『マリオネット・1』

(※このお話はダークプリズンの後日談になります)



まただ。
またあの夢を見ている。
不可解で不愉快な夢だ。
いったい、どうしてこんな夢を見るんだ。
夢には夢を見る者の心理状態が反映されるという。
夢見る者が望む未来、希望、願い。
あるいは、夢見る者の怖れ、不安、恐怖。
そういったものが夢には反映されるという。

だが、そうだとしたらオレがこんな夢を見るはずはない。
今のオレには一片の怖れも不安もないからだ。
そこらの凡人を遥かに凌ぐ力と権力を持ったオレを怖れさせるものなどない。
また、夢に自分の願いを反映させることなどもありようがない。
オレはオレの望む全てのものを既に手にしている。

李家当主の座も。
世界最高の魔力も。
伝説の魔道士、クロウリードが残したクロウカードも。

そして。
嫋やかな花も。
かつて力を持たぬころ何よりも望んだ花。
手に入れることなど叶わぬと一度はあきらめかけた花。
“さくら”というなによりも得難い花を。
なによりも愛しい少女を・・・・・・

夢の中にいても自分の傍らにさくらの体温があるのが感じられる。
ずいぶんとハッキリとした意識のある夢だな。
明晰夢ってやつか。
さくらは深い眠りに落ちているようだ。
いや、眠りに落ちているというより精も魂使い果たして身じろぎ一つできないといったところか。
ま、当然だろうな。
ついさっきまでさんざんに嬲りぬいてやったんだから。
ちょっとやりすぎだったか。
でも、それはオレが悪いんじゃない。
こいつがいけないんだ。
こいつがあまりにも魅力的すぎるのがいけないんだ。
まったく。
なんて素敵な身体をしてるんだ、こいつは。
単にキレイとか可愛いとかそういうレベルじゃない。
こいつの肌のぬめらしさ、肉の手応え、反応、その全てが他の女たちとは比べ物にならない。
男を狂わせる魔性の肉だ。
肉だけじゃない。
その視線も表情も吐息すらもが男の官能を堪らなく刺激する。
生まれ持った天性の媚性か。それともこいつの辿ってきた数奇な体験のもたらしたものなのか。
まさか、これほどまでに素晴らしい肉をしているなんて想像もしていなかった。
これもクロウカードの後継者に選ばれた資質の一つなんだろうか。
オレのような男がこんな素敵な肉を前にしたらとる行動は一つしかない。

嬲る。
とことん嬲る。
嬲って嬲って嬲りぬく。

それ以外は考えられない―――

「んむぅぅっ、んんっ!」

『闇(ダーク)』で視界を奪い、『影(シャドウ)』で四肢を封じて吊り上げる。
さらに粘液状に変化させた『水(ウォーティー』を口腔に捻じ込んで言葉も封じる。
人としての全ての自由を奪われ不安と恐怖でふるえるさくらの肌を『火(ファイアリー)』で炙る。
『雷(サンダー)』で敏感な個所を刺激する。
『火』がゆらめく度にさくらは身をくゆらせ、『雷』が光る度に奇声をあげてエビのように身をのけぞらせる。
かつて愛したカードたちに責め苛まされる。
さくらにとってこれ以上の屈辱と絶望はあるまい。

「気分はどうだ? 『元』カードキャプター。大好きなカードさんたちと触れ合えてうれしいか?」
「ふぐっ、んぐぅぅっ!」
「そうかそうか。そんなにうれしいか。それなら他のカードたちも使ってやろう」
「んんぅっ!」

『樹(ウッド)』『泡(バブル)』『凍(フリーズ)』『撃(ショット)』・・・・・・

カードたちが次々とさくらの身体に群がり、淫らな責めを加えていく。
並みの女ならば5分と持たない過酷な責めだがこの肉は一味違う。
責めへの耐久値が並はずれて高い。
人の限界を超えた壮絶な責めをさくらの身体はやすやすと受け入れていく。
それがまたオレの中の獣を刺激する。

この肉はどこまで責めることができるのか―――
どこまで責めたらこの肉の限界にたどり着くのか―――

無論、カードたちがさくらを傷つけることはない。
カードたちは今もさくらを愛している。
あるいは現在の主であるオレ以上にさくらのことを愛しているのかもしれない。
この責めもカードたちの歪んだ愛情表現の表れだ。
それがまた、絶妙な責め加減となってさくらの精神と肉体を蝕む。
身体を傷つけないギリギリのところ、苦痛と快楽が同居する悪夢のような責めにさくらの秘所はしとどに蜜を滴らせてゆく。
だが、おそらく今、もっともさくらが弄って欲しいそこにだけはカードたちは手を触れようとしない。
オレがそう命じているためだ。
限界まで責め嬲っても決して絶頂にはいかせてやらない。
最後の最後、オレ自身でさくらにトドメを指すために。
さくらの心にオレへの絶対の服従を刻みこんでやるために。

