたら誰だって驚くよ。それも女の子が、しかもこんなエッチな格好でいやらしいことをしてるんだから。
でも、小狼くんはすぐにこれがどんな状況なのかを理解してくれたみたい。無言でわたしを抱き寄せると、優しくキスをしてくれた。
軽く啄ばむだけのキス。まるで、泣いてる子供をあやしてるみたいなキス。
ただそれだけで、さっきまでの寂しさはウソのように消えていった。

「ゴメンな、さくら。やっぱり寂しい思いをさせちゃったみたいだな」
「うん。でも、もういいの。小狼くん、ちゃんと戻ってきてくれたから」
「さくら・・・・・・」

一度見つめあった後、もう一度キス。
今度のは深い、恋人同士のキスだ。忍び込んできた小狼くんの舌に自分のそれを夢中で絡み付ける。
んん・・・・・・すごい。小狼くんのベロ、まるで別の生き物みたい。熱くて、柔らかくて、でも強くて・・・・・・わたしのベロ、ちぎられちゃいそう。ちぎられちゃってもいいからもっと・・・・・・そう思ったところで小狼くんの口は離れた。
うわ、わたしと小狼くんのベロ、よだれの糸で繋がってる。なんか、すごくいやらしいな。
あ、小狼くん、またキスするの? ん? あれ? お口にじゃないの? あ・・・・・・。だ、ダメだよ小狼くん! そこは・・・・・・

「だめだよ、小狼くん! 痕がついちゃう。明日は学校があるんだよ? みんなに見られちゃう!」
「かまわないさ。見たいやつには見せてやればいい」
「だめ・・・・・・小狼くん。や・・・・・・だめ・・・・・・」

小狼くんの唇は今度はわたしの首に張り付いた。ちゅ〜〜っと音をたててわたしの首を吸う。
痕がついちゃう! みんなに見られちゃう! わたしは必死で抵抗するんだけど、小狼くんは許してくれない。
まるで、わたしが無駄な抵抗をするのを楽しんでるみたいに何度も何度もキスを繰り返す。
首の次は胸だ。
最初は胸のふもとから。そして徐々に徐々にとその頂点へ。頂点に辿り着いてもすぐにはそこを責めてくれない。
まずは軽く、触れるか触れないかという微妙なタッチのキス。お次は舌先で優しくなぞる。もっと強い刺激を求めて硬く尖るそこをじらすための残酷な優しさ。

「や・・・小狼く・・・ん・・・・・・」

じらされて待ちきれなくなったわたしが声をあげた瞬間、蕾が強く吸い上げられた。それまでの緩い愛撫から一転した激しい刺激。それに耐え切れずにわたしはまた、はしたない声をあげてしまう。
もちろん、小狼くんの責めはこれで終わりじゃない。先ほどから責めを待ちわびて自己主張し続けていたもう一つの蕾へも同じキス。
そちらもたっぷりと愛した後は、もう一度最初の蕾へ。そしてまた反対側へ。小狼くんの唇と指が幾度もわたしの二つの膨らみを往復する。
そして、その度にわたしは情けない声をあげてしまうのだった。

「はぁ、はぁ・・・」

ようやく小狼くんの唇が離れた時には、わたしの全身はくにゃくにゃのコンニャクみたいになってた。全然力が入らない。
そんなわたしを小狼くんは笑いながら見下ろしてる。
さっきと同じ優しい微笑なんだけど、気のせいかな。ちょっとだけ、いやらしい笑い方に見えるよ。
小狼くん、なにかとってもエッチなこと考えてるのかな〜〜と思ったんだけど、それは大当たりだったみたい。
あっと思った時には、太ももをつかまれて足を大きく開かれていた。
さすがに恥ずかしくて足を閉じようとするんだけど、ふにゃふにゃになった身体には力が入らない。
あぁ、小狼くんに見られてる・・・・・・わたしの恥ずかしいところを。
小狼くんを欲しがっていやらしい涎を垂らしているところを・・・・・・

