『知世ちゃんお誕生日記念話・G13』


キャスト
ゴルゴ13:国籍、年齢、本名、その他一切不明
依頼人(クライアント):大道寺知世
標的(ターゲット):ひがし某

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リメイク……過去に制作された作品を作り直すの意味である。
近年のアニメ業界においてはこの分野にファンの熱い視線が注がれている。
宇宙戦艦ヤマト、おそ松さん、聖闘士星矢……などなど過去大ヒットした作品のリメイク作品が過去に劣らぬヒットを呼んでいるためだ。
いずれも過去作のファンだけでなく、新たなファン層を開拓し一定の成功を収めている。
しかし、リメイク作品ならではの問題もまた多い……


ゴルゴ13 第1236話

『過ぎ去りし時』



PART1 ある学園の風景・午後

「さくらちゃん、ちょっとお願いがあるのですがよろしいでしょうか」
「なに知世ちゃん。あらたまってお願いなんて」
「実はこの間捕獲した『飛翔(フライト)』のカードのことですが……」
「『飛翔(フライト)』?」
「あれを今夜少しお貸し願えないでしょうか」
「いいけど。でも、何に使うの?」
「はい。実はこの間の『転寝(スヌーズ)』さんを捕まえた時のあの動き。あれをちょっと体験したくなりまして」
「あれを? すっごく大変だったよ」
「さくらちゃん。実はわたし、一度空を飛んでみたかったんです。小学生の時から空を飛ぶさくらちゃんをずっと見てましたから。一度でいいから空を飛んでみたいんです」
「そっかあ。でももう夜だよ。いいの?」
「いえ、夜だからいいのですわ。昼では誰かに見られてしまう可能性がありますから」
「わかったよ。でも、あんまり無理しないでね」
「ありがとうございます、さくらちゃん。うふふふ……」

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PART2 少女からの依頼

「これをご覧になってください」
「カードキャプターさくら新シリーズ開始……世界が待ってた新連載……か。ずいぶんと話題になっているようだな」
「はい。そこは問題ありません。問題はファンの反応です」
「なかなか評判はいいと聞いているが」
「はい。ファンの大半は好意的な意見を上げてくれています。ですが……こちらをご覧ください」

497 名前:nameless 投稿日:2017/07/06(木) 18:47:19.18 ID:XXXXX
旧作見てワロタ。知世のビデオ、デカすぎる!

498 名前:nameless 投稿日:2017/07/06(木) 18:33:42.32 ID:XXXXX
新旧知世比較画像。一人だけ20年経ってる!

499 名前:nameless 投稿日:2017/07/06(木) 19:12:45.12 ID:XXXXX
> 498
マジ? 知世、アラサー疑惑?

「このように心無い中傷を繰り返す輩もまたいます」
「それはしょうがないことだな。どんな作品にもそういうやつはいる。気にしないことだ……」
「ええ、わたしもはじめのうちはそう思っていました。ですが!」
「ですが、なんだ?」
「わたし、気づいてしまいましたの。これらの書き込み、巧妙に偽装されていますが……発言者は同一人物です!」
「…………」
「プロバイダにも裏から手を回して確認いたしました。全てではありませんけれど発端となる書き込みを行っているのは同一人物……この男ですわ!」
「…………」
「ひがし のりすけXX歳、会社員。間違いありません。この男はわたしの社会的評判を落とすためにこのような嫌がらせを繰り返しているのです」
「…………」
「むろん、このような男を放置するなどもってのほか。わたしも早急に男を排除すべく手はうちました。しかし……」
「問題があったのか」
「はい。この男もわたしの報復は想定内だったようです。現在、ある場所に身を潜めています。それがここです」

ピッ
ピッ

「ここか。なるほどなかなかいい場所に目をつけたな」
「はい。ここに篭られては手の出しようがありません」
「たしかに。これでは出てくるのを待つ他ない」
「いえ! たしかに狙撃は困難な場所です。ですが、わたしどもの方で『足場』は確保いたします。あとは貴方のお力さえ借りられれば……ゴル、いえ、ミスター・デューク東郷!」
「くわしい話を聞かせてもらおうか……」

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PART3 高度600メートルにて

「知世にスマホ? にあわねーー! 知世はやはりあのでかいビデオ担いでないと。一人だけ20世紀! ……っと。これでまた煽れるな」

机の上に広げたノートパソコンに何かを書き込んだ後、男は満足そうな笑みを浮かべた。
人を貶めることを喜ぶ下衆な笑みである。
そういう類の精神をもった男なのであろう。