「あふぁっ、しゃ、小狼様ぁ!」

『水』が口を解放するとさくらの口から悲鳴にも近い哀願の声が上がった。
みじめったらしい情けない声だ。
それがどれほどオレの中の悪魔を昂ぶらせるのか、こいつはまだ理解してないらしい。

「ん、なんださくら。そんな情けない声を出して」
「お、お願いです小狼様! もうこれ以上・・・・・・ひぃぃっ!」
「これ以上なんだ、さくら」
「お願いですからいかせてください・・・・・・。もうこれ以上、がまんできません。小狼様のものをください・・・・・・」

あぁ。
堪らない愉悦と満足がオレの全身を駆け巡る。
かつてこの口が勇ましく、自信に満ち溢れた声で無敵の呪文を唱えていたことをオレは知っている。
それがここまで落魄れるなんて。
あの素敵な少女をここまで惨めに堕としてやったんだ。
オレの手で。
だけど、まだだ。
まだ堕としてやる。
もっと惨めで無様な底の底まで堕としてやる。
人として、女の子として最低のところにまで堕としてやるよ。さくら・・・・・・。

「さくら。こういう時のおねだりの仕方は教えてやったはずだぞ。やってみせろよ。上手にできたらご褒美をくれてやる」
「は、はい。で、でも・・・・・・」

言いながらさくらは周囲に目を向けた。
さくらが気にしているのはカードたちだ。
カードたちはまだカードにもどっていない。実体化したままだ。
ニヤニヤと笑みを浮かべながらオレたちを見ている。
さくらが“おねだり”を躊躇するのも無理はない。
さくらに教えた“おねだり”は人前で口にできるような代物ではないからだ。

「どうした、さくら。できないのか。それじゃあご褒美はやれないな」
「いえ! できます。できますからいかせてください!」
「じゃあ早くやれ。オレは気が短いんだ」
「はい・・・・・・。しゃ、小狼様。わたし、木之本さくらは偉大なる李一族の宝、クロウカードを掠め取ろうとした薄汚い泥棒猫です・・・・・・。その罪を償うためにこの身も魂も小狼様に捧げました。ど、どうかさくらの卑しい穴を小狼様のたくましいもので存分に捏ね回してください・・・・・・」
「ふん。まあ、いいだろう。ご褒美をくれてやる」

指を鳴らすとカードたちは一斉にカードの姿に戻った。
支えを失ったさくらの身体がびちゃりとぬめった床に落ちる。
その体を引き起こして背後から一気に貫く。
濡れた肉の壁が突き入れた肉棒を強烈に締め付ける。
くぅっ、この感触。
本当になんていい肉なんだ。
あやうく、オレの方がいってしまいそうになる。

「あひぃぃ、小狼様ぁぁ、小狼さまぁぁぁ!」
「くっ、さくら、言ってみろ。お前の体は誰のものだ!」
「小狼様! 小狼様のものです!」
「そうだ、お前はオレのものだ! お前の身も心も全てオレのものだ! 誓え、さくら! オレの前でそう誓ってみろ!」
「はいぃぃぃ、しゃ、小狼様ぁぁ。さ、さくらの身体も心も魂も・・・・・・みんな、みんな小狼様のものですぅぅぅっ!」
「さくらぁ、さくらぁぁぁっ!」

本当のことを言ってしまうと、さくらを手に入れたころはかすかな不安があった。
二人でカードを追いかけていたあの時、オレとさくらの間には絆があった。
カードをめぐる事件の中で築かれてきた信頼と協力によって結ばれた絆がたしかに存在していた。
その絆を自分の手で壊してしまった。
仮に呪印でさくらの身体を手にしようと、二人の間に絆を築くことはもう不可能なのではないか。
そんな不安があった。
だが、今は違う。
今、オレとさくらの間にはたしかな絆がある。
それも、かつての絆など比べ物にならぬほどに強靭な絆だ。
この世で最も強い絆―――それは隷属だ。
畏れと所有こそが最も強く人を繋ぎ止める。
この絆の前では愛だの想いだのは無意味。
隷属こそが真の絆なのだ。

そうだ。
オレは全てを手に入れたのだ。
金も、権力も、伝説の秘宝も、最高の女も、人間を超越したこの偉大なる力で全て手にしたのだ。
全てを手にして完全で完成された人生を行く完璧な男、それがオレだ。

そんなオレが。
どうしてこんな夢を見るんだ?

NEXT・・・・・・


「隷属こそがこの世でもっとも強い絆」は「聖闘士星矢 THE LOST CANVAS」より。
冥界三巨頭の一人、天雄星ガルーダのアイアコスの台詞。
原典の星矢ではあまり活躍してませんでしたが、LCではシジフォスとの激闘やバイオレートとの絆など強い印象を残すキャラでした。
LCは他にもラダマンティスなど冥闘士たちも強烈なインパクトを放っていたのが印象的です。
黄金星闘士外伝の後は冥闘士外伝をやってくれないかなあ。

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