「さくらのここ、すごいよ。こんなに濡れてる」
「いやぁ・・・・・・。恥ずかしいこと言わないでぇ・・・・・・」
「恥ずかしい? オレは嬉しいよ。さくらがこんなになってオレを待っててくれたなんて」
「小狼くん・・・・・・」
「さくら。いくよ。いいかい?」
「うん。ちょうだい。小狼くんのを・・・・・・」

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「んぁぁっ!」

ふいに悲鳴のような声を上げてさくらは身悶えした。
妄想の中の小狼の責めに夢中になるあまり、乳首を摘む指に力が入りすぎてしまったのだ。
胸先から伝わった痛みに、さくらは一瞬だけ妄想の世界から現実へと引き戻された。
が、それはほんの一瞬のことで、熱く火照った肉の疼きは再びさくらを妄想の世界へと引きずり込んでいく。
さらに深い淫らで爛れた世界へと。

そうだ。
小狼くんは誇り高き、李一族の当主様だ。
高潔で厳格な家で育った小狼くんが、男の子の部屋に忍び込んでエッチなことをするようないやらしい女の子を許すはずがない。
もしも見つかったら、優しく愛してくれなんかしない。
多分、オシオキされちゃう。それも、とってもキツくて―――泣いちゃうくらいに厳しいオシオキだ―――

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「さくら。お前、なにをやってるんだ」
「しゃ、小狼くん!? どうして!? 今日はまだ帰らないって言ってたのに」
「仕事が思ったより早くかたづいたんでな。それよりさくら。お前はここで一体、何をやってたんだ?」
「あ、あの・・・・・・そ、それは・・・・・・」
「この手についてるのは何なのか聞いてるんだよ」

小狼くんはわたしの右手首を掴むと、強引に目の前に突きつけてきた。淫らな蜜でベトベトになった指が目の前でふられる。
恥ずかしさに耐えられなくて顔を背けたら、指を顔になすり付けられた。
やだ、やめて・・・・・・いやらしいことしないで・・・・・・そう言いたくても声が出せない。そんないやらしいことをしてたのは自分の方だとわかってるからだ。
ミジメな沈黙に陥ったわたしに、小狼くんは残酷な追い討ちをかけてくる。

「そもそもお前、どうやってここに入った? 鍵はちゃんとかかってたぞ。魔法を使ったのか。答えろよ、さくら」
「はい・・・・・・。『抜』のカードを使いました・・・・・・」
「ほぉ〜〜。魔法を使って男の部屋に忍び込んで一人エッチか。ずいぶんと大胆な真似をするようになったなぁ、さくら。気持ちよかったか?」
「いや・・・・・・。いやらしいこと言わないで・・・・・・」
「いやらしいのはお前の方だろう? まったく。そんなんで李家の当主夫人が務まると思ってるのか。どうやら、お前には少し『教育』が必要みたいだな」
「え・・・? 小狼くん? 教育ってなにする・・・・・・きゃあっ!」

逃げる間もなくわたしはベッドに押し倒されていた。
そのまま唇を奪われる。いつもの優しいキスとは違う、荒々しい乱暴なキスだ。小狼くんの舌がわたしの口の中でメチャクチャに暴れ回る。
あまりの乱暴さに怖くなって小狼くんを押しのけようとして―――そこでわたしは気がついた。
手が動かせない。いや、手だけじゃない。足も動かせない。力で押さえつけられているのとは違う。手足の感覚が全然無い。まるで、手足がなくなってしまったみたいだ。