「あの娘のくやしがる顔が目に浮かぶようだぜ。そうとう頭にきてるだろうな」

やはりネットにある人物を中傷する書き込みを行っていたらしい。
この手の行為は度々問題視されてはいるが、今をもってなおそれを規制する法はない。
男のような輩がはびこる由縁である。

「あの娘のことだ。刺客の一人くらいは送ったかもしれねえ。だが、『ここ』ならなんの問題もない。そう、『ここ』ならばな!」

そう言って再び満足げな笑みを浮かべた男は窓の外へと目を向けた。
そこにあるのは一面の星ばかり。
それ以外、何も目に入るものはない。
これこそが男の自信の根源。
そう、男のいる場所は地上600mの高み。
日本最高の高度を誇るホテル、スカイ・ハイ・タワーの最上階なのだ。
セキュリティも日本一といわれるこのホテルの最上階に篭ればたしかに安全なことこの上ない。
外部からの狙撃はまず不可能である。
周囲のビルとの高度差は200m以上。
狙撃可能な場所など存在しない。
絶対の安全圏。
男の余裕に満ちた態度も理解できよう。

「さて、もう一つ書き込むかな。今度のネタは……ん?」

新しいネタを書き込もうとノートパソコンへと手を伸ばした男は何を思ったのかもう一度、窓外へと視線を向け直した。
何かが見えたような気がしたのだ。
もちろん、視線の先に映るのは先ほどと同じ星空のみ。
他には何もない。あるはずもない。
気のせいだったのかと深く椅子に体を沈めて。
頭を振ってさあ書くぞと気負った男のその目が限界まで大きく見開かれた。
男は見てしまったのだ。
反対側の窓の外に。
そこに存在するはずがないものを。
いるはずのない者の姿を。

「な……? は、羽……」

男は生涯最後の言葉を言い終えることができなかった。

ズギュゥゥゥゥン!!
ビシッ!

後頭部から脳漿をまき散らしながら倒れる男。
その顔に刻まれているのは恐怖ではなく、驚愕のそれであった……

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PART4 ある学園の風景・午前

「ホテル、スカイ・ハイ・タワー最上階で狙撃! かあ」
「信じられないよね〜〜」
「本当にね。一体、どうやったらこんなことが可能になるのかなあ」
「日本一高いホテルの最上階でしょう」
「うん。狙撃できる場所なんかどこにもないよ。ヘリなんか飛んでたらすぐわかるしね。最近はドローンなんかもあるけど、あれで狙撃は無理だよ」
「犯人は空を飛んでたのかしら」
「ははっ、そうかもしれないね。こう、背中に羽を生やしてパタパタってね。あれ? どうしたの木之本さん。そんな青い顔して」

(空を飛ぶ……羽……『飛翔』! ま、まさか!?)

「さくらちゃん? あ、知世ちゃん。おはよう」
「おはようございます、みなさん」
「知世ちゃん……」
「おはようございます、さくらちゃん。ふふ、どうしました? わたしの顔に何かついてます?」
「と、知世ちゃん。き、昨日の夜……」
「昨日の夜どうかなされましたか?」
「昨日の夜……う、ううん、なんでもない! なんでもないよ!(な、なに考えてるの! 知世ちゃんがそんなことするわけないよ。知世ちゃんが……)」
「うふふ、おかしなさくらちゃんですこと」

………………………
………………
………

リメイク作品は旧作の数年後を描いたアフターストーリーとなることが多い。
旧作からの経過時間ははおおむね2〜3年、長くても5年といったところである。
その一方で現実世界での旧作終了からリメイク作品開始までの間隔は10年を超えることも珍しくない。
20年、30年という作品もある。
想像してほしい。
旧作においてセガサターンで遊んでいたキャラが新作ではPS4のコントローラーを手にしていたらどうなるかを。
誰しも20年という時間の経過を実感せざるを得ない。
作中経過時間と現実で過ぎ去った時間の差。
このギャップをどう埋めるかが今後の大きな課題であろう……。

END(2017年作品)

EXTRA TRACK……


大道寺家は“G”のお得意様。
迂闊なことを書くと

ズギューン・・・・・・………

はぅっ!

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