「やぁ・・・・・・あ・・・・・・」

ようやく唇を解放されてもわたしは悲鳴を上げることもできなかった。声を出すこともできなくなってる。どんなに頑張っても、かすれた呻き声が洩れるだけだ。手足を動かすこともできず、声をあげることもできずに、ただ震えながら小狼くんを見上げることしかできない。
そんなわたしを小狼くんは笑いながら見下ろしてる。
いつもの優しい微笑とは違う、冷たい―――李一族の当主様の笑い方だ。
抵抗できないわたしの胸を小狼くんはメチャクチャに揉みしだく。
やめてぇっ、そんなに力いっぱい掴まないでぇ! さくらの胸が潰れちゃう!
必死で許しを乞おうとしても、もちろんそれは声にならない。無様なあえぎ声をあげて小狼くんの耳を楽しませるだけ。
揉むだけでは物足りなくなったのか、小狼くんは胸の一番敏感な部分に口をつけて吸い始めた。
これもいつもの優しい愛し方とは全然違う、激しい責め方だ。歯をたてて突起の先端を食い千切らんばかりに引き伸ばす。
痛いっ! もうやめてぇっ! 許してぇっ!
声にならぬ必死の叫びとは裏腹に、わたしの身体はいやらしい蜜を垂れ流してしまう。
どんな痛みも小狼くんにされてる―――そう思うだけでわたしの身体は燃え上がっていく。
そして、小狼くんはそんなわたしの反応を見逃しはしない。

「なんだ、さくら。お前、こんなヒドイことされて感じてるのか」

言いながら、わたしのあそこに指を突き入れてぬちゃぬちゃと音を立てながら掻き回した。これにはもう、わたしは耐えることができない。
こんなヒドイことをされてイッちゃうなんて―――! そのミジメさにむしろゾクゾクする心地よさを感じながらわたしは絶頂に達した。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
「やれやれ。まさかさくらがここまでエッチな女の子だとは思わなかったよ。お前にはもっとキツイ『教育』じゃないとダメみたいだな」

わたしのイヤラシイ反応に興奮してきたのか、小狼くんの目に更なる凶暴な光が宿る。
懐から何か紙みたいなものを取り出すと、わたしの胸や太股、そしてあそこの上へと貼り始めた。
絶頂の余韻でぼぅっとなっていたわたしは、すぐにはそれが何なのか気づけない。
けど、小狼くんが紙を張り終えて手を離した時、わたしにもそれが何なのかわかった。

「!? ひっ・・・・・・」

紙に見えたものは呪符だった。「雷帝」の文字が読み取れる。小狼くんがいつも使っている呪符、あれがわたしの素肌に、それも一番敏感な箇所に貼り付けられている。
ここでもしも呪文を唱えられたら・・・・・・!

「さくら。この『教育』は少しばかりキツイぞ。ま、お前みたいなイヤラシイ女の子にはこれくらいが丁度いいのかも知れないけどな」

ゾッとするほど冷たい小狼くんの声が響く。もちろん小狼くんのことだ。わたしがケガをしないように手加減してくれるのはわかってる。
だとしても、それはこれまでの責めとは比較にならないくらいのショックには違いない。

「い・・・・・・や・・・・・・ぁぁ・・・・・・」
「いくぞ、さくら。覚悟はいいか・・・・・・雷帝・・・・・・」

ブルブルと身を震わせることしかできない哀れな生贄の子羊に、李家当主様の裁きの雷が―――

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「くあぁ・・・・・・」

現実世界の身体にもたらされる刺激が再びさくらを覚醒させる。
しかし、まだ正気には戻らない。頂点に達していない身体の火照りは治まりそうもない。
ただちょっとばかり妄想の方向性が変化しただけだ。

そうだ―――小狼くんはわたしにヒドイことなんかしない。絶対にわたしが痛がるようなことなんかしない。
たとえわたしをいじめる時でも。
そう、小狼くんは―――とっても優しくわたしをいじめてくれる。

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「や・・・・・・こんなのダメ・・・・・・あ・・・・・・」

さくらの妄想はエスカレートしていく。
いつの間にか、さくらを責める小狼は何人にも増えていた。
背後から両腕を押さえつけた小狼が首筋に舌を這わせる。
下半身に取り付いた小狼は、さくらの両足を大きく広げ、花弁から溢れる蜜を舐めとるのに夢中だ。
二つの胸の膨らみは、それぞれが別の小狼の指に揉まれ潰され、搗き立ての餅のようにグニャグニャと形を変える。
何本もの腕と何十本もの指、何枚もの舌が同時にさくらの身体を愛撫する。
さらに言葉でさくらを苛めるのも忘れてはいない。
ありえない責めに悶え、のたうつさくらの耳に淫靡な毒が注ぎ込まれる。

「さくらはイヤラシイ子だな。こんなヒドイことをされて感じるなんて」
「や・・・・・・違うよ・・・・・・さくら、イヤラシイ子じゃないもん・・・・・・」
「じゃあ、これはなんだ?」

小狼の指がさくらの秘所でぬちゃぬちゃと卑猥な音をたてる。
心と身体を一緒にねぶる残酷な責め。意地悪なのに優しい、悪魔のような責め。
これに耐えることなど無理だ。

「ひぁぁっ!」

指が秘所を抉る度にびくびくと身体を震わせて反応し、小狼を悦ばせてしまう。
あられもない声をあげるさくらを小狼はさらに責め立てる。
その瞳は名前どおり、獲物を見つめる狼のそれだ。

けれど。

獣の眼差しはさくらの放った一言で優しい恋人のそれへと変わるのだった。

「男に無理やりエッチなことをされて、こんなになってるのにか? 素直になれよ、さくら。さくらはエッチな子なんだろ」
「ちがう・・・・・・よ・・・・・・」
「どこが違うんだ」
「男の子にされてるからじゃないよ。小狼くんだからだよ! 小狼くんにされてるからこんなになっちゃうんだよぉっ!」
「!!」
「寂しかったの! 小狼くんがいなくて寂しかったの! だから、だから、わたし・・・・・・んぁ・・・・・・」

悲痛な叫びは最後まで続かず、小狼の唇に塞がれる。
――本当は全部わかってるよ。意地悪してゴメンな―――
無言のキスから伝わってくる彼の思いにさくらは深い安堵を感じた。

やっぱり小狼くんはわたしのことを全部わかってくれてる。
もう何も遠慮しなくていいんだ。ただ―――小狼くんに自分の全てを任せればいい―――
わたしの全てを―――

ぬるぅっ

小狼に貫かれた時には、もはや声を上げることもできなかった。
求め続けたものが己の内を満たしていく、ただひたすらにその悦びに酔いしれる。
手足を拘束されたミジメな姿勢も全く気にならない。
むしろ、今、自分は愛する人にメチャクチャにされている―――小狼くんのオモチャにされてる―――
倒錯した感情が快感をさらに昂ぶらせていく。

小狼くん、もっと・・・・・・
もっとちょうだい・・・・・・小狼くんを・・・・・・
小狼くんを!

小狼くん・・・・・・

―――――――――――――――――――――――――――――――――

「小狼くん、来てくれなかったな・・・・・・」

絶頂の余韻から抜け出て我に返ったさくらは寂しげにつぶやいた。
それはわかっていたことだ。
小狼が帰ってくるのは明日の夜遅く。来てくれるわけはない。そんなのは最初からわかりきっていたことだ。
ここに来ても小狼はいない。こんなことをしても寂しさを忘れられるのは一時だけのこと。その後は、今まで以上の寂しさがおそってくる。
それもわかっていた。わかってはいたけど―――それでも、来ずにはいられなかった。
ほんの少しでもいいから小狼の匂いを感じていたかった。

「小狼くん・・・・・・一人じゃ寂しいよぉ・・・・・・」

寂しさを紛らわすためにか、ベッドに沈んださくらの指は再び秘所へと伸びていくのだった。


その夜、用事を切り上げて予定より早く帰国した小狼は、自分のベッドの上に半裸で眠りこけるさくらを見つけて大いにあわてることになるのですが、それはまた別のお話です。

END


この作品はひがしとは別名で発表した作品の再掲です。
すでに読まれていた方はすいません。

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